産業用ロボットなどのメカトロニクス製品をはじめ、サーボ&コントローラ、インバータなど多彩な製品で世界をリードする安川電機。同社の製品は自動車や食品包装、家電、スマートフォンの液晶画面など、私たちの身近にあるさまざまな製品の製造ラインに使われている。同社では、製品を利用するユーザー企業向けのリモート保守サービス「コネクトサービス」を2021年2月に開始するが、このサービスを支えるのがSecomeaの産業用IoTゲートウェイ「SiteManager」だ。

導入前の課題 導入後の効果
故障発生時に連絡を受けてから動くのでは対応が遅くなり、ユーザー企業の製造ラインにダウンタイムが発生してしまう。また人的リソースの制約という問題点もあった リモートで常時モニタリングできるため、異常発生の瞬時の検知に加えて故障の予兆もつかむことができ、対応スピードの大幅短縮と計画的なメンテナンス実施が可能になった

突発故障の対応に際して感じていた問題点

産業用ロボットは精密機械であり、メンテナンスや故障対応などのアフターサービスが重要になることは言うまでもない。安川電機でもアフターサービスを充実させ、ユーザー企業に納入したロボットのトラブルに親身の対応を実践してきた。ただ、従来はトラブルが現実に発生したあと、ユーザーからコールセンターへの連絡を待って対応を始めるインバウンド型サービスであり、故障発生から復旧までの対応時間はどうしても長くなっていた。

「電話をかけてくるときはすでに故障している状態。そこから状況をヒアリングし、修理に必要な部品を調達して、サービス員の派遣を準備します。そのためリアクションが遅れますし、その間お客様は生産活動がストップしてしまうため、この状況を改善しなければという課題がありました」

  • 株式会社安川電機 営業本部 サービス統括部 企画部 企画課 サービス企画係 係長 黒石龍一郎氏

    株式会社安川電機
    営業本部 サービス統括部 企画部 企画課
    サービス企画係 係長 黒石龍一郎氏

そう話すのは、営業本部 サービス統括部 企画部 企画課 サービス企画係 係長の黒石龍一郎氏。また、サービス員の人的リソースの制約や、経験値によるスキルのばらつきも課題になっていたという。ロボットの突発的な故障はそれほど頻繁に起きるわけではなく、サービス員の大幅増員も難しかった。

とはいえロボットの故障はユーザー側で対応できないケースが多く、復旧までの時間がかかるとそれだけ設備のダウンタイムが長くなり、生産活動に悪影響を及ぼす。実際にこれまで、サービス員と必要な部品をすぐに確保できず、長時間のライン停止に至ってしまったケースがあった。

ロボットの突発故障に際して短時間復旧によりダウンタイムを減らし、さらにはユーザーの設備稼働を“止めない”サービスを実現するため、リモートによる保守サービスの必要性を同社では以前から認識していた。加えて「人的リソースの限られるサービス員が、あらかじめ計画を立てて効率的にメンテナンスを行えるような仕組みをつくりたいという現場のニーズもありました」と黒石氏は話す。

攻めのメンテナンスを現実化するリモートアクセス

同社ではこのリモートサービス実現に向け、まずはリモートアクセスソリューションの検討に入った。

「ソリューションを導入するにあたり、最も重視したのはやはりセキュリティです」と黒石氏。実際、サービス設計前の段階でヒアリングしていくなか、リモートアクセスのセキュリティに不安を感じる顧客が多かったという。

「そして、故障前のメンテナンスを実施していくため、故障の予兆を検知する常時モニタリングの機能についても重視しました」

この2点を中心に検討を重ねた結果、同社が選定したのが、Secomeaの産業用IoTゲートウェイ「SiteManager」(ハードウェア版)である。黒石氏はその選択の理由についてこう語る。

