Hot Chips 29においてFreedom SoCを発表するSiFiveのYunsup Lee CTO

Hot Chips 29においてSiFiveは、業界初のオープンソースの「RISC-Vチップ」を発表した。RISC-V(リスク ファイブ)は、カリフォルニア大学バークレイ校で開発されたRISCアーキテクチャの第5世代となるライセンスフリーで、ローヤリティフリーな命令セットである。

このため、RISC-VはARMやMIPSのような商業的なRISC CPUに比べると、安い初期コストで利用できる。また、SiFiveを始めとしてRISC-Vをサポートする会社も出てきて品質も向上してきており、製品への利用も始まっている。

Hot Chips 29において、SiFiveのCTOのYunsup Lee氏が、同社のRISC-Vアーキテクチャを用いる「Freedom SoC」について発表を行った。

RISC-Vのアーキテクチャは非営利団体であるRISC-V Foundationが管理している。そして、RISC-V Foundationには65以上の団体が加盟しており、NVIDIA、HPE、Microsoft、IBM、Google、Qualcommなどの大手メーカーも参加している。

RISC-V Foundationのメンバー団体。開発元のBerkeley Architecture Researchを筆頭に、NVIDIA、HPE、Microsoft、IBM、Qualcommなどの名前も見える (このレポートのすべての図は、Hot Chips 29におけるSiFiveのYunsup Lee氏の発表資料のコピーである)

SiFiveはRISC-Vの発明者などによって設立された会社で、カスタムな計算LSIを非常に短期間で開発し、どれだけ売れるか分からないLSIの初期開発コストを最小に抑えるという。

SiFiveはRISC-Vアーキテクチャの発明者などが設立した設計会社で、RISC-Vを使ったカスタム計算LSI開発の初期費用を最小にし、かつ、短時間で開発することを売りにしている

現在、SiFiveの製品としては、「Coreplex」と呼ぶプロセサコアIPとFreedom SoCと呼ぶSoC製品があり、コアIPは、低電力組み込み用のEシリーズと高性能のUシリーズがある。SoC製品は、TSMCの180nmプロセスを使うFreedom Everywhereと、TSMCの28nmプロセスを使うFreedom Unleashedの2種の製品がある。

SiFiveの製品としては、EシリーズとUシリーズという2種のプロセサコアIPとFreedom EverywhereとFreedom Unleashedという2種のSoCがある

Freedom EverywhereのE310 SoCは、E31 CoreplexにI/Oインタフェースをつけたもので、TSMCの180nmプロセスで作られ、チップサイズは約6mm2で320+MHzのクロックで動作する。Dhrystone性能は、1.61DMIPs/MHzである。

E31 CoreplexにI/OインタフェースをつけたE310 SoCのブロックダイヤグラム。E310はTSMCの180nmプロセスで作られる

次の図はE310と他社の製品を比較したものである。E310はIntelのArduino 101のコントローラと比較するとクロック周波数は10倍、ARMのArduino Zeroと比較するとDhrystoneは11倍(320MHzで動作させた場合)、IntelのQuarkと比べて電力効率が9倍。ARMのCortex M0+と比べて電力効率が2倍となっている。

E310 SoCは、Intel Quarkの10倍のクロック、ARMのCortex M0+の11倍のDhrystone、電力効率はIntel Quarkの9倍、Cortex M0+の2倍

次の図はE310 SoCを使ったArduino互換のHiFive 1開発キットである。

Arduino互換のHiFive 1開発キット

次の図は、高性能のUシリーズのU500のブロックダイヤグラムである。32KBのL1Iキャッシュと32KBのL1Dキャッシュを持つU54コアを最大4コア集積する。そして、L2キャッシュは2MBである。メモリを接続するDDR3/4コントローラを持ち、GbEインタフェースを持つ。

U500はTSMCの28nmプロセスで作られ、これをベースにFreedom Unleashedのカスタム製品を開発する。

高性能のU500プラットフォーム。TSMCの28nmプロセスで作られる

SiFiveは、このE300プラットフォームのRTL、FPGAスクリプト、開発ツール、回路図、ドキュメントなどをオープンソース化し、だれでも使えるようにした。オープンソース化したのは、RISC-VのRocketと呼ぶコア、TileLinkと呼ぶコヒーレントなSoCインタコネクト、SPI、UARTなどの低速インタフェース、XilinxのFPGAのラッパーなどである。

チップのパッドやPLLなどの3rdパーティのIPは、SiFiveのものではないので、オープンソースにはなっていない。

SiFiveは、Rocketコア、TileLink、低速IOインタフェースなどのRTLやツール、ドキュメントなどをオープンソースで公開した

なぜ、SiFiveがオープンソース化を進めるかと言うと、チップの開発にかかるコストが大きいため、イノベーションの芽が摘まれてしまっていると考えるからである。オープンソース化によってイノベーションがより盛んになり、再利用が促進され、より多くの開発者を引き付けることができるようになると考えている。

オープンソース化により、開発者は全部を自分たちで作るのではなく、自分のところで付加価値をつけられると考える部分だけに集中することができる。オープンソース化しても、より付加価値をつけたIPで利益を上げるというビジネスは可能であり、両立すると考えている。

オープンソース化で開発者を引き付け、ハードウェアの開発を活発化する

オープンソースのソフトウェアが世の中を変えてしまったように、SiFiveはハードウェアのオープンソース化で世の中を変えようと考えている。素晴らしいIPを持っているIP設計者は、このオープンソース化に参加してほしい。テクノロジのFreedom SoCへの組み込を協力して行い、協力して新たな市場の開拓や顧客を見つけよという。

システム設計者に対しては、SiFiveの製品はそれほど高価ではないので、これをベースにカスタム化することができる。そして、ハードウェアとソフトウェアの両面でイノベーションを起こすことができる。開発の初期コストを下げ、より多くの開発プロジェクトが開始されるようにしようという。

ハードウェアのオープンソース化という革命に参加しよう!