富士通は3月14日、国立天文台と共同でチリで進めている大型電波望遠鏡「ALMA(アルマ望遠鏡、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計:Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)」の専用スーパーコンピュータ「ACA相関器システム」が稼働を開始したことを発表した。
アルマ望遠鏡は、東アジア(日本:国立天文台様が主導)、北米、欧州の各国が協力して、チリの標高5,000mの高原に建設した、世界最高の解像度を実現した大型電波望遠鏡で直径約18.5kmの敷地に66台のパラボラアンテナを配置し、受信したミリ波・サブミリ波の信号を計算機で処理することで、最大直径18.5kmの巨大なパラボラアンテナを使った場合と同等の高画質な電波画像の合成ができることから、これまでよく分かっていなかった宇宙の誕生間もない頃の生まれたての銀河や、星の誕生や太陽系のような惑星系の誕生、有機分子などの生命に関連した物質などの探索が可能となる。
同システムは富士通のPCサーバ「PRIMERGY」35台と、富士通アドバンストエンジニアリングが開発した専用計算機で構成され、FPGAを活用することでアンテナから受信するデータを350μsごとに分割し、4,096個のLSIに分配する並列演算方式を採用しており、これにより遠い天体などから発せられた微弱な受信電波を、毎秒5120億個(毎秒約200GB)の電波信号データとして、毎秒120兆回の超高速演算でリアルタイム処理することが可能だという。
標高5,000m、0.5気圧という過酷な環境での安定動作を実現するために、4,096個の同一処理LSIユニットを並列配置し、1,024本の光ファイバで相互接続することで、冷却に必要な空気の流れを確保し、発生熱量の偏在と高密度化を防止している。また、エンジニアの常駐が難しい環境であるため、山麗施設(標高2,900m地点に設置)や日本からリモートで機器の診断やソフトウェアのアップデートなどといった保守作業を実現することを目指し、データ処理の流れを相関器内の多数のポイントで常時監視・記録する機能や、内蔵した大量のテスト用データを使って実運用状態を再現し、障害の特定精度を高める機能などが搭載されているという。
なお、これらの機能により、宇宙に存在するガスが毎秒5mの速さで動く様子まで捉えることが可能なレベルの分解能を得ることに成功しているという。