1931 年に設立され、現在、世界最大手のタイヤ メーカーである株式会社ブリヂストン。世界 150 か国以上で事業を展開し、全世界に 14 万人以上の連結従業員を抱える同社は、まさに日本を代表する企業の 1 社といえるでしょう。

全世界で事業を行う企業における命題に、「グローバルでの競争力」の向上が挙げられます。従業員の日々の業務によって競争力が構成される以上、従業員 1 人ひとりの業務生産性を支えるクライアント環境が競争力向上において重要となるのはいうまでもありません。ブリヂストンではこのクライアント環境について、これまで綿密に敷いたロードマップのもと、常に先手を打った取り組みを進めてきました。2015 年 9 月には、当時発売を開始したばかりの Windows 10 への移行を決定し、早期に展開をすることで、競争力向上を大きく進めています。

  • 株式会社ブリヂストン

プロファイル

株式会社ブリヂストンは、1931 年に設立された世界最大手のタイヤ メーカーです。世界 150 か国以上で事業を展開し、連結従業員数は 14 万人以上にのぼります。最先端の技術と高い組織力、営業力によって、いまもなお業績と業務の幅を拡大している、日本を代表する大企業です。

導入の背景とねらい
「働き方変革」をテーマとしたクライアント環境の更新を検討

株式会社ブリヂストン ITネットワーク本部 IT基盤・タイヤ設計IT部 朝倉 隆 氏

グローバル化が加速する中、企業にはよりいっそうの競争力向上が求められています。競争力とは、従業員 1 人ひとりが行っている日々の業務の集大成だといえます。この競争力を高めるには、組織という視点だけでなく、個人にまでブレイク ダウンして生産性を追求していかなければなりません。

世界最大手のタイヤ メーカーであり、国内だけで 13,617 人 (2016 年 12 月 31 日現在) もの従業員を抱える株式会社ブリヂストン (以下、ブリヂストン)。国内関連会社を含むと従業員の数は約 20,000 人にも達する同社では、近年、個人のパフォーマンスを最大化するための取り組みに注力しています。そこに対する同社の熱意は、クライアント環境の整備方針にも表れています。

ブリヂストンではクライアント環境の更新ごとに課題を設定し、先進 IT を取り入れることで都度その課題を解消してきました。株式会社ブリヂストン ITネットワーク本部 IT基盤・タイヤ設計IT部長 朝倉 隆 氏は、これまでの取り組みについて次のように説明します。

「Windows と Office、メール/スケジューラの 3 点については、行きあたりばったりの整備でなく、一定周期ごとに将来を予測し、それに即したロードマップを敷いて更新作業を進めてきました。この 3 つの環境は EOL (End of Life) をベースに検討されることが多いと思いますが、当社ではその都度、生産性向上に必要なものをテーマとして掲げ、過去の環境にとらわれない『攻めの IT』として課題解決に取り組んできたのです。たとえば 2011 年度のリプレースでは『グローバル化の強化』をテーマに掲げて、OS 環境の Windows 7 移行と並行して、メール/スケジューラ環境も従来の国産グループウェアからマイクロソフトの Exchange Server へ移行しています。これにより、グローバル化に各従業員が追従するための『リージョン間の業務連携』を大きく強化しました」(朝倉 氏)。

  • ブリヂストンでは 1995 年以降、綿密なロードマップを立てて更新作業を実施してきた

朝倉 氏が表現した「行きあたりばったりではない」「攻めの IT」という方針は、OS 環境に関する近年の取り組みからも見て取ることができます。

ブリヂストンでは、Windows 10 の発売からさかのぼること 1 年前より、「今後の標準 PC 用ソフトウェア (Windows OS、Internet Explorer) の構想」と称した協議を開始し、同 OS の採用を検討。OS 発売からわずか 1 か月後の 2015 年 9 月 1 日には、Windows 10 への移行を決定しています。

株式会社ブリヂストン ITネットワーク本部 IT基盤・タイヤ設計IT部 ワークスタイル企画ユニット 児島 高夫 氏

Windows 10 の移行を早期に検討した理由について、株式会社ブリヂストン ITネットワーク本部 IT基盤・タイヤ設計IT部 ワークスタイル企画ユニット 児島 高夫 氏は次のように説明します。

「2011 年度度の取り組みに『グローバル化』があったように、今回の取り組みには『働き方変革』という大きなテーマが存在していました。当社では一部フリー アドレス制を敷いており、在宅勤務制度も整備するなど、モバイル ワークを強く推進しています。これらのしくみを活かすうえで、エンド ポイントであるクライアント端末のセキュリティ強化が不可欠でした。また、昨今求められている残業時間の削減という観点では、限られた時間内で最大限の成果を生み出すための『業務効率化』も重要度をいっそう増しています。Windows 10 に期待した事項は、まさにこの『セキュリティ』と『業務効率化』の 2 点にあったといえるでしょう」(児島 氏)。

