東京工業大学(東工大)は、有限要素法(FEM)と熱回路網の計算手法を用いることで、バンプレスTSV配線では、従来のバンプとTSVを組み合わせた垂直配線方式の3次元積層デバイスに比べて、熱抵抗を30数%(約1/3)まで低減できることが分かったと発表した。

同成果は、同大 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の大場隆之 教授らの研究グループならびにウェハを積層させることで、3次元集積回路を形成するWafer-on-Wafer(WOW)の研究開発を進めている「WOWアライアンス」によるもの。詳細は、4月19日~21日の期間、山形県天童市にて開催された「エレクトロニクス実装国際会議(ICEP2017)」にて21日に発表された。

従来のTSVプロセスでは、上下の接続層において、アンダーフィル材料のような絶縁膜、有機膜を使用する必要があり、結果として熱抵抗が大きくなってしまう、という課題があった。今回、研究グループは、3次元積層デバイスの構造を解析することで、BEOL(配線工程:Back End of Line)と垂直方向の接合構造の熱抵抗をFEMにて熱伝導率を推定したほか、全体の熱抵抗についても、熱回路網を用いて推定。この結果、熱抵抗が高い要因の多くがBEOLと垂直配線の接続構造にあることを突き止めたという。

マイクロバンプタイプ(左)とバンプレスタイプ(右)の断面構造 (画像提供:東工大)

また、バンプレスタイプの熱抵抗の推定も実施。同じバンプレスタイプの垂直方向の接合の熱抵抗は、マイクロバンプタイプと比較して、同じ占有率を想定した場合、150倍小さくなることを推定。この結果、バンプレスTSVの密度を全体の1%程度にまで減らしたとしても、熱抵抗が改善できることが分かり、TSVの本数は信号線として用いられる本数で、放熱性は十分であることが示されたとする。

垂直統合部の熱抵抗の占有面積依存性のグラフ (画像提供:東工大)

さらに、これらの結果から、全体の熱抵抗を計算したところ、従来のマイクロバンプ方式では1.54Kcm2/Wであったものを、0.46Kcm2/Wにまで低減できること、ならびに各層の発熱量も踏まえた温度上昇を検討したところ、マイクロバンプタイプでは約20℃の上昇となるが、バンプレスタイプでは約4℃の上昇で済むという推定結果を得たとのことで、これを現行の温度上昇を許容すると仮定した場合、DRAMの積層数は3~4倍に増やすことも可能になると研究グループでは説明している。

マイクロバンプタイプとバンプレスタイプの温度上昇の比較グラフ (画像提供:東工大)

なお、研究グループでは今後、薄化ウェハの積層と高密度TSV配線を用いた実証実験を行い、大容量メモリ技術としての実用化を目指すとしている。