無料のコミュニケーションソフト「Skype」を提供するSkype TechonologiesのCOOであるScott Durchslag氏が来日し、Skypeの成長戦略について語った。Skypeでは4つの分野での戦略を強化し、四半期ごとに50%以上という高い成長率を今後も維持していく考えだ。

Skype Techonologies COO Scott Durchslag氏。世界や日本での戦略について語っていただいた

Skypeクレジットのコンビニ販売で日本ユーザーを拡大

Skypeは現在、全世界で10億ダウンロードを突破する人気ソフトであり、7期連続の増収増益。登録ユーザー数は3億2,000万を超えるなど、順調な成長を続けている。また、Skypeユーザー同士の通話時間は2003年のサービス開始以来、累積1,000億分にも上り、2007年度のSkype通話時間は世界全体の通話における6%にあたるという。

高成長を続けるSkypeにとって、日本は重要な市場だと認識。国内の利用者数は不明だが、「日本語のSkypeユーザー」は1,000万ユーザーを超え、エキサイトを始め、ソニーがPCのVAIOにプリインストールしたり、パナソニックがSkype対応電話機を発売したりするなど、パートナー企業も多いのが日本だからだ。

また、今回伊藤忠商事と提携し、コンビニエンスストアのファミリーマートで「Skypeクレジット」の販売を開始。オンラインだけでしか購入できなかったSkypeクレジットをオフライン(コンビニ)で購入できるようにして、日本ユーザーのさらなる拡大を狙う。

Skypeの世界戦略について

全世界の成長戦略について、Durchslag氏は、(1)コンシューマ市場(2)ビジネス市場(3)モバイル市場(4)プラットフォームパートナーシップ――の4点に注力すると話す。

(1)は、コンシューマユーザーの利用拡大に向け、さらなる機能強化を行う。現在ベータテスト中のSkype 4.0では、ビデオ通話機能を強化。Durchslag氏は、人間のコミュニケーションは、大多数がノンバーバル(非言語的)コミュニケーションであり、言葉だけではコミュニケーションが取りづらいという心理学の見地も示しつつ、現在Skype利用の3割程度というビデオ通話をさらに増やしていきたい考えだ。

(2)については、Skype利用によるコスト削減効果という理解は広まりつつある。ネットワークのセキュリティ問題やアクセス権の問題など、企業での利用ならではの問題に対処するためにサポートも強化する。大企業に関しては現地の代理店を利用してサポートを提供していく。現在、Skypeを使った通話の30%がビジネスユーザーだというが、今後はその割合をさらに拡大していきたいという。

(3)では、現在「Skype for Your Mobile」でJavaベースの携帯電話向けアプリと、Windows Mobile搭載端末向けのアプリを提供しており、これを今後も強化する。日本固有の携帯電話についても、今後利用できるようにしていく考え。同社日本オフィスの岩田真一ゼネラルマネージャーは、日本独特の携帯文化である絵文字など、独自のカスタマイズが必要という認識を示し、それを解消して日本への展開を図る意向を明らかにする。

また、iPhoneやAndroidといった新たなスマートフォンについては、現時点で詳細は明らかにされなかったが、何らかの検討は行われている模様だ。

(4)は、Skype関連の1,500の開発者、世界50社のハードウェアベンダーといったSkypeを取り巻くエコシステムの強化をさらに図る。「Skypeの成長に不可欠」(Durchslag氏)な部分であり、さらに拡大をしていく考えだ。

また、Skypeではこれまで、世界で均等の戦略を描いてきており、地域ごとに焦点を絞ることはしていなかったという。しかし、今後は地域ごとのニーズを検討し、それに合わせながらビジネスを展開していくという。

これからはソフトの時代、Skypeはまだ伸びる

世界の通信市場の中で、Skypeの通信は「微々たるもの」とDurchslag氏。しかし、「通信市場が大きく変化しており、ハードの時代からソフトの時代になっている」とDurchslag氏は指摘し、そうした中でSkypeにはまだ伸びる可能性があるとしている。

Durchslag氏は今年からCOOに就任、SkypeのCOOとしては初来日になるが、重要市場と位置づける日本には、今後も定期的に来日したいということだ。