自動運転やEV、コネクティッドカーなど、自動車の先端技術分野をテーマにした展示会「オートモーティブ ワールド2018」が1月17日より3日間、東京ビッグサイトで開催される。世界最大のこのイベントに初出展するのが半導体製造装置のリーディングカンパニー、フェローテックだ。従来は畑違いと言える同社が何故出展を決断したのか? その決め手となった同社の技術と経営戦略を紹介したい。

クルマの先端技術分野世界最大「オートモーティブ ワールド2018」

自動運転やEV、コネクティッドカーなど、自動車の先端技術分野をテーマにした展示会「オートモーティブ ワールド2018」が1月17日から19日までの3日間、東京ビッグサイトで開催される。国内外から約1,100社が集まり、自動車に関するあらゆる素材・部品・ソフトウェア・装置が紹介され、世界中の自動車メーカー・自動車部品メーカーが新技術を導入するために来場する展示会だ。2017年開催時の来場者は34,542人(※)にも上り、世界最大規模を誇る。
※前回(2017年)開催資料より

第10回となるこのオートモーティブ ワールドに初出展するのが、半導体製造装置のリーディングカンパニー、フェローテックだ。1980年に創業した同社は、半導体や液晶ディスプレイの製造装置に関連する事業を中心に、電子デバイス事業、太陽電池関連事業などを展開してきた。

そんなフェローテックが、今年、「オートモーティブ プロジェクト」を立ち上げ、自動車業界への注力を開始する。主力となる製品群は「磁性流体」「サーモモジュール」「パワー半導体用DCB基板」の三つだ。

EV車を革新するポテンシャルを秘めたセンサー

磁性流体は、既にカースピーカーに幅広く用いられている素材である。アメリカの宇宙開発の中で発明された磁性流体は、水や油のような液体でありながら、磁石に吸い寄せられる反応を持つ。スピーカーに電流を通し続けると熱によって音の大きさが変わってきてしまうが、この磁性流体をコイル部分に充填することで、放熱効果を飛躍的に高めることができるのだ。スピーカーの小型化と高音質化の両立に欠かせない素材である。

  • 磁性流体の画像

    磁石に吸い寄せられる磁性流体

また、磁性流体には、磁気をかけることでがらりと粘度が変わる性質を持つものがある。この特徴を活かした典型的な用途が、車のダンパーだ。センサーで検知した路面の凹凸に応じて、電磁石がダンパーの堅さを微細に調整する。すると、ちょうど高級なヘッドホンが外界の雑音と逆位相の音波を発してノイズキャンセリングをおこなうように、極めてスムーズな走りを実現できるのである。同様の機能を用いれば、車のシートやエンジンなど、あらゆる場所での振動を低減することが可能だ。フェローテックは、このアクティブな制振をターゲットにした磁性流体の製品開発を進め、サンプルの出荷もスタートさせている。

さらにフェローテックでは、磁性流体の技術を用いたまったく新しい自動車バッテリー用の電流センサーを開発中だ。FF営業部長兼技術部副部長 廣田泰丈氏はこう説明する。

廣田泰丈氏の画像

FF営業部長兼技術部副部長 廣田泰丈氏

「従来使われている電流センサーに使われる磁性材料は、外部からの磁場によって様々に着磁されるため、直流電流を測定する場合、ゼロ点を精度高く保証することが難しいと言われています。バッテリーの充電レベルの推定に直流のデータ精度は重要です。新たに開発した磁性流体をベースにした磁性材料は、外部磁場によって全く磁化されないため、ゼロ点まで精度高く測定できる直流センサーを開発しました。二次電池として最もポピュラーなリチウムイオン電池は、発火や破損の危険性があるために安全マージンをかなり大きく取っている様ですが、より厳密な電池残量の推定ができるようになれば、結果として車載バッテリーの利用効率を上げることに繋がるのではないかと考えています」(廣田氏)

走行距離を1割伸ばすことが、EV車の開発にどれだけ大きな影響を与えるだろう。現在、フェローテックは国内外のバッテリーメーカー、自動車メーカーなどと連携して、バッテリー監視用の電流センサーの評価と改善改良を進めている。

