デジタルデバイスの進化とともに、顧客との接点は大幅に増加した。それらの接点から得られる膨大なデータをいかに活用し、データドリブンなマーケティング戦略を実践するか――これは、いずれの企業にとっても喫緊の課題だろう。

こうした中、アドビ システムズが8月3日に開催した「Adobe Marketing Cloud Data Driven Forum 2016」では、有識者によるセッションが多数行われ、データ活用に向けた先進的な取り組みや顧客事例の数々が紹介された。

本稿では、全日本空輸 マーケティング室 マーケットコミュニケーション部 デジタルマーケティングチーム アシスタントマネージャー 永山裕氏による事例セッション「デジタルでも5つ星を目指して ~『おもてなし』を実現するためのデータドリブンマーケティング~」のもようをお届けする。

デジタルの世界でも「おもてなし」するために

当日、登壇した永山氏は、2007年に全日空システム企画(現ANAシステムズ)に入社。CRMシステム部を経て、2015年4月より現職へ配属となった。現在は自社サイトの企画・管理、プラットフォーム構築をはじめとするデジタルマーケティング全般を担当している。

全日本空輸 マーケティング室 マーケットコミュニケーション部 デジタルマーケティングチーム アシスタントマネージャー 永山裕氏

全日本空輸 マーケティング室 マーケットコミュニケーション部 デジタルマーケティングチーム アシスタントマネージャー 永山裕氏

氏が所属するマーケットコミュニケーション部は、ANAの強みや特徴をどのようにしてユーザーに訴求するかを考える部署で、2012年に宣伝部とウェブ販売部が統合されるかたちで発足したのだという。永山氏が配属となった2015年4月からは、さらにその中にデジタルマーケティングチームが発足し、デジタルの世界における「お客様へのおもてなし」に日々取り組んでいる。オウンドメディア「ANA SKY WEB」やSNSアカウントの運営もその一環だ。

そんなANAが、デジタルの世界において企業が顧客とのコミュニケーションを図るとき、何を考え、何に注力しているのだろうか。

そのキーワードとして、永山氏は「顧客志向」を挙げる。

これは、そもそもANAがリアルでの接客で重視している考え方だという。すなわち、「どのようなお客様なのか」「どのタイミングで声をかけるべきか」「どのような言葉遣いで接するべきか」「どのようなサービスを提供すべきなのか」といった顧客目線でコミュニケーションを考えるということだ。

「デジタルの世界での『おもてなし』の考え方は、リアルでの考え方と同じです。違いがあるのは、手段が異なるという点だけです」(永山氏)

例えば、デジタルの世界で「どのようなお客様なのか」を判断するためには、その顧客が「ANAカード会員か」「過去にANAを利用したことがあるか」などのデータから導き出すことができる。

また、「どのタイミングで声をかけるべきか」をデジタルに置き換えると、「Webサイトなどの行動履歴データを駆使することで、正しいタイミングでアプローチをかけること」となる。

このほかにもデジタルの世界では「最近はスマートフォンからのアクセスが増えている」とか「顧客がどこ行きの航空券を検索しているか」といった行動履歴がわかるため、次に提案するものが見えてくるという。

>> 仮説と事実にはズレがある!? - データドリブンで考えるおもてなし