米ロサンゼルスにおいて10月3日(太平洋夏時間)より開催されているAdobe Systems主催によるユーザ・カンファレンス「Adobe MAX 2011」。初日の基調講演では、「Adobe Creative Cloud」という新しいクラウド・サービスと、それを構成する柱のひとつである「Adobe Touch Apps」が発表された。その後プレス向けに行われたAdobe幹部に対するQ&Aセッションでも、同サービスに関する多くの質問が飛び出した。本レポートでは、その質疑応答の内容をお伝えする。

左からKevin Lynch氏(CTO), Shantanu Narayen氏(President & CEO)、David Wadhwani氏(Senior Vice Precident and General Manager, Digital Media Business Unit)

・作成してクラウド上にアップロードしたコンテンツに対してバージョン管理のような仕組みを提供する予定はあるか。

まずはシンプルなモデルから始めたいと思っている。Creative Cloudの目的はクリエイティブなコンテンツをシェアできるようにすること。まずはその部分から確実に実現することが大事。もっとも、将来的にはバージョン管理も考えていかなければならない。しかし、いま進めている作業を阻害することがないよう慎重に時期を見極める必要がある。

・料金体系はどのようになるのか。海外のユーザへの対応や、アップグレード対応はどうするのか。

今日は革新の披露にフォーカスをあてた発表の場なので、料金体系などの細かなことには触れなかった。詳細はまだ発表できないが、サブスクリプションは世界的に統一した形にしたいとは考えている。そういう点も含めて、全ては11月に発表する。

・Photoshop Touchに、従来のPhotoshopのようなプラグイン機構は付属するのか。

まずはっきりさせておきたいのは、Photoshop Touchのターゲットはタブレットということ。タブレットのパワーは向上してきてはいるものの、Photoshopを動かすにはまだパワー不足で、そこをGPUなどを駆使することによって補っている。また、プラグインについてだが、コンセプトとしてはサポートするつもりはない。ただ、将来的には何らかの形でデスクトップのモデルを取り入れていきたいとは考えている。今はまだその段階ではないので、デスクトップとタブレットは別のものとしてとらえていただきたい。タブレットによるクリエイティブツールはデスクトップの補完的な位置づけだと考えている。

・では、タブレット向けアプリケーションの市場にはどの程度期待しているのか。

大きな変遷の時代なので、どういう方向性になるか予測がつけにくく、非常に刺激的だと感じている。その中でも、タッチの体験はこれまでにない新しい発見があり、成功の秘訣になる部分がある思う。市場への期待もあるが、リーチを拡げていくという意味でも、Adobe自身がコンセプトを変えていくことが重要。

・現在あるようなサードパーティ製のプラグインは、クラウドのアプリケーションにアタッチすることはできるのか。

プラグイン機構を持たせる考えはないが、APIによってサードパーティ製のツールも使えるようにする方向でアプローチすることを検討している。最初はリード/ライトのシンプルなAPIからはじめて、成熟してきた段階でもっといろいろなAPIにチャレンジしていけたらいいと思う。

Adobe Touch Appsの提供について、iOSなどに対してAndroidが先行するのは何か理由があるのか。

iOSとAndroidだが、我々としては両方のOSで使えるようにしたいと思っている。先に出来上がったものからリリースするということで、それが今回はAndroidだったというだけの話。Adobe CarouselのようにiOS版が先行しているものもある。ただし、圧力センサーを利用したペン入力などにおいては、基調講演のデモで見せたように端末の開発が進んでおり、Androidの方が有利ではあった。

Adobe PremiereのTouch Appsはいつ登場するのか。

検証はしている。ビデオは静止画像に比べると複雑な部分が多いが、チャレンジしている。

教育の面ではどういう立場をとっているか。将来のクリエイターを育成するという観点からの考えを聞かせて欲しい。

クリエイティブには現実の世界とコミュニケートする能力が必要となる。タッチ・インタラクションやクラウドなどは、そういう点から新しい見方を身につけるために役立つと考えている。教育支援に関してだが、Adobeではこれまでも様々な支援を行ってきた。たとえば学生向けのコンテストなどもその一環で、生徒達が自分の表現を外の世界に出すサポートという意味がある。タッチやタブレットは、彼らに対しても様々な面で新しい機会を与えるものになるだろう。