フィンランドで開催された教育関係者による国際会議「Worldwide Innovative Teachers Forum 2007ならびにSchool of the Future World Summit 2007」。本会議を主催するマイクロソフトは現在、世界各国でICT教育の普及に積極的な取り組みを見せている。同社の教育戦略について、担当者や各国の教育関係者の話を交えながら紹介しよう。
教育の変革にテクノロジーで貢献する
「教育の世界では長い間、変革が起きていなかった」 マイクロソフト公共インダストリー部門バイスプレジデント Ralph Young氏はそう語る。他の産業分野では速度こそ違えど、幾多の変革の道を歩んできた。しかし、既成概念の枠にとどまる教育側の姿勢は、「従来の教育で教えてきたスキルが、いま社会が求めるスキルと同じとは限らない」(同氏)というズレを生み出していると指摘する。
ICT(Information and Communication Technology※)化の進む社会が求めるスキルとは、情報機器やネットワークの利用スキルはもちろん、それらを活用したコミュニケーション能力が挙げられる。従来の教育現場におけるカリキュラムや設備ではサポートが難しく、教える教員側のスキル不足も課題となる分野だ。同氏によればこうした状況は、「教える、学ぶという両面での変革が必要ということを示している」
マイクロソフトの教育分野における取り組みとはつまり、その社会要請に対し、同社が持つテクノロジーで応えるものにほかならない。同社は過去5年間で2億5千万ドルの資金を教育事業に投入している。教員のICTスキルの向上や教育環境の変革を支援し、「テクノロジーによってどれだけ子供たちの可能性を見いだせるかを探っていくこと」(同氏)、これこそがマイクロソフトが教育分野に積極的に投資する理由だという。
※ICTについて
ITF/SOFでは、「IT」「ICT」というほぼ同義の表現が混在して使われていたが、本稿では「ICT」に統一して表記した。ICT(Information and Communication Technology)のほうが、現在の情報化社会を表現するより適切な表現として定着しつつある。
可能性を見出す「UPプログラム」を展開中
マイクロソフトの教育への取り組みは、「UP(Unlimited Potential)プログラム」に基づいて実行されている。ICTの利用機会に恵まれない人(高齢者や障害者など)の支援やICTスキルの向上支援などを行うことで、多くの人々がICTスキルを通じて可能性を切り開けるようにしようとする社会貢献プログラムだ。教育にとどまらず、安全なネットワークの構築や地域経済の活性化なども視野に入れたプログラムだが、UPプログラムにおいて教育は「とくに大きな位置を占めている」(同氏)。学生や教師を支援する「PiL(Partners in Learning)」、今回フィンランドで開催された教育関係者イベントなど様々な教育支援プログラムがUPプログラムの一環として提供されている。