ボルボ「ES90」に試乗した。ワゴンやセダンの大きなボルボに乗っている人にとっては、乗り換え先の有力候補となりうる新たなフラッグシップEV(電気自動車)だ。このクルマ、走れば速いし車内は上質かつ快適で、充電性能もかなり高かった。
ボルボES90の立ち位置は?
ボルボの電動トップモデルといえば「EX90」があるけれども、あちらは背の高い3列7人乗りのSUVだ。
一方、今回のES90は背の低い5人乗りクロスオーバースタイル。プレスリリースには「セダンの洗練されたエレガンス」「5ドアハッチバックスタイルの実用性」「SUVの広々とした室内空間と高められた最低地上高」を兼ね備えた、従来のカテゴリーに収まらない新しいモデルである、との説明書きが綴られている。
ボルボの新しい「SPA2アーキテクチャー」を採用する統合型技術基盤「スーパーセット・テックスタック」(Superset tech stack)で開発された次世代SDV(ソフトウェア・デファインド・カー)というのが、ES90の成り立ち。つまり、背の高さは違えどもEX90とは兄弟車であり、この2台が今後のボルボを引っ張っていくというわけだ。
試乗ではインバウンド客であふれる芦ノ湖周辺の一般道や、箱根ターンパイクのワインディングを走行。乗ったのはツインモーターの最上級グレード「Ultra Twin Motor Performance」(1,229万円)だ。全長5m、2.5tの巨体で日本を走るのは、どんな気分なのかをお伝えしよう。
ES90が箱根ターンパイクで本性を現す
箱根のホテルからターンパイクに向かう途中の芦ノ湖周辺の道路は、詰めかけたインバウンドの観光客の皆さんなどで人もクルマも大混雑状態。そんな状況でも、エレクトロクロミック・パノラマガラスルーフ(電気的防眩機能付き)の下、ワンペダルで車速をコントロールしながら、完璧な遮音が施された車内でBowers&Wilkinsオーディオの「アビーロードスタジオモード」を起動し、筆者のiPhoneにある70年代“ニューミュージック”を再生しながら運転していると、“あの頃”を思い出して、まことに楽しい時間となっていく。
ターンパイクではワンペダルを「Auto」「高」「低」「OFF」のうち「高」に、ドライブモードを「Range」「Standard」「Performance」「Off-road」のうち「Performance」に入れておけば、車高が18mm下がって“戦闘”モードに入る。下り坂では強力な回生ブレーキが効いてフットブレーキを使用する回数が極端に減り、上り坂では680PSのパワーを解放し、マイナスGを全く感じることなく、アクセルペダルだけで重量級ボディを思い通りにコントロールできる。
ICEのようにシフトダウン時の刺激的な“音”が伴わないので、リズム感や手応えが感じられないのはちょっと残念なところ。そのせいもあり、あっという間に制限速度を超えそうになってしまう。速度管理には十分な注意が必要だ。
1980年代のグループAレースで活躍した「ボルボ240シリーズ」は、その無骨な四角いスタイルから「フライング・ブリッツ」(空飛ぶレンガ)と呼ばれたことがあったけれども、流麗なスタイルに変身した現在のES90も、空に飛んでいきそうなほど速かった。
走っても速いが充電も超高速!
速いといえば、ターンパイクの頂上にある大観山パーキングに到着した時のこと。ここには国内最速の240kW出力を誇る「FLASH」の急速充電器がずらりと設置してあるので、早速試してみた。すると、なんと254.3kW(定格出力オーバー!)もの超高速で充電を実現して見せたのだ。
返却までの時間があまりなかったのでたった6分間だけだったけれど、18.50kWhの電気を飲み込み、残量は充電前の54%から70%まで回復。こうした最新ハイスピード充電器の普及が、電気自動車の需要拡大に直結することが確信できた試乗会でもあった。
ES90とはどんなクルマなのか
ES90にはシングルモーターの「Plus」(979万円)と「Ultra」(1,129万円)、ツインモーターの最上級「Ultra Twin Motor Performance」(1,229万円)の3グレードがある。今回乗ったのはツインモーターだ。
「Plus」は「S90」のプラグインハイブリッド車(PHEV)モデルとほぼ同じ価格。買い替え需要を狙った戦略的な価格設定だ。現状では受注の7割がツインモーターで、残り3割がUltraだという。やはり、こうしたクルマのユーザーはトップモデルを手に入れたい人たちなのだ。
四輪を駆動する前後2基のモーターはシステム総合で最高出力500kW(680PS)、最大トルク870Nmと超強力。0-100km/h加速はわずか4.0秒というスーパーカー並みの性能を発揮する。バッテリーは106kWhの大容量で、一充電走行距離は720km(WLTCモード)だ。
プラットフォームはEV対応として大改造したSPAジェネレーション2で、電力の出し入れはスムーズ。加速レスポンスや充電速度・効率が向上した800Vアーキテクチャを採用している。
「HuginCore」(フギンコア)と名付けられた中央コンピューターには、従来は約100個あったECUの代わりとして、情報を一元管理するNVIDIAのOrinチップ(毎秒254兆回の演算を行う)を搭載。インフォテインメントシステムには高速処理と高品質なグラフィックが自慢の「Snapdragon Cockpit Platforms」を採用し、美しいディスプレイを創出している。車両は購入後もOTA(無線アップデート)で進化を続けていく。
エクステリアはエアロダイナミクスを意識した、流れるようなルーフラインを持つ美しいフラッシュサーフェイス・デザイン。通常のセダンよりわずかに背が高い姿が特徴だ。
ボルボの象徴である「トールハンマー」型のヘッドライトは、EX90のようにデイライトのセンターがパカリと開く仕組みではなく、2眼ビームライトを上下に固定したタイプ。開閉のためのスペースがなかったそうだ。
リアには新型の垂直C字型LEDランプとリアガラス左右の縦型ライト部が組み合わされるが、後者は日本の法規的な問題があって残念ながら点灯できない仕様になっているという。
インテリアはFSC認証(国際的な森林管理協議会認証)を受けた天然木を使用したダッシュボードや上質なファインナッパレザーシートなど、北欧テイスト満点の仕上がり。
リアシートはロングホイールベースの恩恵で前後方向がとてつもなく広く、足を伸ばすようにリラックスして着座できるのが嬉しいところ。バッテリーを搭載しているせいで床面がちょっと高いというネガポイントを上手に補っている。
リアセンターアームレストを立てると後方がほぼ見えなくなってしまうのだが、そこはデジタルインナーミラーで視界を確保している。
ダッシュボードのデザインでEX90と違うのは、センターディスプレイの下側にレストスペースが追加されているところ。画面操作時には自然に手を支えてくれる。また、暗くなると星が降るように光り始めるイルミネーテッド・ウッドデコラティブパネルは、モールス信号で「ボルボ」と表現される隠れた意匠になっている。
コラム式のシフトレバー(Dから1段下げるとACCに)や14.5インチセンターディスプレイでの各種セッティングはEX90と同じだ。














































