「プ女子」と呼ばれるプロレスファンの女性が登場するなど、近年、かつての盛り上がりが復活しているプロレス。実際に興行へ足を運ぶと、観客の3~4割が女性、といった団体もあるほどだ。さらに目立つのは、いわゆる昭和のプロレスに慣れ親しんできた中高年男性ではなく、20代前後の若者たちの姿である。ファンの年齢層は若返っている、ともいえるだろう。

そんなプロレス界において、今、圧倒的な影響力を持つ団体といえば、新日本プロレスである。長年プロレス界をリードしてきたが、格闘技ブームに押され、業績低迷で苦戦した時期もある。2000年以降、経営母体は2度も変わった。2012年にカードゲーム会社のブシロードが親会社となってからは、同年の年間売上高11億円から翌2013年には25億円へと、V字回復を果たしたことも話題となった。

なぜ新日本プロレスは蘇り、往年のプロレスファンを呼び戻すだけでなく、新たなファンを獲得することができたのだろうか?

成功した一つの要因には、同社が早くから注力してきたWeb戦略がある。公式Twitter「新日本プロレスリング株式会社」(@njpw1972)のフォロワーは27万超(2016年8月4日時点)。驚くべき数字だ。そこで本稿では、同社のTwitter活用に焦点を当ててみたいと思う。

新日本プロレスの公式Twitter(@njpw1972)

公式Twitter1つで新着情報を網羅できる

新日本プロレスが公式Twitterの運用を開始したのは2009年11月。まさに「Twitter黎明期」ともいえる時期だ。中心となって動いていたのは、同社へ同年9月に入社した広報宣伝部の真下義之氏だ。当時、Twitterユーザーは少なく、社内でも大半の人が公式Twitterの存在を知らない状況だったという。

新日本プロレス 広報宣伝部 真下義之氏

運用開始から1~2年は細々と情報を出していたが、会社として出すべき情報が徐々に増えていった。2012年4月にはブシロードが親会社となり、オーナーの木谷高明氏から全社的にTwitterに取り組むこと、選手もTwitterを始めることなどが推奨され、その時期からTwitter運用が本格的になったと、真下氏は振り返る。

「現在Twitterで発信しているのは、公式Webサイトに掲載するニュースをコアに、公式スマホサイト、動画サイト(新日本プロレスワールド)、グッズ販売サイト(闘魂SHOP)、カードゲーム(キング オブ プロレスリング)、スマホゲーム(プロレスやろうぜ)など、弊社がWeb上で持っている様々なコンテンツです。ブシロード体制以前は、出す情報を選別していましたが、社内でTwitterの認知度が上がり、営業や広報、商品などの各部署から、情報が集まってくるようになりました。その情報を公式Webサイトに1日10~12件ほど記事としてアップしています。情報があまりにも多くなったので、取捨選択するのではなく全部出していこう、とやり方を変えました」(真下氏)

Twitterの運用は真下氏と部下2人、計3人の体制(本当はもっと人を増やしたいという)で、記事公開~Twitterにアップするまで、ワンストップで作業を行う仕組みが整っている。一方で「情報が多い」との声を聞くこともあるが、そこは捉え方次第である。

「『情報が多い=公式Twitterのタイムラインを見ていただければ、その日に新日本プロレスが発進した情報をすべて網羅できる』ということです。ただ、公式Twitterがいくつもあると、お客さまもどれを追えばいいのか迷ってしまうため、情報を1カ所に集約させています。

基本的には『新日本プロレスリング株式会社』と『新日本プロレスリング株式会社営業部』(@njpw_nyao)の2つで、後者は地方大会の当日券情報や大会の告知、当日の様子など、営業チームに営業に特化した情報を出してもらっています。原則、新日本プロレスリング株式会社のアカウントで、営業部の投稿もリツイートしているので、新日本プロレスリング株式会社を追いかけていれば、ほとんどの情報にタッチできる仕組みです。

それを『新日本プロレスの情報収集をしやすい』と好意的に受け取る方も多く、フォロワー数が増えたのかもしれません。直近2年ほどの勢いはスゴいものがあり、フォロワー数が10万超となってからは、1日400人ほどのペースで増えていた時期もあります。20万を突破したのは2015年夏ですね」(真下氏)