IBMは最大級の面積のブースを構え、BlueGene/Pやブレードシステムなども展示していたが、最も目立つ場所に展示されていたのはHPC向けのp 575サーバである。なお、このp 575は正式発表前であり、IBM得意のSCでのプレアナウンスである。紛らわしい命名であるが、前身のp5 575はPOWER5 CPUベースであったが、今回のp 575はPOWER6ベースとなり、POWER6 CPUとL3キャッシュチップを載せたモジュールとメモリモジュールをマザーボードに16組搭載している。p5 575はボードあたり8CPUチップ16コアであったが、今回のp 575は16チップ32コアとコア数を倍増し、POWER5+でも1.9GHzクロックであったのに対してp 575のPOWER6のクロックは4.7GHzであり、ピークFlopsでは約5倍になっている。また、p5 575ではメモリコントロールチップがマザーボードに搭載されていたが、今回は、チップパッケージを小型化し、DRAMと一緒にDIMM上に搭載することによりボード面積を節約しており、同一面積のボードに従来の2倍のCPUを搭載できるようになった。

実装構造は、従来と同じクラムシェル構造で、上側には電源が載っており、閉じることによって接続されるコネクタを通して給電される。一種の3次元実装であり、マザーボードの面積をとらずに、配線による電源電圧ドロップを押さえることができる。

このp 575は水冷である。左上の写真に見えるように、手前のメインのパイプから4個のCPUモジュールを直列に接続するようにパイプが繋がり、それが並列に4系統あるという構成である。パイプは銅系の金属製で、ロウ付けで接続されており、16CPU分、全体を纏めて取り外す必要がある。

そして、右下の写真に見られるように、ラックの一番下に水-水の熱交換器があり、冷却水は垂直方向のパイプを経由してそれぞれのp 575に接続されている。一次冷却水はDI Water(純水)である。一方、CPUを冷却した一次冷却水の熱は、計算機室のChilled Water(空調用の冷却水)に排熱している。

なお、右側の写真に見えるホースの先についているのはワンタッチの水コネクタで、水の入った状態で取り外しても1滴の水も漏れない構造になっている。また、マザーボードの前方には2個のブロアーがあり、これで水冷されていないDIMMや電源の熱を後方に排出している。

水冷を採用したIBMのSystem p 575。

p 575は水冷であるが、空冷版は作らないのかと言う質問に対して、日立がやると説明していた。このp 575のボードは日立製だそうで、同じボードであるが、IBMは水冷で使用し、日立はクロックを抑えて空冷で使用するようである。日立のブースではこのボードを展示していたが、CPUは1個しか入っておらず、ボードだけの展示で、IBMの展示と比較してかなり見劣りがした。

日立のブースに展示されていたPOWER6ボード。

また、IBMブースでは、消費電力の大きいPOWER系のチップを初めてブレードに適用したJS22ブレードを展示していた。POWER6チップのクロックは4GHzでp 575の4.7GHzよりも抑えて、消費電力を減少させてブレード搭載を可能としている。

左側に大きな放熱フィンをつけたPOWER6を2個搭載するJS22ブレード。