SAPジャパンは6月5日、SAPの目指すインテリジェント・エンタープライズ構想の実現に向けて、米カルフォルニア州で開催した「NVIDIA GPUテクノロジーカンファレンス」(GTC)における発表を受け、NVIDIAとの戦略的提携による取り組みを日本国内にも拡大し、インテリジェンス・ソリューションの開発力を強化すると発表した。
NVIDIAのGPU(Graphics Processing Unit)ベースの並列処理能力は、SAPの機械学習アプリケーションの基礎である大規模データセットのトレーニングと深層学習アルゴリズムの性能を高めるという。
SAPがGTCで紹介したアプリケーション「SAP Brand Impact」は、処理速度の向上により大規模データセットからの学習能力も向上する一例となる。同製品は企業のブランド露出度を分析するためのアプリケーションであり、ソーシャルメディアなどのソースから収集した大量の画像や動画をスキャンし、企業のロゴやそのほかのブランド情報を識別する方法を自律的に学習するが、プログラミングによる明示的な指示の必要はないとしている。
また、モデルを一度学習すると大量の画像や動画を超高速で処理可能になり、企業は広告やスポンサー契約の投資効果を正確に把握・分析し、ブランド価値の最大化に繋げることができるという。
同製品と同様にNVIDIAの深層学習プラットフォーム上でトレーニングと運用を行う機械学習ソリューションとして、SAPはGTCにて「SAP Service Ticketing」および「SAP Accounts Payable」を紹介した。
SAP Service Ticketingは、顧客対応を効率化してコストを削減し、顧客満足度を新しいレベルに高める一方、SAP Accounts Payableは経理業務の進化と債務管理プロセスの自動化に向けたものとなる。同社は、数年以内に財務関連製品をすべてインテリジェント化することを予定し、インテリジェンスと俊敏性を組織基盤に統合するため、同社は先進技術を実用レベルで継続的に提供するという。
例えば、NVIDIAとの提携を含むオープンなエコシステムを通じて、同社自身が俊敏性を持ち、パートナーが提供する最新技術を積極的に取り込んでいく。また、機械学習に対応したアプリケーションを、SAP Cloud Platformに埋め込んだインテリジェントサービスとして順次提供する。
デジタルインテリジェンスにより、定型的なデジタルデータ処理業務をソフトウェア化し、SAP Brand Impact、SAP Service Ticketing、SAP Cash Applicationはその第1弾となる。
開発者向けには、ソリューションをインテリジェント化するAPIを提供し、近日中にビジネスサービスAPIおよび機能レベルAPIという2つのレベルのAPIを「SAP API Business Hub」で公開する予定。
ビジネス・サービスAPIは、請求と支払の照合などの業務を対象としているほか、機能レベルAPIは画像の分類や自然言語テキストの要約、時系列データからの将来予測といった低レベルの機能を実行するAPIだという。