本田技研工業(ホンダ)と産業技術総合研究所(産総研)は6月17日、東京電力福島第一原子力発電所向けに、遠隔操作で原子炉建屋内1階高所の狭い箇所などの構造把握と現場調査を行う「高所調査用ロボット」(画像1)を共同で開発し、6月18日より建屋内での稼働開始を予定していることを共同で発表した。
両者は東京電力から提供された現場についての情報を基に、ニーズに適合するロボットの開発を進め、上部に設置した調査用ロボットアーム部分をホンダ(画像2)が、クローラー式高所作業台車を産総研が担当する形で開発を実施。
調査用ロボットアームは、ASIMOの開発で培われた3つの技術が応用されている。1つ目は、3次元のポイントクラウド(点群座標)により、調査対象の周囲の構造物を立体的に表示する技術。2つ目は、多関節を同時に制御するシステム(動画1)。そして3つ目が、アームが周囲の構造物に接触した際にその衝撃を吸収する制御技術だ(動画2)。
これらの技術により、調査用ロボットアームは、原子炉建屋内の構造物が入り組んだ状況でも、多数の関節を同時に制御することで、隠れていて見えない対象物も容易に捕捉し、アームの先端に設置したズームカメラやレーザーレンジファインダ、線量計を使い、詳細な画像や3次元形状データの確認、線源の特定などを可能にしている(画像3~6)。
一方のクローラー式高所作業台車は、産総研が培ってきた遠隔操作技術を基に、低重心構造とし転倒安定性を高めた高所作業車にカメラ、ライト、レーザーマーカーなどの配置を工夫して取り付け、400mの光ファイバーを用いた有線LANおよび無線LANを介して遠隔操作できるように開発された。
さらに、両者は直感的にわかりやすい遠隔操作インタフェースを共同で開発。具体的には、次の動作を3DCGで操作者に対して見せてから行うといった機能が採用されている(動画3)。これにより、免震重要棟などから高所調査用ロボットを遠隔操作して、原子炉建屋内の暗くて狭い箇所を移動させることができ、また調査箇所にてロボットアームのマストを伸ばして、アームの先端が構造物にぶつかることなく、7mの高所に到達させ調査することを可能とした(画像7・動画4)。
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今後、両者の災害対応ロボットの開発に関しては、まずホンダは、防災や減災など災害への対応を目的としたヒューマノイドロボットの開発も加速させていくとしている。一方の産総研は、福島第一原子力発電所廃炉措置に対して、ロボット技術を核とした技術により引き続き貢献していくとした。
スペックは以下の通り。
- サイズ:全長1.8m×全幅0.8m×全高1.8m(運搬、移動時)
- 最大到達高さ:7.0m
- 重量:約1100kg
- ロボットアーム全長:1.7m
- ロボットアーム自由度:11
- 最大移動速度:時速2km
- 最大斜度:15度(前後)、20度(左右)
- 最大踏破段差:60mm