システム概要と導入の経緯
モバイル ワークに欠かせない「セキュリティ向上」「業務効率化」を果たすべく、Windows 10 への早期移行を計画

Windows 10 は、セキュリティに関する多くの機能を実装しています。たとえば Credential Guard では、仮想化テクノロジーを使用して資格情報を安全に格納することが可能。また、Windows Hello による生体認証を使用することで、正しい人物を特定して端末を利用することもできます。Windows 10 への移行は、モバイル ワークに対応したセキュリティ水準を確保するうえで有効な選択でした。

また、児島 氏が語るように、Windows 10 は業務効率化の側面でも期待されました。ブリヂストンでは、国内関連会社を含む約 20,000 人が利用する標準 PC の OS 移行について、全体の 2/3 はインプレースで、1/3 は新規調達で進めることを構想。半数を超える標準 PC がインプレース対象となりますが、たとえハードウェアのスペックが同一であっても、OS の性能によって PC やアプリケーションの起動速度が高速化すれば、日々の業務効率は格段に高まります。この点について、朝倉 氏と児島 氏は次のように補足します。

「これまで標準 PC のラインアップはデスクトップ型とラップトップ型の 2 種類でしたが、一部の部門から強くリクエストがあり、今回新たに 2 in 1 タブレットもラインアップに加えることを計画しました。Windows 10 ではキーボードの着脱によって自動的にキーボード モードとタブレット モードを切り替えることができます。このような細かいながら有効な機能の数々が、積もり積もって、最終的に業務効率化につながると期待しました。個々にみればわずか数秒の短縮であっても、それに利用者数の 20,000 をかけると、企業全体としては非常に大きな効率化となるのです」(朝倉 氏)。

「これまでの OS と異なり、Windows 10 は提供開始後も、毎年 2 回セキュリティや利便性を向上させるメジャー アップグレードが行われます。WaaS (Windows as a Service) のコンセプトでもあるこの特徴は、これまで 4 ~ 5 年に一度の周期だったクライアント環境の発展サイクルを、大きく短縮し得るものです。常に最先端の業務環境であり続けることができると期待し、Windows 10 の採用を早期に決断しました」(児島 氏)。

システムの構築
Internet Explorer 11 に対応済みだったことから、Windows 10 への移行はスムーズに進行

ブリヂストンは Windows 10 への移行を決定してから 2 年後となる 2017 年 7 月より、社内に向けた実展開を開始します。この 2 年の期間では、下の表にある工程で、展開に向けた準備が進められてきました。

20,000 人もの従業員が利用する環境のため、OS の移行は慎重を期する必要があります。特に注意しなければならないのが、Windows 7 で動作していたアプリケーションが Windows 10 でも動くかどうかという、互換性の検証です。ブリヂストンではこの互換性検証について、IT 部門での検証と各部門での検証の 2 工程に分けて進行。IT 資産管理システムや Java、SAP といった全従業員が利用するアプリケーションについては IT 部門で検証し、部門が独自に利用する個別アプリケーションについては IT 部門から提供された環境のもと各部門が検証する形で、作業は進められました。

ブリヂストンソフトウェア株式会社 システム技術本部 インフラ技術部 基盤システム技術課長 鶴田 和弘 氏

会社全体で検証する必要のあるアプリケーションは膨大な数であり、また個別アプリケーションの中には独自開発のものも多数含まれています。ブリヂストンは当初、動作が不安定なアプリケーションが一定数存在するだろうと予想しました。しかし実際の検証作業においては、不安定になるアプリケーションの数が想定よりも少なかったといいます。ブリヂストンソフトウェア株式会社 システム技術本部 インフラ技術部 基盤システム技術課長 鶴田 和弘 氏は、その要因について、次のように考察します。

「OS の移行には互換性の問題がつきまとうものです。事実、Windows XP から Windows 7 への移行時は、不具合の発生もさることながら、マイクロソフトやアプリケーション ベンダーから互換性に関する情報が示されなければ対応を進められない、という事態も頻発していました。そのような状況を見越して、今回も十分な作業期間を設けて互換性検証を進めたのですが、思いのほかスムーズにこれを進めることができました。Windows 10 自体の互換性の高さもさることながら、Windows 7 へ移行した際にアプリケーションの Web 化を進め、またそこへアクセスする Internet Explorer 11 の検証も完了していたことが、大きな要因といえるでしょう」(鶴田 氏)。

