ロボットを家庭に普及させるための安全確認をどうするのか
ロボットの最後は、具体的なロボットや技術などではではなく、「ロボットをどうしたら普及させられるのか」という難問に対する解答というというか、試みである。ロボットが普及しない問題点として、安全性の問題があり、それは現在同じつくば市にある「生活支援ロボット安全検証センター」で安全認証のための仕組みを作るべく作業が進められている(NEDO生活支援ロボット実用化プロジェクトとして、平成25年度末まで行われる計画で、生活支援ロボットの安全に関する国際規格ISO13482の策定もいよいよ大詰め)。
その一方で安全だけでは不十分で、生活支援ロボットがどれだけ便利か、導入することでどれだけのメリットを得られるのか、ということを明確にし、それをユーザーが評価できる仕組みがなければ、生活支援ロボットが実際に量産化されたとしても決して安くはないと思われるので、購入は早々踏み切れないというわけだ(車のように、お金はかかるが、購入すれば確実に便利になる、というのがわかるようにする必要がある)。
そのために産総研で現在行われているのが、「生活支援ロボットのコスト・ベネフィットの分析」だ。利用者の生活・業務の調査およびロボットの実証実験を通じて、ロボットがどう役立つのかを評価する方法を確立し、企業・利用者・行政などへその情報を提供することで、支援ロボットの開発および現場への導入を後押しするのが狙いである。
具体的には、WHO国際生活機能分類「ICF」を活用して、日常生活を記録・分析し、支援のニーズを把握したり生活支援ロボットのベネフィット(自立度の向上など)を評価したりする方法、介護施設の業務をコスト面も含めて分析することにより介護支援ロボット導入のベネフィット(業務効率の向上など)を評価する方法についての研究を進めているという(画像32)。
例えば、調理における非利き手の動作の頻度としては、「持ち上げること」、「押すこと」、「つまみ上げること」、「握ること」の4動作を行えれば、調理の83%の動作をカバーできることから、手の不自由な人にとって、その4動作をきっちりと行えるロボットアームや筋電義手などがあれば、確実にプラスになるということがわかるだろう(画像33)。
「生活支援ロボットが上市されない」としてずっと愛・地球博以降ずっと嘆かれているわけだが、その普及には、安全性を証明するための統一された確たる仕組みと、その利便性を広く一般に訴求することが重要だというわけだ。