宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月14日、新型ロケット「イプシロン」の打ち上げを実施した。イプシロンはM-Vの後継機として開発された小型ロケットで、打ち上げはこれが初めて。ロケットは正常に飛行し、予定通りの軌道に衛星を投入、打ち上げは成功した。搭載した惑星分光観測衛星(SPRINT-A)は同日、「ひさき(HISAKI)」と命名された。

打ち上げられたイプシロン初号機

打ち上げを動画と写真で紹介

打ち上げ当日の天候は晴れのち曇り。徐々に雲が多くなり、雨がぱらつくこともあったが、晴れ間が見えることもあり、まずまずといったところ。ただ、日本に接近中の台風18号の影響か、今回は風が非常に強く、筆者の三脚が倒れたほど。しかしイプシロンは最大瞬間風速が20m以下なら問題なく、打ち上げに支障があるほどではなかった。

予定通り、10時45分ころからランチャー旋回が開始。整備塔の扉が開き、イプシロンの白い機体が再び姿を現した。この日も湿度が高く、ズームの画像がかなり白っぽくなっているのは、撮影する側からするとちょっと残念。

イプシロン初号機の打ち上げ予定時刻は13時45分。なのだが、13時半ころ、JAXAから連絡があり、警戒区域内に進入する恐れがある船舶があるため、打ち上げ時刻を14時0分に変更するとのこと。今回、打ち上げウィンドウは14時30分まであり、この範囲内であれば、打ち上げを遅らせることはあり得る。

そして迎えた打ち上げの瞬間。カウントダウンが進み、10秒前(X-10秒)には、サイドジェット(SMSJ)からの黒煙が確認できた。前回8月27日には、現地でのカウントダウンは0秒まで進んでいたものの、実際にはX-19秒でシーケンスは止まっており、SMSJには点火していなかった。今回、この黒煙が出たということは、今度こそGOだ。

SMSJは固体ロケットの一種。ロール軸制御などに利用するため、第1段のSRB-Aに追加されている

カウントゼロで第1段に点火。新設された煙道を通った燃焼ガスが横方向に吹き出し、機体はゆっくり離床。ぐんぐん加速しながら飛び立っていった。

点火の瞬間。ロケットの下が赤く光る

その直後、煙道を通って、燃焼ガスが吹き出す

推力を得て離床。アンビリカルケーブルが外れた

ロケットは垂直に上昇。ぐんぐん加速する

イプシロンでは、M-Vまでの斜め発射ではなく、垂直発射が採用されているため、ある程度は真上に飛ぶのかと思っていたが、離床直後に姿勢制御を行ったようで、すぐに斜めに進路を変えた。筆者は事前に、カメラを真上に動かす練習をしていたため、予想と違って少し慌てた。こういうのも、初号機ならではの面白いところだ。

このあたりですでに傾けているように見える

加速するロケット。速いのでこのあたりの撮影が一番大変

X+24秒。ロケット先端に雲ができた

X+48秒。雲が多かったのだが、案外長く見えた

X+68秒。ズームだとまだ見える

X+92秒。このあたりで見失った

射点の上空には噴煙が残っている

ランチャーが黒コゲに…

プレス見学席からの映像。運良く天候が回復し、1分半ほど追跡できた

こちらはワイドの映像。まるでM-Vのように斜めに飛んでいった

リモートカメラからの映像。派手にスミアが出てしまったのが残念

JAXA提供の映像素材。ロケット搭載カメラの映像も(C) JAXA