現在世界の証券取引市場では、短時間に"売り"と"買い"の大量のオーダーを繰り返して利益を上げる「Flash Trading」と呼ばれる技法が問題になっている。ほんのひと握りの企業や団体のみが証券取引所に直結された超高速コンピュータを用いて大量の売買注文を行うことを許され、結果として他の多くのトレーダーが及びもしない範囲で大量の利益を上げるというものだ。米New York Times紙の8月4日(現地時間)の報道によれば、米証券取引委員会(SEC)が現在調査に乗り出しており、こうした業界の不公正な慣習を規制すべく動き出しているという。

Flash Tradingの問題と弊害については、米New York Times紙の7月24日付けの記事「Stock Traders Find Speed Pays, in Milliseconds」に詳しい。高速コンピュータでの処理それ自体は技術の結晶と呼べるものだが、今回問題になっているFlash Tradingの技法においては、わずか片手で数えられるレベルの大手企業やヘッジファンドのみがニューヨーク証券取引所(NYSE)の中央コンピュータ横のスペースに高速コンピュータの設置を許され、外部から接続してくる他のトレーダーと比較して30ミリ秒(0.03秒)ほど早く売り買いの注文状況に関する情報を入手できているという。この30ミリ秒の差を利用して高速コンピュータで大量の売買注文を繰り返すことで、より多くの利益を上げることが可能になるという。同記事ではこうした企業として米Goldman-Sachsなどの名前を挙げており、同社らが金融危機後の株式市場崩壊でも高いパフォーマンスを維持できていた理由として、こうした不公正な取引が可能性として考えられると指摘している。

こうした取引が横行すると、多くのトレーダーにとってはその時点で不利な取引を強いられていることになる。すべての注文がこうした高速コンピュータに先回りされることになり、何が起こっているのかわからないまま取引を退場という事態にもなりかねないからだ。NYTによれば、2005年からこうしたコンピュータプログラムによる取引の量はNYSEだけで164%増加しており、こうしたFlash Tradingを繰り返すひと握りの集団だけで全取引量の半分以上を占めるという。

SEC会長のMary Schapiro氏は8月4日(現地時間)、こうしたテクニックを用いた取引を低減させる試みを推進する意向があると語っている。ニューヨーク州選出で民主党上院議員のCharles Schumer氏は「われわれは、こうしたテクニックが "市場をおもちゃにする" "取引における先んじた情報を手に入れる" といった不正な目的で利用されているのかどうかを知りたい。Schapiro会長は"良い"イノベーションと"禁止すべき"人々を利用する行為を分離したいと考えているようだ」とコメントしている。SECではこのほか、一部の投資家らを対象に半プライベートに運営されている"Dark Pools"と呼ばれる市場やその他の取引技法についても新しい規制を提案する計画だ。現在もまだルール策定を進めており、今年秋かそれ以降にも採用される見込みだ。

クラッシックなたたずまいのニューヨーク証券取引所(NYSE)。その外観とは裏腹に、内側ではITによるミリ秒単位の攻防が繰り広げられている