同じような質量もつことから「双子の星」とも呼ばれる地球と金星だが、太陽からのある公転半径を境として全く違った育ち方をした惑星である可能性が、東京大学大学院理学系研究科の濱野景子特任研究員と阿部豊・准教授、東京工業大学地球生命研究所の玄田英典研究員らの惑星初期進化モデルによって示された。それによると、地球は溶融マグマが早く冷却して海が形成されたタイプで、金星は長い間溶融し続け、その間に水を失って干からびたタイプだという。英科学誌「ネイチャー」に発表した。

太陽系の惑星のうち、木星から以遠のガスでできている巨大な「木星型・天王星惑星」に対して、火星から内側にある質量、体積ともに小さな固体惑星は「地球型惑星」と呼ばれる。地球型惑星は、約45億年前に形成された原始惑星にある溶融したマグマの海(マグマ・オーシャン)が冷却固化してできたもので、固化の時間は惑星の質量で決まるとされる。そのため、同程度の質量をもつ地球と金星(地球の約0.8倍)も同じ初期進化の過程をたどったと考えられている。

研究グループは、惑星の初期進化におけるマグマ・オーシャンの冷却や、惑星内部からの脱ガスと宇宙空間への放出による大気量と大気構造の変化などを組み合わせた「大気?マグマ・オーシャン結合モデル」を作り、固体惑星ができるまでのメカニズムを理論的に検討した。

その結果、太陽からのある軌道半径(臨界距離)を境にして、地球型惑星には2つのタイプがあることが分かった。1つは太陽から十分遠くに形成した惑星で、マグマ・オーシャンが比較的早期の数百万年以内に固化して岩石中や表面に水が捕えられ、初期海洋を形成する「タイプⅠ」。もう1つは太陽により近い軌道に形成した惑星で、固化までに1億年もの長い時間を要し、その間に獲得した水のほとんどを惑星外へ失ってしまう「タイプII」で、これらの境界となる軌道半径は、太陽から地球までの距離(1AU〈天文単位〉)に対して0.6-0.8AU付近と推定した。

地球はタイプⅠに当たる。一方、金星の軌道は0.72AUに位置するため、どちらのタイプか簡単には決められないが、固化した時点で水をほとんど持たないタイプIIの惑星の特徴は、現在の金星をよく説明している。金星の水の行方についても、従来の説では「海が蒸発し水が失われた」とされるが、それならば「金星内部に水が残り、水素よりも重い酸素が大気中に蓄積するはず」という問題が未解決だった。金星がタイプIIの惑星であった場合には、固化の過程で惑星内部の水まで失われること、水蒸気の分解によって生じた酸素が地表に豊富に存在するマグマの酸化に消費されたものとして、これらの問題は解決できるという。

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