「ノイエ・クラッセ」を標榜するBMWの新型電気自動車(EV)「iX3」に試乗した。ノイエ・クラッセは英語でいうとニュー・クラス(New Class)、つまり、このクルマはBMWの未来を占うのに格好のモデルなのだ。さて、どんなクルマなのか。試乗してきた。
新型「iX3」の写真を一気に見る
ノイエ・クラッセとは?
iX3の原稿を書くなら、まずはノイエ・クラッセの歴史から語らなければ何も始まらない。
BMWの「ノイエ・クラッセ」といえば、1960年代に登場した1,500cc~2,000ccクラスの中型セダンやクーペが最初だ。当時は破産寸前だったBMWを、一気にドイツの一流メーカーに押し上げた大成功モデル群である。今でも多くのファンが存在するクルマたちだ。
現在のBMWが当時の状況と同じ、というわけではないけれども、2010年代に登場した革新的電動化モデルの「i3」や「i8」は、製造コストの高さから販売価格が高額となったため、商業ベースで成功したとはいえなかった。
その反省も含めて、これまでのEVの技術的ノウハウを取り入れるとともに、量産化と収益性のバランスを融合させたBMWの新たな解答が、今回の第2世代ノイエ・クラッセということになる。つまりBMWにとって、単なる“新型モデル群”というわけではないのだ。
新型iX3の特徴は?
BMWの新しいノイエ・クラッセの始まりは、2023年の「ジャパンモビリティショー」(JMS)にも登場した「ビジョン・ノイエ・クラッセ」だった。広いキドニーグリルを配したシャークノーズのシンプルなセダンスタイルが新鮮で、筆者も大好きなデザインだ。
今回のiX3のベースとなっているのは、「ビジョン・ノイエ・クラッセ・Xコンセプト」だ。
Xコンセプトはシンプルだったセダンタイプとは異なり、顔の中央にかつてのBMWモデルを彷彿とさせる細い縦型のキドニーグリルを装着していた。グリル機能はなく、あくまでデザインとして採用した意匠だったそうだが、セダンと同じだと、退屈な顔に見えたからだろうか……。複雑なラインがあちこちに入るボディは、表情豊かで躍動感があるともいえるし、ちょっとゴチャゴチャとした線や面が気になるともいえるスタイルだった。
新型iX3は、ほぼそのままのデザインで登場した。
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新型「iX3」のボディサイズは全長4,780mm、全幅1,895mm、全高1,635mm、ホイールベースは2,895mm、重量は2,330kg。今時のミドルサイズSUVらしい大きさだ。ノーマルの「X3」と比べると、全幅と全高はわずかにコンパクト
技術的な特徴は以下の通りだ。
800Vシステムと「Gen6」バッテリーの搭載:従来型パックよりもエネルギー密度を向上させた「セル・トゥ・パック」構造の丸型円筒形セルを搭載。電能力は320kW。最速15分程度で約420km分の航続距離を回復できる。
進化した4WDシステムとレアアースフリーのモーターの採用:フロントには抵抗の少ない「誘導モーター」、リアには永久磁石を使わない「巻線界磁式同期モーター」を採用。巡航時には後輪駆動が主体となる。
BMWパノラミック・ビジョン:フロントガラス下端に対角43.3インチ(幅約110cm)の「黒帯」状インターフェースを搭載。
ダイナミクス統合制御のスーパーブレイン搭載:パワートレインと足回りを制御していた100個近くのECUを超高性能統合型コンピューターに集約。圧倒的に高速の演算スピードで走る・曲がる・止まるを高次元かつシームレスに統合制御するとともに、OTA(ソフトウェア更新)能力を飛躍的に高めた。
パワートレインは前に最高出力123kW(167PS)/最大トルク255Nm、後ろに240kW(326PS)/435Nmの2モーターを搭載。システム総合で最大345kW(469PS)/645Nmを発生する4WDだ。パフォーマンスは0-100km/h加速4.9秒というなかなかの快速ぶり。容量109.1kWhのバッテリーを満充電にすれば、一充電航続距離は「iX3 50 xDrive M Sport」グレード(1,034万円)で835km(WLTCモード)、「50 xDrive」グレード(982万円)で906kmに達する。現状、日本で買えるEVの中で最長だそうだ。
使い心地と走りはまさにノイエ・クラッセ
インテリアは、わずかに楕円形の縦2本スポークステアリング(珍しい!)に、ドライバー側が尖った平行四辺形の17.9インチセンターディスプレイとフロントガラス下側に広がる例のパノラミック・ビジョンの組み合わせ。ダッシュボード全体がラウンドデザインになっているのは、ちょっと初代のノイエ・クラッセを想起させる。時空の流れが感じられて、なかなかいい感じだ。
平行四辺形のディスプレイには、さまざまなものを表示させられるし、さまざまな機能を設定できる。「オーケー、BMW」で起動するパーソナルアシスタント(パノラミック・ビジョンのセンターに登場する丸顔、吊り目のアシスタント)、駆動系や回生、ステアリング、バックレスト幅、エアコン(ルーバーのセッティングが意外と難しい)、シートの位置やシートエアコン、マッサージ機能(ドライバー席が左、助手席が右と表示が反対だった。バグ?)など、画面内で調整できる要素は多岐にわたる。
パノラミック・ビジョンに表示する項目も選択可能。BMWのアートカーも5台ほど選ぶことができて、過去のBMWを知る同乗者(おじさん3人で試乗した)とワイワイガヤガヤと決めるのは楽しい時間となった。
走りについては、グレード名に「50」と付いていることからも想像がつく通り、そのパワーは強力。アクセルを踏んづければ、100km/hまでの加速が4.9秒というデータ通りの瞬発力を見せてくれる。スポーツモードに入れれば「ビィィィィーン」という電子音が聞こえるようになるが、できれば、BMWの直列6気筒エンジンの乾いた音が聞きたかった、というのは贅沢な要求か。さすがに足回りは引き締められていて、後席ではちょっと頭が揺すられてしまう。
ブレーキングの98%を回生ブレーキで賄うセッティングは絶妙。回生を「アダプティブ」に設定しておけば停車時にカックンブレーキが起こらないのだが、今回は運転が上手なベテランドライバーばかりだったので、あまりその恩恵を受けているという感覚はなかった。
ADAS(先進運転支援システム)については、「レーンチェンジ・アシスト」は現時点でもかなり使えることを確認。目的地を設定して走行中、ドライバーが追い越し車線に移ろうとミラーを見れば、自動でウインカーを出し、スムーズに車線変更を行ってくれた。
一方、ハンズオフアシストの高速版である「ハイウェイ・アシスト」については、年末までにOTAでアップデートが行われる予定。そうなれば、新東名などの120km/h区間でも使用可能になるそうだ。
iX3であれば、ロングドライブの最中に、充電のためストップする回数は減るだろう。とはいえ、その航続距離と充電能力をミックスした電気の力をフルにいかせる場所は、この日本国内にはまだまだ少ない。このクルマを手に入れたからといって、利用状況が劇的にスムーズになるとは軽々に言えないのも確かだ。
例えば、筆者が少し前に乗ったボルボ「ES90」も同様の高速充電性能を持つクルマで、箱根ターンパイクにある出力240kWの充電器ではその恩恵に預かったものの、一方で、その前に乗ったボルボ「EX90」で赤城高原SAにある150kWの高速充電器に立ち寄った際には、液晶表示が全く読み取れないというネガティブな状況を味わった。
とにかく、EVにおけるクルマ側の進化が急速に進んでいることははっきりとわかった。あとは、使用環境が整うかどうかだ。







































