イラレ&スマホアプリで誰でも簡単にスタンプ制作
こうした中、次に行われたセッションでは、アドビシステムズ マネージャーの岩本崇氏が「アドビ製品で、誰でも簡単! PCとiPhoneで実現する本格スタンプ作り」と題したデモンストレーションを実施。同社のスマートフォン向けアプリ「Adobe Shape CC」と、プロも使うグラフィックデザインソフト「Adobe Illustrator CC」を連携させたLINEスタンプの作成方法や手順などについて、実演を交えながら解説した。
「Adobe Shape CC」は、 手書きの絵や写真をベクトル画像に変換できるiPhone/iPad向けの無料アプリ。これを使って用意したイラストをiPhone/iPadのカメラを使って撮影すると、瞬時に画像の輪郭を抽出し、線画のようなデータに変換する。
次に行うのが、LINEスタンプ用のテンプレートに合わせて配置やペイントを行い、規定のPNG形式に出力する作業。これに最適なのが「Adobe Illustrator CC」で、30日利用できる無料体験版もホームページ上で公開されている。
また、岩本氏は自身のブログ「いわもとぶろぐ」で配布している、LINEスタンプ申請用の書式をフォーマット化したサンプルファイルを紹介。これを活用すれば、基本は「Adobe Shape CC」で保存したイラストを「Adobe Illustrator CC」上で読み込み、[アートボード]と呼ばれる四角いマス目に、スタンプ画像の大きさを調整しながらひとつずつ配置していき、ペイントツールを使って色を塗っていくという流れだ。
ただし、この作業の中で最後に注意しなければならないのが画像の透過だ。「Adobe Shape CC」で変換された画像は、線以外の部分は切り抜かれた透明の状態だ。「Adobe Illustrator CC」上ではグレーで表示されている部分が透過されているエリアにあたり、非透過にしたい部分はペイントをしておく必要がある。また、線と線が確実につながっておらず、すき間がある場合には色塗りがうまくいかないことがあるが、「Adobe Illustrator CC」には、"隙間オプション"と呼ばれる機能で"輪郭の検出"にチェックを入れると、閉じていない線を自動で検出して閉じてくれる便利な機能があることも紹介された。
ここまでの作業が済んだら、あとは「LINE CREATERS STAMP」へ申請するためのPNG形式のデータに書き出すだけ。岩本氏は「サンプルファイルのデータが"guide"レイヤーとして残っているため、これを最後に非表示にしてから不要な要素を書き出さないように」と最後に注意事項を付け加えた。
著名アマチュアクリエイターが語る「ヒットの秘訣」
LINEスタンプの作成手順をひと通り学んだ後は、最後にLINEスタンプで上位の売り上げを誇るふたりのクリエイターを招いた「イラストのプロじゃなくてもできるスタンプ作りの秘訣」と題したトークセッションも行われ、それぞれスタンプ作成のエピソードやノウハウ、"売れる"スタンプ作りのポイントなどを語った。
登場したのは、"ゆかいなエヅプトくんスタンプ"シリーズなどを手掛けている吉永龍樹氏と、"うざいくまです。"シリーズなどで人気のwakuta氏。吉永氏は会社員、wakuta氏は現役大学生という顔を持ちながら、LINEの著名アマチュアスタンプクリエイターとして活躍している。
そもそもLINEのスタンプを描き始めたのは、2人ともたまたま時間つぶしに紙に描いたイラストが発端。スタンプの制作にかける時間はどちらも2、3日程度とのことだ。LINEのスタンプづくりで大切なことや醍醐味について、それぞれ次のように語った。
吉永氏:「絵が下手でもおもしろかったり個性があったりすると売れたりするので、諦めずに挑戦してほしい。1発目で当たる人もいれば、2発目、3発目で当たる人もいる。自分のスタンプがゲームになったりグッズになったりもしているので、そういうことが起こるおもしろい世界でもある」
wakuta氏:「分析して描くことも大事だが、個性が狭まってしまう面もある。自分が描きたいものを描くというのも重要。バランスが大切。絵のクオリティーは心配することはない。スタンプで稼ぎたいというのは大事なモチベーションではあるけれども、自分が使いたいなと思うものを自分が楽しんで描くこと。ジャンルや分野にも固執せず ジャンルの違うものを絡めてみたり いろんなジャンルを挑戦してみてほしい」 また、スタンプが売れるための秘策としてSNSなどを活用した宣伝活動は2人ともあまり効果がなかったと明かす。
「TwitterとかFacebookを使って宣伝はしてみたけれど、そこで売れた感じはあまりしていない。実際に使った人を経由して広がっている気がする」と吉永氏。wakuta氏も「1個目が売れて2個目を出したとき、Twitterで告知をしたが8ツイートしかなかった」と笑いを交えて明かす。
一方、吉永氏が「想定される使用頻度の高いものを最初の8個に掲出するようにしている」と語るように、販売時のスタンプの並び順にはふたりともかなり考慮をしているとのこと。トークセッションに同席したLINEの渡辺氏も「購入者は興味があれば下にスクロールしてくれる。スタンプは1ページ目に8個あり、それが5ページ分あって全部で40個あるが、データを分析してみても、1ページ目と3ページ目がよく使われている。3ページ目は無料スタンプが用意されていることが多いせいではないか。ゆえに1ページ目と3ページ目に最も使いやすいスタンプを配置して、最後のページにニッチなものを持ってくるのがよい」と、セミナー参加者にアドバイスし、場を締めくくった。