大手IT企業には似つかわしくない古い管理モデルを露呈

前出の復旦大学教授の顧氏は、華為社員の連続死亡事件に大きな関心を寄せてきた研究者の一人だ。「自殺が、華為社員に特有の"苦難"で引き起こされた、あるいは華為社員が他企業の社員より多くの"苦難"に見舞われたため自殺につながったとは言えないと思う」と話す。

「自殺者がなぜ自殺したのかというと、最大の原因は企業側が、彼らに率直に意見を述べさせたり、友好的な意思疎通をおこなわせたりする雰囲気を提供してこなかったからではないか」とも述べている。

顧氏はさらに華為の企業文化について、「華為がマットレス文化やオオカミ文化を推賞することは、IT業界の痛ましいまでに過酷な競争環境を考えればある程度の理解はできる」としながらも、「華為が選んだ企業文化が最も望ましいものだとは到底言えない」と否定的な見方を示す。

「IT企業はどこも従業員の知識リソースを最大限生かして生産力を高めようとするが、華為の管理モデルは、相変わらず計画経済、小農経済、工業時代の古いモデルであり、このような管理手法は、知識経済時代の先頭に立つべき大手IT企業には似つかわしくない」と指摘する。

先進企業のモチベーション引き上げ策を見習うべき

「要するに、華為は労働管理の点で極めて遅れており、世界の先進企業にみられる各種のモチベーション引き上げ策、たとえば普段着での出勤や、ペット連れ出勤の許可、従業員の水道、電気、ガス代からスポーツクラブの会費、子供の入学費用の支払いまで、ありとあらゆる策を組み合わせて優秀な人材をつなぎ止めようとするやり方とは、大きな差がある」と、華為の企業文化の後進性を批判している。

だがより重要なことは、華為の企業文化にみられる欠陥が、同社だけでなく企業文化という面で転換期にある多くの中国企業に共通の要素であるという点だろう。顧氏が言うように「華為の直面している問題は、実は多くの企業にある。華為の連続社員自殺事件を他山の石として、業界全体、産業界全体で反省すべき」なのだ。