進化を続ける脳波コントローラ「ニューロコミュニケーター」

ロボット系の最後は、直接ロボット系というよりは、ロボットの操作にも応用できるシステムとしても研究されている、脳波コントロール用の「ニューロコミュニケーター」だ(画像26)。2010年から開発が続けられ、毎年その年の最新バージョンがオープンラボで披露されているのだが、最新バージョンはかなり製品に近いスッキリした形になっており、まだ配線類の取り回しにプロトタイプっぽさが残るが、頭に被せるというよりは、載せるという感じであまり拘束される感覚が見た目ではない。このぐらいなら、夏場でも装着できそうである。

画像26。ニューロコミュニケーターの最新バージョン

このニューロコミュニケーターは、病気やケガなどで話すことはもちろん、手足を動かしたり、ウインクしたりすることすらできないような方が使用することを想定しており、デモでは8種類のコマンドがモニタ上に現れる、それがランダムに光るので、自分が選びたいと思ったコマンドが光った回数を数えていくと、そのコマンドに対する意識の集中から脳波が変化するのでそれを検出し、コマンドが選ばれていくというわけである。

例えば、「兄に会いたい」と思ったとしたら、第1段階コマンド8種類の内の「会う」を選択(画像27)。第2段階で「家族」(画像28)、第3段階で「兄」(画像29)を選ぶことで、コンピュータが変わって合成音声とモニタのメッセージで「兄に会いたいです」(画像30)とメッセージで介護者に伝えてくれるというわけだ。動画4で、実際に選択していく様子を見られる。

画像27(左):第1段階コマンドの「会う」。 画像28(右):第2段階コマンドの「家族」

画像29(左):第3段階コマンドの「兄」。 画像30(右):これで「兄に会いたいです」と伝えられる

動画
動画4。RTリビングラボのデモの様子

この仕組みを利用して、2足歩行のヒト型ホビーロボットを用いて、ロボットにポーズ付きでアクションをさせることで、患者のアバターとして使うという方法も紹介された(画像31)。モデルのロボットは、近藤科学の「KHR-3HV」だが、実際にコントローラの各ボタンにパンチやキックといったモーションが割り振られており、それを押すことで操作しているわけだから、ニューロコミュニケーターのシステムからホビーロボットを操作するのは無線を飛ばすようにすれば(そうした周辺機器は普通に販売されている)、すぐにでも可能だ。

電源もバッテリではなく家庭用コンセントにつないだアダプターとつないでしまえば、リチウム系の2次電池の取り扱いの難しさ(下手すると火災が発生する)をクリアできる。ただ、電源を入れっぱなしだとサーボモータの出力が熱ダレによって低下しきちんと動作しなくなったり、劣化が激しくなるので交換ペースが速まるなどデメリットが多いので、自動で電源のオン・オフをさせるようプログラムする必要などもあるが、すぐにでもアバターロボットは、ソリューションとして一式を販売できそうだ。

画像31。アバターロボットのプレゼン画面