中国証券監督管理委員会(China Securities Regulatory Commission、以下「証監会」)は今年3月21日、IPO(株式新規公開)と新興企業向け市場である「創業板」(ベンチャー・ボード)への上場条件などを定めた「創業板における株式公開に関する管理方法案」(創業板発行上市管理弁法案、以下「管理弁法案」)を公表、パブリックコメントの募集を開始した。
その後同案に対しては、パブリックコメントの締切日である同月31日までに、計688件の意見が提出された。証監会はこれらの意見を参考に、目下管理弁法案の改訂作業にあたっている。パブリックコメントの募集を受け、創業板はにわかに各方面の関心の的となり、中国経済界で今最も熱い話題の一つとなっている。本レポートは、創業板設立の目的から、それが内包するリスクに至るまで、全貌を明らかにしてみたい。
新興企業のサポートとの位置づけ
3月21日に公表された管理弁法案に関する説明の中で、創業板設立の目的とその位置づけについて、以下のように記されている。
創業板の設立は「自主創新国家戦略(独自イノベーションを志向する国家戦略)」を実行し、より多くのチャンネルを通して直接投資の比率を高めていくうえでの重要な政策である。中小企業ボードとは別に独立した創業板を設立することは、市場が新興企業に対する吸引力を増強させる上でも有利である。創業板は新興企業をサポートする役割を担い、独自のイノベーション能力を持つ企業を重点的に支援していく
上記の説明を一言で言えば、創業板は、企業、そして中国国家全体の独自イノベーションを促進するために設けられるものなのだ。
メーンボードと比べて緩められた上場条件
それでは、創業板の「上場条件」はどうなっているのだろうか。また、その上場予備軍には、どのような企業が考えられるのだろうか。
管理弁法案は、第1章総則、第2章上場条件、第3章上場手続き、第4章ディスクロージャー、第5章監督と処罰、第6章附則の全6章、計57条で構成されている。
第2章で定められている上場条件のキーポイントは、三つある。第一は、股※公司(株式会社)として設立され、かつ3年以上の連続的な経営期間を持つこと。
※ はにんべんに「分」
第二は、財務状況が下記3点の要求を満たしていなければならない。
- 直近二年間が連続黒字で、純収益が計1,000万元(約1億5,000万円)以上、または直近一年の純収益が500万元(約7,500万円) 以上、直近一年の売上高が5,000万元(約7億5,000万円)で、なおかつ直近二年の成長率が30%以上であること
- 上場前の純資産で2,000万元以上、上場後の純資産が2,000万元以上あること
- 直近1期に未解消の赤字がないこと
そして第三は、持続的に収益を上げる能力を持ち、しかもそれに不利な影響を与える諸問題が現状存在しないこと、である。
以上を見ても分かるように、メーンボードと比べると、創業板の上場条件が緩められているのはいうまでもない。証監会は、「現存の法律と規定を遵守し、新興企業のニーズに対応するために、全体のリスクコントロールが可能な前提で、適度に上場条件を緩和した。これをもって、新興企業特に独自のイノベーション能力を持つ企業の発展を促進させていく」とし、上場条件緩和の理由を強調している。