第5回のテーマは「ラフ」、「アイデアフラッシュ」など、打ち合わせの際に使う複数の用語

どんな業界でも、「業界用語」というものは存在する。業界の外の人からすると、何を言っているのかわからないことが多いものだが、一度覚えるとこれがなかなか(いろんな意味で)便利なので、ぜひ使いこなしたいものだ。この「クリエイティブ語講座」では、主にクリエイター界隈で使われている"クリエイティブ用語"を、デザイナーである筆者が例を交えながら解説していく。

第5回では、広告案件の初期の打ち合わせなどで使用される、複数の単語を挙げていく。

今回の例文


<プレゼン準備編>
(代理:広告代理店/クリ:クリエイター)

代理「…という概略です。じゃあ次回までにこのコンセプトに合うよう、それぞれアイデアフラッシュを持ちよるということで」
クリ「わかりました。ちなみにその後のスケジュールってどんな感じですか?」
代理「えーっと、次回の打ち合わせが一週間後の来週火曜なので、金曜日にラフが見られると嬉しいです」
クリ「3日あればなんとか…あ、次の打ち合わせ、火曜日の午前中にやりませんか?」
代理「わかりました。調整します」

例文の翻訳


代理「…という概略です。じゃあ、次回までにアイデアフラッシュを持ってきてくださいね」
クリ「わかりました。次のラフ出しはいつですか?」
代理「えーっと、次回の打ち合わせが一週間後の来週火曜なので、金曜日にラフを出してください」
クリ「(作業できるのは)3日か…あ、火曜も作業日にしたいので、打ち合わせが午前中だと助かるんですけど、どうです?」
代理「わかりました、調整します(本当は特に何の予定も入ってないけど)」

用語解説

[アイデアフラッシュ]

ビジュアルや企画などについて、いろんなアイデアを持ち寄って話し合うことにより、チームとして「出したい方向性(クリエイティブ)」を定めていくためのベースのネタのこと。別名「思いつき」。他社の広告やデザインのイメージ、アート作品などを持ちよってとっかかりとし、アイデアを練っていく場合が多い。その打ち合わせのことを「ブレスト」(ブレーンストーミング)ともいう。

気をつけなければいけないのは、打ち合わせの勢いで「いいじゃんそれ!絶対いい!それでいこう!」と話がまとまった時である。「冷静に考えると絶対ムリだろ」という場合でも、作るのはとどのつまり自分なので、このタイミングでしっかり判断して、できないものはできないと言う必要がある(ただし、「そんなこともできないの?」と思われても困るので、できない理由を説明することも忘れずに)。

ちなみに「持ち寄る」と言っている場合は代理店、営業、ディレクター、デザイナーなど「打ち合わせに参加する全員が考えてこようね」というニュアンスだが、おおよそ「自分たちで考えてこなければ後はない」と思って間違いない。

[ラフ]

アイディアフラッシュを受けて固まってきた案を、デザイナーがざっくりとひとつのビジュアルにした素案のこと。実際のビジュアルを見て最終的にプレゼンに持っていくものを決定、そこから作り込んでいく。5~6案ほどラフを作って、打ち合わせの現場にはその中から1~2案を持っていくというのがよくあるパターン。

[調整します]

よく使うフレーズ。調整する予定がなくてもとりあえず言う。「この打ち合わせのためにほかの予定を調整した」と思わせたい時に使おう。

この例のような打ち合わせの場では、「アイデアフラッシュ」と「ラフ」の違いが明瞭でない人がいることに注意して進めたい。そういう人は、アイデアフラッシュを持ち寄る打ち合わせの時に、「…で、実際に作った図とかないの? これじゃ間に合わないよ! 来週の頭には先方に出したいのに」など、ビックリすることを言ってきたりする。こういうトラブルを回避するため「何を出すのか」という内容とスケジュールは、しつこいくらいに確認しよう。

くすきはいね
コトバ&グラフィックデザイナー。
広告デザインやロゴ、カフェのプロデュースなど、多方面にわたる「デザイン」を手掛ける