計測機器ベンダ大手Agilent Technologiesの日本法人であるアジレント・テクノロジーは10月19日、ハンドヘルド測定器として、現場からのニーズを盛り込んだ有機EL(OLED)パネル採用工業用マルチメータ「Agilent U1273A」および、従来シリーズよりも測定レンジを抑えたミドルサイズ・クランプメータ「Agilent U1190シリーズ」4製品を発表した。
U1273Aは、同社が2010年12月に発表した高性能かつ多機能な工業用デジタル・マルチメータ「Agilent U1270シリーズ(U1271A/1272A)」の最上位機種に当たるもので、従来2製品が表示パネルにLCDを使用していたものを視野角160度のOLEDに変更し、暗闇の中でもOLED自体の明るさで数値確認を可能としたことが大きな変更点となっており、この視認性の向上に伴い、騒音のある環境下でもLCDを点滅させることで導通しているかどうかの確認が可能な「フラッシュディスプレイ導通試験機能」が省略された。
基本性能はU1272Aとほぼ同じで、IP54の保護等級を実現することで、作業現場におけるほこりや水などに対する防護を可能としている。また、グローブをしたままでも持ちやすく、かつ操作性を意識したグリップ型の筐体も従来どおり。電池交換と同様に背面カバーを開けるだけでヒューズを交換することができる点も引き継いでいる。
性能面でも1kHzのローパスフィルタによる高周波やノイズのカットを可能としているほか、低入力インピーダンスモードにより、通常の10MΩのインピーダンスを2kΩに変更することが可能で、浮遊電圧を拾わずに対象を測定することが可能となっている(ただし、もろに測定対象のインピーダンスに影響を受けることになるため操作には注意が必要と同社では説明している)。
なお、価格はU1271Aが34377円、U1272Aが37435円、U1273Aが43324円と最上位と最下位機種でも1万円の差がない価格設定となっている。
一方のミドルサイズ・クランプメータは、商用ビルや競合プラントなどの領域をターゲットとしており、密集するケーブルから一本のケーブルのみを取り出して測定しやすくするために、一般的な丸型の先端ではなく、先端が尖った「くちばし型」の先端を採用しており、これにより束になっているケーブルを捌きつつ、目標とする1本のケーブルのみを容易にクランプすることを可能としている。
ミドルレンジ・クランプメータ「U1194A」の実機。一般的なクランプメータの先端はもっと丸みを帯びているが、U1190シリーズは尖った形状をしており、これによりケーブルの取り回しやすさを向上させたという |
また、LEDライトをくちばし型の先端の付け根部分に設置してあるため、暗い環境下においても、別途照明を用いずに手元を照らし、ケーブルをクランプすることが可能だ。
さらにVセンス機能(非接触AC電圧検出機能)を装備。これはAC電圧が生きている箇所に同クランプメータを近づけると、アラームが鳴るという仕組みで、これによりケーブルに触れずにそのケーブルが生きているのか、死んでいるのかを簡易的に調べることが可能となる。
なお、U1190シリーズは平均値を測定する「U1191A」「U1192A」(主な違いはAC電流のレンジと入力周波数への対応の有無)と、真の実行値を測定する「U1193A」「U1194A」(主な違いはAC電流のレンジと、DC電流への対応の有無など)の4製品が用意されており、価格はU1191が9912円、U1192Aが13709円、U1193Aが17188円、U1194Aが22039円となっており、U1273Aと併せて5製品ともに即日出荷を開始している。