産業用アプリケーションにおけるイメージングシステムの幅広い採用が拡大し続けています。新しいイメージセンサ技術および製品の開発に加えて、コンピューティング能力や高速データ・インタフェースなど対応するプラットフォームの進化もその推進要因となっています。今日、組み立てライン検査、交通監視/制御、監視、医療用および科学用イメージングなど、多様な分野においてイメージングシステムの使用が一般的となっていますが、これは画像品質、読み出し速度、解像度を向上したイメージセンサ技術の進歩によって実現されています。現在、イメージセンサの設計には、CCD(電荷結合素子)とCMOS(相補型金属酸化膜半導体)両方のテクノロジが使用されているため、この2つのプラットフォームを再検討することで、特定のアプリケーションに最適なイメージセンサを選定するのに役立ちます。

電子画像処理の開発が始まったのは、後にノーベル賞を受賞したボイルとスミスが最初のCCDを開発した1960年代後半です。これらのデバイスは、光子を電子に変換するドープドシリコン固有の能力を活用しながら動作し、結果として得られたピクセル・レベルの電荷を用いて光の強度を測定します。アーキテクチャ上、CCD設計の大きな利点の1つは簡潔性です。ピクセル領域全体を使用して、光子の検出と電荷の蓄積を行い、高いダイナミックレンジを実現する最大信号レベルを提供します。同じピクセル領域を使用して、電荷を限定数の出力部に転送し、そこで電荷を電圧に変換します。このアーキテクチャは徐々に改良されて、インターライン転送方式のCCD設計を取り入れるようになりました。この方式ではピクセル・レベルの電子シャッタが使用され、カメラ設計において機械式シャッタが不要になりました。今日、CCDは画像素子用に高度に最適化された専用半導体プロセスを使用して製造されており、後段信号処理のためにアナログ出力をデジタル信号に変換する外部回路を必要とします。一般的に、CCDは、高効率の電子シャッタ機能、広いダイナミックレンジ、優れた画像均一性などの特性を備えています。

対照的に、CMOSイメージセンサの設計は、当初ロジック・チップ、マイクロプロセッサ、メモリ・モジュールなど、主流の半導体デバイス製造向けに開発されたプロセスを活用していました。この手法は、デジタル処理能力を直接チップに搭載して、イメージセンサの機能向上を図ることができるため、大きな利点があります。CCDなどのセンサで限定数の出力回路において電荷を電圧に変換する代わりに、CMOSイメージセンサは各ピクセル内(またはピクセル・グループごと)にトランジスタを配置して、電荷-電圧変換を実行できます。これにより、電圧(電荷ではなく)をデバイス全体に伝播させて、より迅速かつ柔軟性の高い画像読み出しを実現できます。加えて、ハイエンドの処理機能をチップに直接搭載できるので、必要な場合は、完全処理済みJPEG画像やさらにH.264ビデオ・ストリームもイメージセンサから出力できます。

従来、CCDイメージセンサの方がCMOSデバイスよりも高い画像品質を提供してきましたが、近年はこの差が急速に縮まっており、CMOSイメージセンサの画像品質は、現在では多くのアプリケーションに採用できる水準となっています。オン・セミコンダクターのPYTHON CMOSイメージセンサ・ファミリといった、産業用最新世代CMOSイメージセンサも採用が進んでいます。最高のCCDで得られる画像品質の一部は、このファミリが提供する値を上回る可能性がありますが、PYTHONデバイスの画像品質は、インライン検査、交通監視/通行料徴収、動作分析に適したものになっています。これにより、CMOSテクノロジがもたらす他の性能上の利点、例えば極めて高速なフレームレート、低消費電力、特定領域の読み出し機能(ROI)などを前面に押し出すことができます。これらの特性は、当該アプリケーションでのスループット向上や採用拡大にとって重要な要素となる可能性があります。

ON SemiconductorのCMOSイメージセンサ「PYTHON 25K」。25Mピクセルの解像度を提供する (出所:ON Semiconductor)

このようなCMOSに固有の利点が存在するため、一部ではCCDイメージセンサがやがて衰退し、CMOSテクノロジが進歩を続けて最終的にあらゆる局面でCCDの性能を上回るとの予測もあります。CCDとCMOS両方のテクノロジとも間違いなく将来も進化し続けると思われますが、CCDの基礎を形成するアーキテクチャは、いくつかの分野で特定の性能上の優位性を維持できることを示しており、その観点からCCDは最高の画像品質を求める産業用アプリケーションにとって好適な選択肢となるでしょう。