第4回のテーマは緊急のデザイン案件を受ける場面を例に、「コンペ」など複数の単語を取り上げる

どんな業界でも、「業界用語」というものは存在する。業界の外の人からすると、何を言っているのかわからないことが多いものだが、一度覚えるとこれがなかなか(いろんな意味で)便利なので、ぜひ使いこなしたいものだ。この「クリエイティブ語講座」では、主にクリエイター界隈で使われている"クリエイティブ用語"を、デザイナーである筆者が例を交えながら解説していく。

第4回は、現場を経験したことのあるクリエイターであれば、よくあると感じるシチュエーションのひとつを例文にしてみた。広告関連のデザインをすることが多いクリエイターの場合、必然的に「代理店用語」もあわせて習得する必要性が出てくるため、しっかりおさえておきたい。

今回の例文

<広告代理店との打ち合わせ>
(代理: 広告代理店/クリ: クリエイター)

代理:「今回、コンペなんですけど結構急ぎでして…助けてほしいんですよ~」
クリ:「そうなんですか、いつもお世話になってますし、できるかぎりのことはしましょう!」
代理:「実は、方向性は3つで、それぞれ2パターン出したくて」
クリ:「えっ」
代理:「あ、でも休み明けで大丈夫なんで、ホントすみません…」
クリ:「了解です……」

例文の翻訳

<広告代理店との打ち合わせ>

代理:「今回競合ありで、しかも時間ないんだけど助けてくんない?」
クリ:「いいよ!これからも仕事ちょうだいね」
代理:「方向性3つのそれぞれ2パターンでざっくり6案くらい作って」
クリ:「えっ」
代理:「今日金曜だから、週末作業で月曜日の朝までね。ごめん!よろしく~」
クリ:「ガーン!」

用語解説

[コンペ]

数社でデザイン案などを競わせ、優秀作(とクライアントが判断したもの)を採用する形式。負けた会社には一切料金が払われない代理店泣かせでのシステムである上、「実は内々ではすでに採用される会社が決まっている」場合もある。

このため、デザイナーには謝礼程度の最低作業料だけが保証されている場合が多く、「あとは勝ったらね」というケースが非常に多い。

[方向性とパターン]

ある商品の広告を提案する際に、「壮大な風景と商品を組み合わせた案」、「有名タレントと商品を組み合わせた案」、「商品についてのストーリーマンガを大胆にポスターにした案」など、広告としてありうる可能性のことを「方向性」、そのひとつの方向性のなかで色を変えたりタレントをかえたりとバリエーションを出すのが「パターン」だ。

仮にコンペに勝ったとしても、採用されるのはもちろんひとつだけ。そのため、モチベーションをいかに維持するかが大切になる。

[休み明け]

一見優しそうなセリフだが、発動するのは大抵金曜の夕方。つまり「週末やっといて」の意。

おわかりいただけただろうか。例文の内容とは異なるが、個人的には「休み明け」というコトバは嫌いではない業界用語のひとつだ。特にフリーランスのデザイナーの場合は「週末」という概念がない。仕事に合わせて休むのが基本であるため、時間があけば平日であろうが休むことができる。そのため、うるさい電話が鳴らない週末に、ゆったりとした気分で作業をするのもなかなかいいものである。ではまた次回。

くすきはいね
コトバ&グラフィックデザイナー。
広告デザインやロゴ、カフェのプロデュースなど、多方面にわたる「デザイン」を手掛ける