Xilinxは9月4日、「次世代システムの未来をかたちに」と題した戦略説明会を開催した(Photo01)。実は同社の場合、こうした戦略説明会を行うのはちょっと珍しい。これまでは概ね製品、もしくはテクノロジに関する説明会が主で、ビジネスあるいは戦略に関する説明が主、というのは筆者の記憶する限り極めて稀だからだ。この前は? というと、2008年に行われた現CEOのMoshe Gavrielov氏へのインタビューとか、2014年のSam Rogan社長へのインタビューとかその程度しか思いつかない。
28nm/20nmデバイスの投入でシェアを拡大
さて、氏はまず近況について簡単にまとめた(Photo02)。ラフに言えば同社はFPGA市場の半分以上のシェアを取っており、しかも2015年にはそのシェアが全般的に増える傾向にあると予測している。この中で特にMid Rangeは、2011年(2010年4月~2011年3月)には40nm世代でそもそもMid Rangeにあたる製品を展開していなかったのでシェアはごく僅かだったが、その後KintexやZynqを投入したことでここのシェアが大幅に伸びた、としている。
さていよいよ本題。Xilinxは現在、「All Programmable」をキーワードに据えている(Photo03)。問題は「誰にとってProgrammableか」という話である。従来、同社のFPGAは、VerilogなどのHDLで記述できるハードウェアエンジニアにとってProgrammableであった。それが、Photo04で言えば灰色の5万人のところだ。ついで、System Cに代表されるHLS、あるいはZynqの様なARM SoCが出てきたことで、もう少し関わる人間が増えてきた。Xilinxは、SDxを用いて関われる人間をもっと大規模(25万人)に増やすことで、今後登場するメガトレンドに対応してゆきたい、と考えている。そのメガトレンドというのは、例えば監視ビデオに代表されるビデオ処理やマシンビジョン、自動車向けのADAS、IoTの中でも特に産業向け(Industrial IoT:IIoT)、5GのWireless、ネットワーク向けのSDN/NFV、クラウドといったものが挙げられている(Photo05)。ではそのメガトレンドに対応するために何がProgrammableに求められているのか、をまとめたのがこちら。Xilinxはこの両方に対応する方向を志向したい、としている訳だ。
Photo03:もちろんFPGAそのものがProgrammableであることは論を待たないが、その先を見据えているという話である |
Photo04:実際にHDLを記述できるエンジニアの数は5万~7万人程度、という範囲と見ているそうだが、まぁその程度の規模である |
Photo05:逆に言うと、こうしたメガトレンドにXilinxを使ってもらうためには何が必要か? を逆算したのがPhoto04の25万人のエンジニアという数字ではないかと思われる |
Photo06:従来同社はこの右側のみを提供してきた |
では具体的にどうするか? という回答が、2015年3月にSDSoCも追加された「SDx」である。これと、まもなく登場する「MPSoC」、それに加えて今後登場するUltraSCALE+のFPGAを組み合わせることで、メガトレンドに対応できるという話で、この基本路線そのものは以前から変わっていない。これをもう少しブレークダウンしたのがPhoto08で、ハードウェアとソフトウェアの両方のソリューションでメガトレンドに対応できる用意が整いつつあることをアピールした。面白いのは、かつてのXilinxが提供してきたのはこのうちネットワーク接続とアクセラレーションだけで、後はこの数年で新たに提供したソリューションということだ(Photo09)。