教師同士でICT教育事例を共有する - ITF

それでは、10月27日から11月1日(現地時間)かけてフィンランドの首都ヘルシンキで開催された「Worldwide Innovative Teachers Forum 2007(ITF)ならびにSchool of the Future Worldwide Summit 2007(SOF)」を紹介しよう(既報)。Ralph Young氏が「教育が持つ可能性について話し合うイベント」と説明するとおり、世界中から教育関係者が参加した。開催は今年で3回目となる。

ITF/SOFの会場となった「Wanha Satama Fair Center」。港が近いせいか強風にあおられた枯れ葉の音が寂しいのだが、内部は熱気に充ちていた。メイン通路の両脇には、ITFのポスターセッションで利用するポスターが掲示されていた

日本版「Innovative Teachers Network」。ITNを通じて提供されるものは教育事例に限らない。校務の効率化支援ツールも含まれ、教職を多角的にサポートする内容となっている

Worldwide Innovative Teachers Forum(ITF)は、「テクノロジーをどう使えばICT教育をよりよいものにできるかということを先生同士が話し合う」(同氏)イベントだ。

実際にK-12(小中高等学校)の生徒を受け持ち、Innovation in Community(コミュニティ), Collaboration(共同作業)、Content(コンテンツ)をテーマに、様々なプロジェクトに取り組む教師たちが参加。いずれも各国のITF予選を通過した教師で、ICTの活用事例をポスターセッション形式で発表しあった。

ただし、ITFでは優秀な教師を表彰することだけが目的ではない。それ以上に「教える側の視点でベストプラクティスを共有できる点で大きな意味がある」(同氏)。しかもその情報は、教員向けポータルサイト「Innovative Teachers Network(ITN)」を通じて世界各国の教師間でも共有される。現在ITNには46カ国が参加し、教育事例の共有や教師間のネットワーク作りなどに利用されているという。

実は教壇に立つ教師の多くが、K-12時代にICT教育を受けた経験がない。ICT教育の実践が求められても、効果的なカリキュラムを作るのに苦労するのは当然だろう。ITFやITNは、まさに教室現場レベルで困惑する教師に、"他の教室で実践されている良き例"を直に見聞きする機会を提供するものになる。たとえば、日本の教師がフィンランドの教師の教育事例を参考にするように。

ICTの導入で生徒主導型の授業に

ITFの実行委員を務めるPhillip Won氏(香港)

ICTを利用した教育プロジェクトには様々な事例があるが、ITFの実行委員を務めるPhillip Won氏は、印象に残ったものとしてオーストラリアにおける異文化交流プロジェクトを挙げた。

シドニーの中学校の生徒と、そこから2,000km以上離れた町に暮らすアボリジニの生徒とが、写真やビデオ、Email、メッセンジャーなどを利用しながら、まったくバックグラウンドの異なる互いの文化に対する理解を深め合うというものだ。ICTを学習に活用したひとつの例であり、「先生から生徒へと一方向になりがちであった教室が、生徒中心のプロジェクト型へと移行」していることを示す点でも注目に値するプロジェクトだという。