そして、1965年にはミニコンの名機といわれるDEC社のPDP-8が登場する。

DEC社の傑作であるPDP-8ミニコン。

12ビットという短い語長で4096語のコアメモリをもつ小規模コンピュータであるが、汎用機より1桁程度安い$18000という、当時としては画期的な低価格のコンピュータで、商業的に大成功を収めたマシンである。

当時のミニコンベースの製品で面白いのは、次に示すKitchen Computerである。1969年に発売されたこのコンピュータは、Honeywell社の16ビットミニコンであるH316を内蔵し、料理のレシピを記憶し、アントレを選択するとそれにマッチしたメニューが選択されるというシステムである。

Neiman Marcusという現在も健在な大手小売業の会社から$10600という低価格(?)で販売された。また、このシステムで使用する1000種類以上のメニューが記載されたHelen Corbitt著のクックブックは$5.00で、カタログのページに写っている女性がつけているエプロンは$28.00と書かれている。

しかし、入力が16ビットのキーしかなく、出力も16ビットのランプだけというユーザインタフェースであり、このコンピュータを使用するためには2週間のプログラミング研修が必要とあって、主婦の受けは悪く、一台も売れなかったという。

Neiman Marcusのキッチンコンピュータ。

写真に見られるように外観には工夫が見られるが、クックブックをパラパラとめくればできることを、$10600も出して16ビットのキーとランプでやろうとする物好きな人は、全米、広しといえども、一人も居なかったという訳である。

そして、1970年になると、DEC社から16ビットマシンのPDP-11が発売される。このマシンも大好評で、全体では50万台以上が販売されたという。更に、1978年には32ビットアーキテクチャのVAX-11/780が発売される。

DEC社の16ビットミニコンPDP-11(左)と32ビットミニコンのVAX-11/780。

このあたりは歴史としては比較的最近であり、年配の読者なら、現役で稼動していたころを記憶しておられるのではないかと思う。