第7回のテーマは「ドブ」、「アウトライン」など、印刷物のデータにまつわる複数の用語

どんな業界でも、「業界用語」というものは存在する。業界の外の人からすると、何を言っているのかわからないことが多いものだが、一度覚えるとこれがなかなか(いろんな意味で)便利なので、ぜひ使いこなしたいものだ。この「クリエイティブ語講座」では、主にクリエイター界隈で使われている"クリエイティブ用語"を、デザイナーである筆者が例を交えながら解説していく。

今回でいよいよ最終回!これまで紹介した業界用語を活用して、楽しいクリエイティブライフ(?)を送ってほしい。

■これまでの記事
【レポート】明日から使ってみたくなるクリエイティブ語講座 ~第1回「シズル感」~
【レポート】明日から使ってみたくなるクリエイティブ語講座 ~第2回「若返り」等~
【レポート】明日から使ってみたくなるクリエイティブ語講座 ~第3回「仁義を切る」等~
【レポート】明日から使ってみたくなるクリエイティブ語講座 ~第4回「コンペ」等~
【レポート】明日から使ってみたくなるクリエイティブ語講座 ~第5回「ラフ」等~
【レポート】明日から使ってみたくなるクリエイティブ語講座 ~第6回「色校」等~
【レポート】明日から使ってみたくなるクリエイティブ語講座 ~第7回「NR」等~

今回の例文

<仕事の終わり編>
(クリ:クリエイター)

若手クリ「下版指示でました!」
クリ「おー!おつかれ!」
若手クリ「はい!で、下版データってこれでいいんですか?」
クリ「ドブがない…画像がRGB…アウトラインかかってない……お前、今夜は帰れると思うなよー!コラ!」
若手クリ「ヒー!」

例文の翻訳

若手クリ「ようやく下版だー!」
クリ「おー!おつかれ!」
若手クリ「はい!で、下版データってこれでいいんですか?」
クリ「ドブがない…画像がRGB…アウトラインかかってない…そんなんだから俺が帰れないんだよ!コノヤロー!」
若手クリ「ヒー!」

用語解説

[下版]

活版印刷において、活字の文字組みや校正を終え、版を下ろす工程を指す言葉。現在では、デザイナーが作成したDTPデータを印刷会社などに渡す工程をこう呼ぶことがある。

ドブ

[ドブ]

「塗り足し」のこと。ドブ(塗り足し)はコーナートンボの二重線の間の3mmの範囲を指す。通常は印刷物を仕上げる際に断裁される部分だが、断ち切りの写真などの場合に断裁で誤差が生じる場合をふまえ、予備として「ドブ」を塗り足しておく。

[RGB]

赤(Red)、緑(Green)、青(Blue) といった光の三原色を混ぜて色を表現する方法。混ぜれば混ぜるほど色が明るくなるのが特徴(「加法混色」と呼ばれている)で、液晶ディスプレイなどの画像再現に用いられているため、主にWebやTV業界で使われる。

印刷の場合はCMYKカラー(C(シアン)・M(マゼンタ)・Y(イエロー)にK(ブラック)を足したもの)が用いられており、これらは混ぜれば混ぜるほど色が暗くなる(「減法混色」と呼ばれる)。RGBとCMYKでは再現できる色の領域が異なり、RGBでは再現可能であってもCMYKでは再現できない色味がある。そのため、RGBで作成されたデータをそのまま印刷すると、全体的にくすんだ色味に仕上がってしまうことがあるので注意が必要。CMYKで入稿する時には、使用した画像もCMYKに変換されているか確認した上で作業を進めよう。

[アウトライン]

基本中の基本。「フォント」を「パスで描いた図形」の状態にすること。フォントはそのデータを開くパソコンに該当の「フォントデータ」が入っていないと表示することができないため、ほかのパソコンで開いた場合にフォントが変わってしまうことがある。そのため、データの受け渡しをする時はアウトラインをとってから渡すようにする。しかし、アウトライン化した後は文字としての修正が一切できなくなるので、必ずアウトライン前のデータは保管しよう。先方で文字修正や更新をしていく必要がある場合は、アウトライン化したデータとともに、アウトラインのかかっていないaiデータと、そこで使われているフォントのデータを渡すのが一般的となっている。

注意したいのは、例えば細かな地図などを別のEPSファイルとしてリンクさせている場合。Illustrator上で「全てをロック解除」→「全てを選択してアウトライン化」と操作しても、リンク先のEPSファイルのロック解除はできないため、アウトラインに抜けが発生してしまう場合があるからだ。

IllustratorやPhotoshopなど、業務に必要なアプリケーションの知識はやっているうちに少しずつ身に付くものだが、一度きちんとHow toの本を読んでみるのもいい。私なんか現場でもう10年以上やっているが、いまだにこの手のハウツー本に教えられることもたくさんある。

どこの業界でも最初は誰でも新人!温かい先輩に囲まれながら、毎日楽しく、時には厳しくクリエイターライフを満喫してほしい。

くすきはいね
コトバ&グラフィックデザイナー。
広告デザインやロゴ、カフェのプロデュースなど、多方面にわたる「デザイン」を手掛ける