VC、PEにとっても期待の的

IPO(新規株式上場)、特にベンチャー・ボード、新興企業向け市場でのIPOを支えるのは、世界的にみれば、ベンチャー・キャピタル(VC)やプライベート・エクイティ(PE)である。彼らにとっても、ベンチャー企業向け融資における「出口(EXIT)」としてのIPOは、極めて望ましいものである。

中国でベンチャー・キャピタルなどを研究する機関である中国風険投資(VC)研究院の最新報告書によると、2007年には計77件のVC投資が国内外市場のIPOという形で結実した。この数字は、2006年の22件に比べ大幅に増加している。しかも、2007年のIPOのうち、28件が中国国内で最も上場条件が厳しいA株市場で実現したものだった。

さらに証監会のデータによると、2007年中に中国においてIPOを実現したPEの投資総額は91億5,000万元(1,372億5,000万円)に達し、そのうち、51.2%がA株市場でのIPOを通じて得た収益によるものだった。このように、IPOは中国においてもVC、PEにとって重要となっていることは明らかだ。

だが、A株市場がそもそも大手企業、特に中国政府が株を握っている企業向けに設立されたということもあり、VCとPEが投資するような民間企業、とりわけベンチャー企業にとっては上場するチャンスが必ずしも平等ではないのが実情だ。一方、外資系VCやPEと比べると、中国系VCやPEが海外市場でのIPOを通じて利益を得る機会はほとんどない。

一方、独自のイノベーションを志向する国家戦略の推進に伴い、ベンチャー企業の資金需要は高まってきている。高度経済成長を続ける中国でベンチャー企業の育成を通じて利益を得ようと参入してくるVC、PEも増えている。

こうした背景の下、VC、PEにIPOによるより多くの利益をもたらすであろう創業板の設立が、双方から「熱烈歓迎」されているのは当然と言えよう。

リスク回避のため、投資家に対する教育も必要

海外のベンチャー・ボードと国内の中小企業ボードの経験から、中国において創業板を設立する際に発生しうるリスクについての分析や議論が、管理弁法案の公表に合わせ、大いに盛り上がっている。

これまで指摘されてきたリスクは、まとめてみれば下記の四点となる。

第一に、新興企業の経営リスクだ。上場を果たす新興企業のプロフィットモデル、市場戦略などが必ずしも成熟しているわけではないため、経営業績の乱高下が発生する可能性が高く、その結果株価を激しく変動させる可能性が高い。第二に、上場企業の信用リスクだ。信用リスクはどのような企業にもある問題だが、新興企業では資金管理などの経験が浅いため、信用リスクあるいはモラル・ハザードが発生する確率が高くなることが考えられる。

第三に、投機資金による影響を受けやすいことだ。メーンボードの上場企業と比べると、創業板に上場する新興企業は企業規模が小さいため、投機的な株取引の対象になりやすく、株価の変動が激しくなることが考えられる。第四に、周辺関係組織によって引き起こされうるリスクだ。上場の推薦人など関係者が、責任意識の欠如や情報不足により推薦対象を的確に評価できなかったり、企業とグルになって上場詐欺に走ったりすることがないとは言い切れないからだ。

こうしたリスク予想を踏まえ、証監会副主席の姚剛氏は、「創業板開設にあたってはリスクもあるため、事前に投資者に対するリスク教育、リスク喚起などを行う」と話している。