伊藤園は6月25日、認知機能が低下気味の高齢者において、緑茶抹の摂取により認知機能が改善される可能性を、人を対象とした臨床試験で確認したことを発表した。

同成果は、同社中央研究所と静岡県立大学薬学部の山田浩教授、白十字会・白十字ホームの田熊規方医師らによるもの。詳細は5月31日に開催された「第54回 日本神経学会学術大会」で発表された。

現在の日本では、高齢化にともなう認知症高齢者の増加にどう対処していくかが課題となってきている。認知機能の低下を引き起こす要因はさまざまだが、その1つがアルツハイマー型認知症に代表される神経の変性によるもので、次いで多いのが、脳梗塞や脳出血により脳の血流が障害されることによるものだ。

一方、これまでの研究から、カテキンやテアニンなどの緑茶成分が、神経保護作用を持つことが報告されているほか、緑茶をよく飲む人ほど、認知機能の低下が少ないという疫学調査の結果も報告されており、同社の研究でもテアニンを多く含む緑茶抹を継続的(1年間)に摂取することで、高齢者の認知機能低下が抑制される可能性を示していた。

こうした報告を踏まえた今回の研究では、認知機能が低下気味の高齢者に緑茶抹を3カ月間摂取してもらうことで、認知機能が改善する傾向を調査したという。

具体的には、本人または家族から文書同意を得られた老人ホーム入居者で、認知症のスクリーニングに用いられる認知機能検査(ミニメンタルステート検査)の点数が27点以下の高齢者12名(平均年齢88歳、男性2名、女性10名。23点以下で認知症が疑われ、24~27点で経度認知機能障害の可能性がある)に対し、緑茶抹を1日2g(総カテキン量は約227mg)、3カ月間摂取してもらうというもので、緑茶抹の摂取を開始する前と、3カ月摂取後に、認知機能検査ならびに血圧、血清脂質、耐糖能異常などの動脈硬化指標、および血中カテキン濃度を測定した。

この結果、点数は17.0±8.2点と有意に(p=0.025)増加し、12名中8名で改善が見られ、この傾向は、検査の点数が10点以下、11~23点、24~27点のいずれのグループでも認められたという。さらに、検査のうち、近時記憶を評価する項目で、特に顕著な改善も見られた(p=0.012)ほか、ほかの評価項目でも、血清中性脂肪の値が有意に低下(摂取前124±80mg/dL、摂取後103±57mg/dL、p=0.041)したことも確認された。また、緑茶抹摂取率は99.7%と良好で、摂取後の血中カテキン濃度が有意に上昇していたという(p<0.001)。

緑茶抹摂取前後での認知機能の変化。3カ月の間、緑茶抹を摂取した12名の内訳は、血管性認知症8名、アルツハイマー病3名、レビー小体型認知症1名で、緑茶抹摂取前の認知機能検査(ミニメンタルステート検査)の点数の平均値±標準偏差(範囲)は、15.3±7.7点(5点~27点)であった

これらの結果について研究グループは、近時記憶の低下が認知症の初期症状であるため、緑茶抹の摂取が認知症の進行を抑制する可能性を示唆していると考えられるとしており、今後、より長期間の対照群を用いた試験を行うことで、その可能性の検証を進めていきたいとしている。