7月22日に決算発表があり、好調な数字が出てきた米Xilinxであるが、その日本支社であるザイリンクスのサム・ローガン社長に少々インタビューする機会があったので、まとめてお届けしたいと思う。ちなみにQが筆者、Aがローガン社長、Jが同席された神保直弘氏(マーケティング本部 PRマネージャー)である。

Q:ではまず決算発表の数字から。遂に(日本の売り上げ比率が全世界で)10%になりました。

A:最初私が(Xilinxに)入ったとき(2007年)は少なかったんですよね。

Q:ここ暫くは9%が続いていましたが、やっと10%に到達しました。

A:ありがとうございます。前々四半期と比べると我々は1%ほど下げたんですが。ただ仔細に分析すると、ヨーロッパ、北米のどちらも大きく売り上げが伸びている。ところが、一番伸びてるのは実は日本なんですね。なのでこれはザイリンクスが出来て以来のRecord Quarterだったんですよ。これは非常に嬉しい事です。

ただ我々にとって一番大きいマーケットは中国です。今、中国ではLTEのDeploymentがすごい事になっていて、こう(製品が)「バケツで出る」感じになっています。昨年末に大きなバケツで出たんですが、今年の後半にもやっぱりバケツで出る感じになるかと思うんですね。なので、今はその(バケツで出荷するのを)待ってる状態ですかね。そのあたりが、1%凹んだ理由かな、という風に考えています。

ただ今はESP(Earning per share)も増加してますし、マージンも増加してますし、非常に良い状況かと考えています。

Q:全体の売り上げで見ると、四半期単位で見ても通年で見ても増えている訳ですよね。ですから、仮に9%を維持したままでも日本の売り上げは伸びている訳で、そこでさらに1%増やしたというのは、非常に大きな売り上げの伸びがあったわけですが、その主要因は中国のLTE関連向けという理解で良いわけですね?

A:その通り。これはまだ当分続くと思います。例えばChina TelecomとChina Mobileでは通信方式が違います。で、日本もそうだったように、ある意味順番があるんじゃないかと思ってます。Core Network、Metro Networkときて、Access Networkが続いて、そしてBase Stationと端末となる。そういった尺取虫みたいな感じになると思うんですよ。Core Networkが先なのか、Base Stationが先なのかはともかく、どちらかが(設備を)更新すると、もう片方も、データの詰まりがないように(更新を)やっていかないといけない。

Q:しかもまだ全部の都市に一斉に展開という訳ではないので、まずここをやって、次はこっちという具合に相当時間がかかる。

A:その通りですね。

Q:逆にお聞きすると、それはどの位続くと思われます?

A:ずーっと続くでしょう。何故かというと、まずLTEがありますよね。次にLTE Advancedがありますよね? そして、その次に5Gがくる。(ある世代で)ある程度(地域的な)Deploymentが終わると、また元(の場所)に戻って次に行く訳ですね。

話を日本に移しますと、御存知の通りXilinxは(World Wideでは)基地局とかCommunicationが非常に強いのですが、日本はどちらかというと逆で、IndustrialとかMedical、放送局といったところが強い感じでした。民生はちょっと季節要因に影響を受けるのですが、そうしたCommunication「以外」の部分が強かったんです。そこで、この数年間、我々は汗をかきつつ涙を流しながら(笑)、そして血も流しながら(笑)、Communicationの部門で随分頑張ってきました。そうして、やっと意味のあるCommunication分野の売り上げになってきたんですね。

特に日本のLTE Deploymentは非常に多いので、ここで先行できたことは助けになりましたし、今四半期も大きく助けになると思います。今はBase Stationですが次はCore Networkもやらないといけません。そしてCore Networkに関してはこの数年間、幾つかのメーカーと共同で頑張って参りまして、Core Network向けの大きな装置が出来上がりました。今はマーケットにそれを売り始めている時期ですので、Rampそのものはちょっとゆっくりになると思うんですが、ずっと上がってゆくんではないかと思っていて、Steady Stateになる頃には結構大きな金額になるんじゃないかと思っています。

Q:そのSteady Stateに達するまでにはどの位掛かりそうですか?

A:10年以上でしょうかね。似てるようなものはありまして、例えば昔、SMD-Cがありましたよね。あれも物凄く長かったですね。今は(Network分野では)Layer統合とかの話が出てきていますが。この辺りが関係してくるので、長く使われるんじゃないか、と。

Q:そのあたりの話をするとNFVにしましょうとかOpenFlow使いましょうとか

A:OpenFlowはSDNの議論をするときに凄く話題になっています。そこで、私が何を気にするかというと、まずOpenFlow以前の話として、今Network関連機器は海外のメーカーがどんどん入ってきてます。Alcatel-LucentとかEricssonとかJuniperとかZTEとか、兎に角色んなメーカーがすでにいらっしゃる。一方で、日本で成功するためには、例えばWirelessを例に取ると特殊な要求が多かったわけです。4000人が電車に乗って、トンネルに入って、トンネルから出る。で、トンネルから出るときに同時にCell Accessするときにどうやって耐えるとかいった問題なんですが海外メーカーはそういうややこしいものは作らないんですね。その代わりに安い。そう考えると、日本のメーカーが成功するためにはVolumeが必要なのであって、日本のキャリアだけではなく海外キャリアもやらないといけないと思うんですね。それもあって、日本のメーカーと、「この地域のこのキャリアはこういうことを望んでいるので、こういうものを作りましょう」というお話ができているのは非常に嬉しい事です。これでVolumeが出るようになります。

では、どういうシステムを作ればいいのか。EricssonとかCISCOとかが一番いやだと思っている事は、まさしくOpenFlowだと思うんですね。彼らが提供しているHigh Performanceな専用システムは、高価ですからね。では彼らがなんでSDNをやるかといえば、自分を守らないといけないからです。自社のビジネスを守るためにもSDNをやらないといけないんですが、他社のシステムだともっと安く構築できてしまうかもしれない。で、SDNは共通のI/Fなので、同じネットワークの中に色んなシステムが混在することになります。

OpenFlowは汎用的なものなので、日本のメーカーが既存の大手メーカーに食い込むためには、やはりOpenFlowでないといけないのかなと思ってます。

Q:つまりOpenFlowはXilinxにとっては商機である、と。

A:そう考えています。

Q:しかし何故でしょう? すでにOpenFlowに向けて多くのASSPが出てきていますし、そもそもOpenFlowのコンセプトが、必ずしも専用ハードウェアを使わなくても、汎用のプロセッサをベースに作れる方向を志向していたと思うのですが。

A:そうは言ってもそうしたものを作るのには時間が掛かると思いますし、どういうDe-factoな基準が構築されていくかまだ判らないんです。あとこれはビジネスですから、共通I/Fがあるにしても、やっぱり差別化をしたいのではないかと思うんですよ。もし完璧に汎用的なものになれば、台湾のPCメーカーがRJ-45を沢山搭載したPCを出荷して終わってしまう。そうならないように、差別化は望んでいると思うんですよ。そこでFPGAがいいんじゃないか、と。

面白いのは、やっぱりconsolidationがあるのではないかと思われるところです。差別化があるとして、何を思い出させるかというと、PCの世界なんです。昔は非常に沢山の種類のPCがあったのが、最後はみんな同じような箱になって、同じような値段におちついた。それでも高いな、とは思いますけど(笑)。ではどうやってそれを下げるのか、と。そこに差別化の余地があります。FPGAならば何かマーケットに向かった機能を追加できるんじゃないかとも思ってます。