2008年1月にXilinxのPresident&CEOに就任したMoshe Gavrielov氏

FPGAベンダ大手の米Xilinx。24年の歴史を持つ同社のCEOとして約12年にわたりCEOを務めてきたWillem P. Roelandts氏から、2008年1月に、President&CEOを引き継いだのがMoshe Gavrielov氏である。

同氏は、同社のCEOに就任するまで、EDAベンダであるCadence Design SystemsのExecutive Vice PresidentやVerisityのCEOを歴任してきたほか、LSI Logic(現LSI)のExecutive Vice Presidentなどを務めるなど、半導体業界のハード、ソフト両面で経営に携わってきた経験を有してきた。

同氏は、日本市場を重視しており就任後すでに3度の来日を果たしている。そんな同氏の来日時にインタビューを行う機会があったので、その内容をお届けする。


――今までさまざまな企業の経営陣として活躍してきたわけですが、何故、XilinxのCEOになろうと思ったのでしょうか。

私はこれまで約30年間、半導体業界に携わってきた経験がある。始めの10年間はハイエンドのマイクロプロセッサに従事し、次の10年はLSI LogicでASICに携わった。そして最後の10年間ではEDAと、業界における幅広い知識を得ることができた。

マイクロプロセッサの設計では、顧客から、いかにニーズを吸出すことが重要かということを得た。ASICの時代では、ちょうど今FPGAが直面しているIPリッチな環境への移行という状況と同じ状況を実地で経験してきた。そしてEDAでは、ソフトウェアの重要性が増していくということの確信を得た。

こうした多岐にわたる経験を経てきたことが、現在のXilinx、そしてFPGA業界が置かれている状況に変化をもたらすのではないかと期待されCEOに選ばれたのだと思う。


――就任から半年ほどが経ちましたが、CEOとして行ったことはどのようなことがあるでしょう。

上場企業のCEOとしての経験もあるが、Xilinxに比べると規模が小さなものだった。ただ、今までと似ているところもあり、これまでの経験は充分に役に立つと思っている。

従業員に対しては、以前に比べて変わっていかなければいけないとアピールしてきた。現在は、FPGAがこれから成長していくための追い風が吹き始めたところだが、それはなによりも顧客が何を求めているか、ということにより風の方向性が決まってくる。そのため、顧客の求めているニーズをしっかり捕らえることで、ニーズを満たせるようなチャンスをしっかり捉えていく必要があり、そのために変わっていく必要があると言っている。

すでに行った変化としては、企業組織の変更がある。よりシンプルな体制にしたことにより、Xilinxという企業が主要な顧客により近づき、そしてその市場のチャンスにより近いところで捉えやすいようにした。例えば、以前はビジネスユニット中心の編成であったが、各自の職能レベルがより生かせるような組織に変化した。これにより、日本では1人のFAEが幅広い製品ラインナップを持つ顧客の全体を見ていたという状況から、デジタル家電や車載といったそれぞれ得意な分野を持ったエンジニアをアプリケーションセグメントベースで配置する形に変わり、より深いレベルでのサポートが可能となった。

こうした組織の変更には2つのメリットがある。1つは効率性の向上。もう1つは、組織のシンプル化により限られたリソースをよりリターンの高い市場に優先的に配備することができるようになる。

組織のシンプル化により、開発チームやマーケティングチームといったチーム間でのコミュニケーションが向上するようになり、現場から開発へ意見が届きやすくなるといった効果も生み出す。こうした体制は、何はともあれ顧客のニーズに対し、迅速に対応するためのものであり、また主要な顧客との関係をより密にするためのものだ。今回(3度目)の来日も、日本の主だった顧客との関係を深めることを目的にしている。