今回のSC07では、Disruptive Technologyという現在の技術とは隔絶した先進技術に関するセッションが設けられ、また、展示会場にはこれらの先進技術の展示コーナーが設けられた。

Disruptive Technologyコーナーに展示されたIBMの光プリント配線基板(左)とNantero社のカーボンナノチューブメモリの説明パネル。

IBMの光プリント配線基板は、中央の膨らみのある部分とその両側の張り出しの暗く見える部分に32本の光導波路が形成されており、両側の電気 - 光変換を行うチップを経由して信号を伝送していた。この写真では見られないが、赤外線カメラを使い、信号の通っている光導波路がパタパタと変わる様子をデモしていた。

Nantero社はカーボンナノチューブを使ったメモリを開発している会社で、同社のメモリセルは、下側に金属、そして狭いギャップを隔ててカーボンナノチューブのファブリックを配置している。両者の間に引き合う方向に電圧をかけると、カーボンナノチューブのファブリックが変形して下側の金属と接触する。日常生活のスケールでは電圧を除くと元に戻って接触が切れてしまうのであるが、このように微小な接点の場合には、電圧を切ってもファンデルワールス力で接触が維持されるという。一方、接触を切るには、逆方向に電圧をかける。つまり、電源を切っても情報を保持できる不揮発性メモリである。不揮発性というのはメリットであるが、ビット密度の点ではDRAMと大差ないと思われ、動作原理はDisruptiveであるが、製品としてDisruptiveなメリットがあるかどうかは、多少、疑問である。

Luxtera社は、同社のシリコンフォトニクスチップを使った40Gbit/sの光ケーブルを展示していた。現状の光モジュールは10Gbpsの伝送速度であり、40Gbpsの伝送には4本のケーブルを必要としているが、このケーブルを使用すれば1本で済む。同社は光を増幅するアクティブケーブルとすることにより、4倍の帯域を実現した。そして、従来の光増幅チップはGaAsなどの特殊な半導体で作られ高価であったが、同社は安価なシリコンで実現しており、比較的低価格で実用化できるという。

Luxtera社の40Gbps光ケーブル(左)とシリコンフォトニクスチップを内蔵したコネクタ部のボード(右)。

また、今年2月に量子コンピュータのデモを行ったD-Wave社も展示を行っていたが、パネルだけで、量子コンピュータの実物はカナダの本社に置いてあるということであった。

ジョーク的な意味で面白かったのは、Aspen Systemsという会社と、Panasas社の展示である。

Aspen Systems社のブースの看板(左)とPanasas社のブースのポスター(右)

Aspen Systemsは"Intel Inside Confidence Outside"と書かれており、Intel CPUは中に入っており、外側は同社のクラスタインテグレーションでConfidenceを作っているというアピールのようであるが、Intelは入っているが、Confidenceは入ってないとも受け取れる。Panasas社はLinuxクラスタを作っており、その関係でペンギンを使っているのであるが、5匹のペンギンが編隊飛行しているというデザインが印象的であった。