多くの企業が既に Internet Explorer 11 への対応を済ませています。このことから、Windows 10 移行のスムーズさは、ブリヂストンに限らず多くの企業にとって共通することだといえるでしょう。さらに児島 氏は、マイクロソフトの「プレミア フィールド エンジニアリング (PFE) による検証支援」を活用したことで、各部門における検証作業もスムーズに進行できたと補足します。

「PFE によって、マイクロソフトからはきわめて迅速かつタイムリーに互換性の情報を提供いただきました。今回、IT 部門で検証したアプリケーションは不具合の発生がほぼゼロでした。ただ、やはり各部門が検証するアプリケーションについてはいくつか不具合が見受けられました。そうした際、PFE に検証を支援いただくことで各部門からの問い合わせに対して即座にレスポンスが返せたことは、プロジェクトを遅延なく進めるのに大きく貢献したといえるでしょう」(児島 氏)。

導入の効果
Windows 10 が、本社だけでなく工場の働き方も変えていく

当初の計画どおり、ブリヂストンでは 2017 年 7 月より、Windows 10 の展開を開始。System Center Configuration Manager (SCCM) でパッチ、ビルドを管理することで、セキュアかつ最新の機能を備えるクライアント環境として Windows 10 が従業員へ提供されることになります。

Windows 10 への早期移行は、本社側だけでなく工場に勤務する従業員の働き方にもポジティブな影響を与えるだろうと、朝倉 氏は笑顔で語ります。

「エンド ポイント側のセキュリティが強化されたため、今後、当社が進めている働き方変革、モバイル ワークの取り組みはいっそう加速していくと考えています。近年は工場の IT 化も進めていますので、本社以外で勤務する従業員の働き方も変わっていきます。工場はいわば当社の心臓であり、IT 化を進めるとはいえど、セキュリティの担保は必須事項です。OS のレイヤーからセキュリティの強化を図れる Windows 10 は、この製造現場の働き方とクライアント環境を変えていくうえで、有効に機能すると期待しています。将来的にはこれが、全社を挙げた競争力の向上に結び付くと考えています」(朝倉 氏)。

今後の展望
クラウド活用によって「個人の資産」を「企業の資産」へ。1 人ひとりの業務が生み出す成果を競争力へとつなげていく

時代の変化に追従するためには、業務環境も変化し続けなければなりません。Windows 10 への早期移行によって、これに対応できるクライアント環境を整備したブリヂストン。同取り組みは、働き方変革にとどまらず、競争力を向上していくうえでも大きな役割を担うことでしょう。

ところで、朝倉 氏が「工場の IT 化」を例に挙げたように、近年、同社における IT 環境は過渡期を迎えつつあります。それを示す取り組みの 1 つが、クラウドの活用です。ブリヂストンでは現在、企業の競争力向上を目的にガイドラインを見直し、パブリックを含めてクラウドを最適利用することを進めています。

児島 氏は今後、IT 基盤の 1 つとしてクラウドを積極的に活用することで、個人にまで踏み込んだ生産性向上を果たしていきたいと語ります。

「Windows 10 への移行に伴い、従業員の業務生産性はこれまで以上に高まるはずです。これをシームレスに企業の競争力へと昇華させるには、クライアント環境で日々作成されている成果物を『企業の資産』とし、共有、保護することが重要です。しかしながら現在のクライアント環境では、それらは個人依存となっており、十分な対策が打てておりません。社外を含めた連携の推進や、DR (ディザスター リカバリ) 対策といった側面でクラウド活用は非常に有効であり、企業の競争力を高める大きな糧となるでしょう」(児島 氏)。

従業員 1 人ひとりの生産性向上を目指し、絶え間なく社内の IT 環境をアップデートし続けるブリヂストン。Windows 10 の早期移行や製造現場の積極的な IT 化を進める同社は、まさに「攻めの IT」を実践する企業だといえます。タイヤ メーカーの最大手として全世界に影響力を持つブリヂストン。同社の取り組みは、製造業界にかかわらず、グローバルな視点を持つ多くの企業にとっての指針となるでしょう。

「エンド ポイント側のセキュリティが強化されたため、今後、当社が進めている働き方変革、モバイル ワークの取り組みはいっそう加速していくと考えています。近年は工場の IT 化も進めていますので、本社以外で勤務する従業員の働き方も変わっていきます。工場はいわば当社の心臓であり、IT 化を進めるとはいえど、セキュリティの担保は必須事項です。OS のレイヤーからセキュリティの強化を図れる Windows 10 は、この製造現場の働き方とクライアント環境を変えていくうえで、有効に機能すると期待しています。将来的にはこれが、全社を挙げた競争力の向上に結び付くと考えています」

株式会社ブリヂストン
ITネットワーク本部
IT基盤・タイヤ設計IT部
朝倉 隆 氏

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