Gordon Bell賞はORNLとCRAYが受賞

Gordon Bell賞は、実アプリケーションで高性能を出した論文に対して贈られる賞である。しかし、問題によって高Flopsを出しやすい問題もあれば難しい問題もあるので、単純のFlops値が高いというだけではなく、その難易度も考慮して優劣が判定される。また、解法が新規で優れている論文に対して与えられる特別賞がある。

今年のGordon Bell賞には6件の論文が最終候補として残り、最終的に、オークリッジ国立研究所(ORNL)とCRAYの共著の「New Algorithm to Enable 1+ PFlop/s Sustained Performance in Simulations of Disorder Effects in High-Tc Superconductors」が受賞した。

発表者は、ORNLのGonzalo Alvarez氏である。高温超伝導の解析アルゴリズムを工夫し、かつ、精度をあまり要求されない部分は単精度浮動小数点演算を使うことにより、ORNLの新Jaguarシステムで15万コアを使用して1.35PFlopsを実現しており、文句なしに最高性能である。また、13万コアですべて倍精度演算を使った場合は、625TFlopsと報告されている。

Gordon Bell賞を受賞した論文を発表するGonzalo Alvarez氏

新JaguarのCray XT-5での性能を示すグラフ

この論文は、最初に公開されたアブストラクトでは100+TFlopsとなっていたのであるが、最後に新Jaguarシステムで動かすことにより1.35PFlopsと実アプリケーションの実行性能で1PFlopsを超えた。

特別賞はLBNLが受賞

そして、特別賞はローレンスバークレイ国立研究所(LBNL)のLin-Wang Wang氏らによる「Linearly Scaling Three Dimensional Fragment Method for Large Scale Electronic Structure Calculations」が受賞した。

電子状態を求める計算は電子数の3乗で計算量が増加するので、大規模な系の解析は難しかったが、これを分割して重ね合わせることにより分割による継ぎ目の影響をほぼキャンセルするアルゴリズムを開発した。これにより1万3,824原子のZnTeO合金の解析の場合、400倍高速になったという。

Gordon Bell特別賞を受賞したLin-Wang Wang氏の講演

新アルゴリズムの分割、継ぎ合わせを説明する図

この論文も、最初に公開されたアブストラクトでは1万7,280コアのXT-4で35TFlopsと書かれているが、最終的には新Jaguarで14万7,456コアを使い442TFlopsを実現している。

その他の候補論文も、最終結果としてはOakridgeの新JaguarかLANLのRoadrunnerを使って高Flopsの結果を出している。従って、残念ながら、このようなトップレベルのスパコンを持たない日本の研究者がGordon Bell賞を取れる可能性は、まず、無いと言える。