「機能面では、当社のデータ収集用サーバーとお客様のロボットを常時接続するLogTunnel機能がオプションで用意されていることと、異常発生時にメールですぐ通知してくれるメールリレー機能があること、セキュリティ面ではすでにさまざまな認証を取っているため安心できることが決め手となりました。さらに、リモートアクセス機器は設定が難しく煩雑なことが多いのですが、SiteManagerは設定がしやすく、ITに関してそれほど高度な知識を持っていない私たちでも簡単に導入できるところも評価しました」

これらに加え、工場という過酷な環境で使用されるため耐環境性を備えていること、複数拠点間での利用を考え同時接続性が高いことも重視したと黒石氏は話した。選定にあたっては他社の汎用的なVPN製品との比較も行ったが、上述の機能やコストの点でSecomeaにより高いメリットを感じたとのことだ。

そもそも同社とSecomeaとの出会いは、いまから3年前の展示会で初めて製品を目にしたこと。「説明会のあと、興味を持って相談したところ、担当者が北九州の本社まで説明にきてくれました。そこで、従来のVPNルータとは異なり、SiteManagerなら同社が目指していたリモートサービスを簡単かつリーズナブルに実現できることを知ったのです」

トライアルを経ていよいよ本格スタートのフェーズへ

最初の導入は2018年。社内でのさまざまなトライアルを経て、同年終盤から実際に一部ユーザー企業とリモート接続のトライアル運営を開始した。その過程で顧客から意見を聞きながら、新たなリモート保守サービスのメニューを確立していったという。トライアルに参加した企業からは「ロボットの稼働率がグラフで可視化され、夜間の生産状況がわかるようになった」「異常発生の可能性があるときメールで通知される機能が重宝する」といった声が集まっている。

こうした経緯を重ねて2020年に入り、最終的に「コネクトサービス」本格運営のめどが立った。同社コールセンター(YASKAWAコンタクトセンタ)とユーザー企業の双方にSiteManagerを設置。コールセンター側のサーバーPCがLogTunnel機能のマスター、ユーザー企業側ロボットがクライアントとなって、ロボットの状態を遠隔で確認し、さまざまなサポートを提供する。同サービスは12月に新規契約受け付けを始め、2021年2月から実際のサービス提供をスタートする予定だ。

「SiteManagerを介してお客様と当社がつながることで、ロボットの稼働時間や停止時間、異常発生状況が詳細にわかるようになりました。またLogTunnel機能は、ロボットの状態の常時監視に加えて異常発生の自動検知にも役立っています」と、今回の導入の成果を黒石氏は語る。なお、「コネクトサービス」の対象が比較的新しいロボットであるため、まだ故障はほとんどない状況だが、トライアル段階では異常発生のアラームが出て実際に故障していたケースが1件だけあったという。「致命的な故障に達する前の段階で早めに気づくことができ、対応スピードも従来のインバウンド型に比べて大幅短縮できました」と黒石氏は評価している。

  • 異常発生を検知すると、自動でアラーム通知メールが送信される

    異常発生を検知すると、自動でアラーム通知メールが送信される

ユーザー企業の課題解決に大きな貢献を期待

サービスが本格スタートする前の段階ではあるが、同社では今回の取り組みにより、24時間稼働など高稼働のラインをロボット故障で止めたくない、メンテナンスのたびにラインを止められない、保守部門を持たないため自社でのメンテナンスが難しいといったユーザー企業の課題解決に貢献できると期待する。さらには、立地が同社サービス営業所から離れており短時間での対応が難しい企業にも活用されると考えている。

2020年は新型コロナウイルスに振り回され続ける一年だが、同社でも政府の緊急事態宣言が出されていた時期は客先に赴くことができず、メンテナンスに困難を感じることがあった。その点についても黒石氏は「もしこれから同様の状況が発生しても、リモートアクセスの態勢が整ったことで、お客様にサービスを提供し続ける強力な武器になります」と、今後に向けた期待感を話してくれた。

  • 株式会社安川電機の社屋と黒石氏

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