半導体業界だけでなく、自動車業界にもプレゼンスを示したい

「オートモーティブ プロジェクト」二つ目の主力製品であるサーモモジュールは、電流の方向を変えることで、熱することも冷やすこともできる装置であり、微妙な温度管理をも得意とする。車のシートを快適な温度に保ったり、カップホルダーの温度調整をしたり、ハンドルが熱くなりすぎないように冷したりと、車の居住環境を高めるために用いられる。さらに近年では、走行データをフロントに表示するヘッドアップディスプレイにも使われはじめている。情報を照射するレーザー装置は熱により焦点距離が変わってしまうため、温度をコントロールするために、このサーモモジュールが使われるのだ。

  • サーモモジュールの画像

    自動車部品に欠かせないサーモモジュール

三つ目のパワー半導体用DCB基板は、セラミックスの上に銅が直接貼り付けられた、絶縁と放熱を目的に使用される製品であり、主に産業用機器、最近では自動車用途でも、インバーター等の内部に使われている。

  • パワー半導体の画像

    過酷な温度環境下でも安定して稼動するパワー半導体

このように、既に自動車に普及している製品から開発段階のデバイスまで、フェローテックは「オートモーティブ ワールド2018」で幅広く提案する。同社がこれまで扱ってきた独自性のある製品を紹介することで、自動車業界のニーズを探っていきたいと代表取締役社長 小松輝寿氏は話す。

小松輝寿氏の画像

代表取締役社長 小松輝寿氏

「これまで、フェローテックは部品として一部採用して頂くことはあっても、自動車業界と直接やり取りをしたことはありませんでした。我々の製品・サービスを使ってどんなことができるのか、あるいは、どんなことに自動車業界の方々は悩んでいるのか。新しい出会いを通して、製品の価値をさらに高めていきたいと考えています」(小松氏)


新たな主幹事業をつくる挑戦

フェローテックはなぜ「オートモーティブ プロジェクト」を新たに立ち上げ、自動車業界への注力を決断したのか。その背景にあるのは、カーエレクトロニクスの急激な進歩だ。いまや自動車は電子部品の塊である。2016年のEV・PHV市場は77万台程度にとどまっているが、富士経済によれば2035年には1,170万台と、飛躍的な成長が予想されている。EVの発展に伴う電子デバイスの拡大によって、フェローテックホールディングスは自動車関連の売上を現状の50億円から、3年間で200億円に伸ばす目標を立てた。

また、フェローテックホールディングスは2017年度の連結売上高を850億円と見込んでいるが、このうち半分を半導体製造装置が占めている。装置販売はボラティリティが高く、投資依存型のビジネスモデルであるため、経営安定化のために他の商品展開に力を入れることも、オートモーティブ プロジェクトを立ち上げた狙いの一つにある。これまで磁性流体の事業部は磁性流体だけ、サーモモジュールの事業部はサーモモジュールだけと、製品群別に縦割りだった事業部を横断させ、さらに世界で30を超える子会社とも連携する、同社にとって転換点となる大きなプロジェクトだ。当然、リーダーの小松氏自らが先陣を切って推進していく。

  • 小松輝寿氏の別画像

    横断プロジェクトについて語る小松氏

「ヨーロッパの子会社からは『自動車業界への参入はハードルが高いのではないか』など挑戦を危惧する声も挙がっていますが、まずはそのマインドを変えていく必要があるでしょう。日本・中国・アメリカ・ヨーロッパと、商圏によって特性も違うでしょうから、まずはニーズを把握して、半年後には具体的なPDCAを回していきます。『オートモーティブ ワールド2018』への参加は、プロジェクトの第一歩目でもあります。また経営戦略の転換に伴い、今後は自動車関連の知見のある人材も幅広く求めていき、目標の達成を進めます」(小松氏)

世界最大級のクルマの先端術イベント「オートモーティブ ワールド2018」。ぜひ参加して、最先端のテクノロジーやビジネスのヒントを見つけて欲しい。

2018年1月17~19日に開催される「オートモーティブ ワールド2018」
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