インテル技術本部 本部長の及川芳雄氏 |
Intelは5月12日、同日より開催されている「第13回 組込みシステム開発技術展(ESEC 2010)」において、将来の自動販売機のコンセプトモデルなどを公開したほか、日本法人であるインテルのインテル技術本部 本部長の及川芳雄氏が同社の組み込み市場への取り組みの現状を説明した。
同社は以前より、「2015年に150億台の機器が何らかの形でネットワークに接続する」と語ってきたが、及川氏は「クラウドを中心とした巨大なネットワーク媒体が存在することで、組込機器もネットワーク化によりこうした一部となり、それにともなって新たなサービスなどが生み出されることとなる」と、新たなビジネス活用の道が開かれることへの期待を覗かせる。
そうした背景の中、同社はIntel Architecture(IA)による1W以下から130W級の製品までスケーラブルに用意することで、組み込み市場への対応を図ってきたが、「パートナーとのエコシステムの構築や各種ツールの提供、そして何より重要となるのが管理機能で、ネットワーク化によるリモート管理をいかに実現するかが重要となってきている」との考えの下、そうした周辺の整備も進めていることを強調する。
組込機器とネットワークの融合により、まったく新しいアプリケーションが次々と誕生してくることが期待される。Intelも大学との連携によるロボティクスの研究などを行っているが、こうした新たなアプリケーションへの対応を図るための研究やコミュニティの構築を進めており、そうしたコミュニティを構築することで、組込機器向けの技術支援や他のアーキテクチャからIAへの移行ガイド、さまざまなリファレンスデザインなどの提供を行っている。
今回、及川氏によりIntelが注目している組み込み市場として提示された分野は2つ。1つはデジタルサイネージで、もう1つはIVI(In-Vehicle Infotainment:車載インフォテインメント)だ。
デジタルサイネージに関して及川氏は、「PCのアーキテクチャを活用することで、手軽にネットワーク上で管理でき、コンテンツの表示時間や回数、アップロードによる新しいコンテンツへの切り替えなどができるようになる」ことを言及。2015年には800万台規模に到達すると見られる同市場に対し、ユーザー解析などの発達により、将来的には広告という存在そのものに変革が起きるのではないかと指摘。標準化やモジュール化、ネットワーク対応、インタラクティブ性などをもたせることで、そうした進化を実現できるとした。
こうした変化を体験できるものとして開発されたのが、今回のコンセプトモデルとなる自動販売機だ。同自動販売機はブイシンクが開発、vPro対応のCore i 5とWiMAXを搭載し、リモートでの管理を実現しているほか、顔認証やタッチパネル機能によるデジタルサイネージの双方向情報提供機能と自動販売機が日本全国に設置されているという特徴と踏襲し、その地域に応じた個別の生活情報を提供することを目的に開発された。
次世代自動販売機のコンセプトモデル(買った飲み物を取り出そうとしているのはインテル マーケティング本部エンベデッド&ストレージ製品・マーケティング,プロダクト・マーケティング・エンジニアの廣田洋一氏) |
搭載されたカメラにより、購入者の年齢や性別を判断、どんな人物がどの程度の期間で何を購入したか、などのデータを蓄積することが可能だ |
実際の商品選択画面。タッチパネルでくるくると商品を選択することができる |
自動販売機のパネル上部に取り付けられたカメラ。これにより購入者の年齢や性別を判断している |
一方のIVIに関しては、日本でも何社かとAtomを活用した車載端末の開発などが進められている段階。同社では、Menlowプラットフォームを活用したIntel IVI リファレンスデザインをすでに発表しているが、「次世代組み込み向けプロセッサ(Tunnel Creek)を活用した進化版を2010年後半にリリースすることを予定している。これにより、従来の3チップ構成から2チップ構成となり、IOHにオートモーティブに特化したものなどを用いることで、CANやLINといった車載インタフェースへの対応も、より行いやすくなる」とするほか、日本ではWiMAXとの連携も模索されているとする。
また、同社はGENIVIアライアンスにも加盟しており、2010年の初頭にGENIVI 1.0リファレンスプラットフォームを発表している。現在は、「GENIVIのメンバー内で実際に、どういった新しいスペックを盛り込むかの検討を進めており、2010年夏ころをめどに同リファレンスの2.0が登場する予定」とする。
なお、ESEC 2010における同社ブースでは、上記の自動販売機以外にもさまざまなアプリケーションをいかに活用していくかの様子が打ち出されている。「今回の展示は、よりどう活用していくのか、ということを詰めた展示にしている」とのことで、HEMS(Home Energy Management System)として、単に電力の使用量を見るだけでなく、地図表示機能や伝言機能、ショッピングサイトの表示などさまざまなインフォメーション機能と電力使用量を確認できる端末や、東芝テックや内田洋行と共同で開発したデジタルサイネージと連携した次世代POSシステムのコンセプトモデル「STYLISHPOS」なども展示されている。