PMC-SierraがAdaptecを買収して2011年6月でほぼ1年が経過しようとしている。半導体ベンダのPMCとコントローラカードベンダのAdaptec、両社が技術を持ち寄り、シナジー効果の第1弾として2010年12月に発表された6Gbps対応RAIDコントローラ「Adaptec 6シリーズ」は、2011年3月より量産が開始され、チャネル向け販売を本格的に開始した。「Adaptec by PMC」というブランドへと変わり、1年経った現在の状況と、6シリーズについて、PMCのChannel Strage DivisionのDirector,WW Channel Sales & MarketingのTom Flageollet氏に話を聞いた。

PMC-SierraのChannel Strage DivisionのDirector,WW Channel Sales & MarketingであるTom Flageollet氏

上述もしているが、半導体ベンダのPMCとAdaptecでは事業領域が被ることはなく、Adaptecが活動していた領域は、そのほとんどの資産を引き続き活用している。現在のPMCの事業は大きく分けて3つ。1つ目がコミュニケーション向けでWANやFTTH向けチップの提供を行っている。2つ目は企業向けにSANやNASといったストレージ、プリンタ、ネットワーク機器向けなどのチップの提供。そして3つ目がチャネルストレージで、旧Adaptecが扱っていたRAIDコントローラやSSDキャッシング製品となる。「2003年、PMCの売り上げは2億4900万ドルだったが、2010年は6億2300万ドルとなり、その内40%超がストレージ関連の売り上げとなっており、この成長分野をさらに成長させるためにAdaptecが買われた」(同)という。

すでに6シリーズの概要については、発表されているので詳細は省くが、PMCのSAS 2.0 6Gbps対応SoC「PM8013 6G RAID on Chip(RoC)」を搭載し、RAID0/1/10/1E/5/6/50/60などに対応する。同社では「セロメインテナンスキャッシュプロティション(ZMCP)搭載ハイパフォーマンスユニファイドシリアルRAIDコントローラ」と銘打っており、現在は「Adaptec RAID 6405」および「Adaptec RAID 6805」の2製品が提供されている。

最大のポイントは前世代品であるAdaptec 5シリーズが別シリーズ(Adaptec 5Zシリーズ)で用意していたZMCP技術を始めから搭載している点。これは、スーパーキャパシタとフラッシュメモリを用いることで、従来はリチウムイオン電池で行っていたキャッシュ内データ保護を賄おうというもの。リチウムイオン電池のように交換用電池を持つ必要も、バッテリ監視による電圧異常検知なども不要とするもので、すでに300以上のシャシーにてテストも行われているという。

下のRAIDカードがAdaptec 6シリーズで、上のバッテリのような巨大なキャパシタがつながっているボードがZMCP。ZMCPはオプションとして提供される

また、ハイブリッドRAID1/10機能も搭載されている。これは、一般的なRAID1/10では、SSDとHDDを一緒に用いた場合、HDD性能にSSDが引っ張られ、結局はSSDの性能を出せない点を改良したもので、書き込みはSSDとHDDの両方に行うが、読み出しはSSD側からのみとすることで、高速読み出しを実現している。ソフトウェアで管理しているため、自動的に構築することができるが、HDDとSSDの容量は同じとなる。ただし、HDDの余った容量部分は、別の用途で使用することが可能となっている。

「Adaptec 6シリーズはPMCとAdaptecのシナジーにより生み出された製品。我々は将来にわたり、PMCのチップを活用して、使い勝手の高いカードを提供していく」としており、今後も6シリーズとして製品ラインアップを拡充する計画。

「我々はチャネル分野にコミットしている。カスタマからのニーズには真摯に対応してきた。それは今後も変わらない」とする。これまでも、Adaptec 3シリーズにはブラケットに穴は空いていなかったが、サーバ内の空気の逃げ道を増やしたいという要望から、ブラケットに穴があけられたほか、日本のカスタマからのミラーリングだけをしたいというニーズを受けてAdaptec 2シリーズが開発されるなどの経緯があり、「現在、我々に対するニーズで一番多いのが消費電力の低減。データセンターのカスタマがメインだが、パフォーマンスを維持しながら、どうやってメンテナンスの手間を省いたり、消費電力を下げるかで彼らは悩んでいる。我々はそうした課題に応える準備をしているし、それに見合う製品の開発を進めている。現に6シリーズは我々の当初の予想よりも出荷数が多く、入荷したも、すぐに出荷という状態になっている」と、今後もそうしたカスタマからのニーズに対応すた製品を展開していくことを強調している。