科学技術振興機構(JST)は、戦略的創造研究推進事業において、長いDNA断片の解読技術を改良し、脊椎動物のモデル生物であるメダカのセントロメア(染色体の短腕と長腕が交わる位置)DNA配列の約10% (約100万塩基)を解読することに成功したと発表した。
同成果は、東京大学の森下真一 教授、武田洋幸 教授、沖縄科学技術大学院大学の山本雅 教授らによるもの。詳細は、国際科学誌「Nature Communications」(オンライン版)に掲載された。
21世紀に入り、脊椎動物のDNA配列の解読が進んだが、完全には解読されておらず、いまだに数百から数十万の解読できていない領域が残されている。とりわけ、セントロメアと呼ばれる長い領域は未解読のままだった。
研究グループは数万の塩基のDNA断片の解読が可能な装置を使用し、DNA断片の解読に取り組んだ。しかし、1分子のDNAを直接観測するため、ノイズが入ってしまうという問題があった。そこで、ノイズを除くため複数の補完的な方法で補正をした結果、脊椎動物のモデル生物であるメダカを対象に、セントロメアのDNA配列の約10% (約100万塩基)を解読することに成功した。
研究グループは同成果に関して、「ヒトゲノムのセントロメアDNA配列を解読し、その生理的な意義を解明することは、生命科学の大きな研究課題の1つ。ヒトゲノムの約1% ~2% はセントロメア配列が占めていると考えられているが、まだ解明されていないため、今回のメダカゲノムの研究はその解明への手がかりになると期待する」とコメントしている。