民生用オーディオ技術の開発企業である米SRS Labsは10月20日に東京で記者会見を開催し、日本法人「SRS・ラボズ・ジャパン株式会社」を2009年10月1日に設立したと発表した。

SRS Labsの最高技術責任者(CTO)をつとめるアラン・クレーマー(Alan Kraemer)氏

SRS・ラボズ・ジャパンのオフィスは東京都新宿区西新宿の新宿三井ビルディング二号館内である。従業員数は8名。記者会見では米SRS Labsで最高技術責任者(CTO)をつとめるアラン・クレーマー(Alan Kraemer)氏が登壇し、SRS Labsの概要を説明した。

SRS Labsはサラウンド技術やオーディオ補正技術、自動音量調整技術などの知的財産権(IP)をパソコン、テレビ受像機、携帯電話機、車載用オーディオ機器、携帯型オーディオプレーヤなどの関連企業にライセンス供与する事業を展開してきた。例えばWindowsパソコンに標準装備のオーディオビデオプレーヤ「Windows Media Player(WMP)」には、SRSの3次元音場拡張技術「WOW」がオプション機能として搭載されている。

SRS Labsの事業内容(なお、SRSは「Sound Retrieval System(立体音響再生システム)」の略称である)

日本法人「SRS・ラボズ・ジャパン株式会社」の代表取締役をつとめる八巻明氏

続いて日本法人の代表取締役をつとめる八巻明氏が登壇し、日本法人の設立に至るまでの経緯を解説した。SRS Labsは1993年に米国カリフォルニア州サンタアナを本拠地として事業を開始した。日本における活動は1996年に始まった。日本在住の1名とコンサルタント契約を結び、営業をスタートさせた。売上高の伸長に伴い、2005年には日本における契約社員数は5名に増えた。そして2008年には、日本事務所を開設。日本での事業が進展するのに伴い、日本の顧客からは取引先(SRS)の法人化を望む声が強まっていたという。そこで日本法人を設立することにした。

日本市場におけるSRSの歩み

それからクレーマー氏が、注目すべきサラウンド技術として「Circle Surround(サークルサラウンド)」を説明した。Circle Surroundは5.1チャネルオーディオや6.1チャネルオーディオといったマルチチャネルのサラウンド音源を2チャネルステレオに圧縮し、ステレオ再生システムでマルチチャネルのサラウンド再生を実行する技術である。

例えばテレビやラジオなどのステレオ放送にこの技術を採用すると、Circle Surround対応のデコーダを搭載したステレオ再生システムでサラウンドオーディオを楽しむことができる。すでに世界各地の85を超える放送局がCircle Surround技術を採用しているとする。

サラウンド技術「Circle Surround(サークルサラウンド)」の概要

また実際にCircle Surroundのデコーダを搭載したステレオシステムで、サラウンド再生をデモンストレーションしてみせた。デモンストレーション用オーディオコンテンツを再生したところ、背後から人物の声が聞こえたりしていた。

Circle Surroundのデモンストレーション。左側が再生システム。右側が報道関係者。Circle Surroundをオンにした状態とオフにした状態を切り換えて、聞こえ方の違いを示していた

このほか、テレビ番組のチャンネルを切り換えたときに音量が変化したり、テレビ番組がコマーシャルになって音量が上がったりしても、出力音量をなるべく一定に維持する技術「TruVolume(トゥルーボリューム)」をデモンストレーションした。テレビを視聴中にプログラムからコマーシャルになると、自動的に音量が上がってうるさく感じることが少なくないだけに、非常に興味深い技術である。テレビ放送の視聴だけでなく、パソコンで動画共有サイトを視聴しているときに音量のばらつきを抑えるといった使い方もできるという。

TruVolumeのデモンストレーション。米国のテレビ放送を録画したデータを使い、チャネルを切り換えることによる音量のばらつきがどの程度に抑えられるかを示していた。聴いた印象では、音量のばらつきはかなり小さくなっている