リモートワークからオフィス通いへ、あるいはリモート授業からキャンパスへ通学へと、人々の生活は徐々に以前のスタイルに戻りつつあります。今まで自宅でPCを使っていた人も、移動中に仕事や勉強をするためにノートPCやタブレットが必要になるケースも増えているでしょう。低価格なノートPCやタブレットも多数販売されていますが、第3の選択肢としてちょっと面白い存在になっているのが電子ペーパーを使った電子ブックリーダー型のタブレット。読書だけではなくビジネスツールとしても使える製品が出てきています。

  • 電子ペーパーを使ったタブレット

Amazonの「Kindle」に代表される、モノクロ画面の電子ブックリーダーは1万円以下の低価格品が多く出ています。しかしAmazon自身もカラー画面の「Fireタブレット」を出しており、エントリーモデルなら1万円以下で販売されています。書籍を読むことに特化したKindleは便利ではあるものの、今の時代なら動画も見られるFireタブレットに興味を持つ人のほうが多いのは当然かもしれません。

  • 7インチなら1万円以下、8インチでも1万円ちょっとで買えるFireタブレット

電子ブックリーダーは他のメーカーからも様々な製品が出ています。しかしKindle同様にカラー画面のタブレットに人気は押され気味です。最近では「中華タブレット」と呼ばれる中国メーカーの格安タブレットも増えており、単純に動画を見るだけの用途ならばそちらでも十分事足ります。

  • 「BlackView Tab 13」。いわゆる中華タブだが技適もあり日本で販売されている

そこで電子ブックリーダーも、ただのリーダーとしての機能にビジネス向けの付加価値を与えた製品が増えてきました。その代表と言えるのがファーウェイの「MatePad Paper」で、2022年にあえて電子ブックリーダー市場に参入してきました。MatePad Paperはこれまでスマートフォンやタブレットを多数展開していたファーウェイの製品らしく、高スペックCPUを搭載し動作速度にストレスが無い点が特徴です。搭載するチップセット「Kirin 820E」は同社のミドルハイレンジスマートフォンに搭載されているもの。電子ブックリーダーは動作が緩慢なものが多く、スペック表を見てもチップセットの名前が具体的に表示されていないケースが大半です。MatePad Paperはモノクロ画面タブレットとしてかなりきびきびと動いてくれます。なお画面サイズは10.3インチです。

  • 高スペックCPU搭載のMatePad Paper

またMatePad Paperはスタイラスペンを標準付属品としており、ペンを使った手書き入力に対応します。日本でも販売されているので日本語の手書きのテキスト化にも対応。そのため会議中にメモを取りながら、会議終了後、即座に議事録に仕上げる、といったことも可能です。電子ペーパーは構造上、動画の表示を不得意としますが、逆に言えば忙しい時についついYouTubeを見てしまう、なんてこともありません。価格が6万円台とやや高いものの、生産性を高めるツールとしても使えそうです。

  • ペン入力は日本語のテキスト化もできる

他のメーカーも同様にペン対応電子ブックリーダーは増えています。2022年11月に発表されたBOOXの「BOOX Tab Ultra」はペンに加えキーボードも使え、よりビジネスツールとしての使用を想定した製品です。画面サイズはMatePad Paperと同じ10.3インチ。この大きさはA4の紙のノートより一回り小さく、持ち運びや机の上に置いてちょうど使いやすい大きさです。背面カメラは1,600万画素で、撮影中のプレビュー画面こそモノクロ表示ですが、会議中のホワイトボードの撮影など記録用カメラとして十分使える画質です。またカメラを通して文字の書かれている被写体を撮影し、OCRでテキスト化も出来ます。

  • BOOX Tab Ultra

BOOX Tab UltraはPCとの間で高速にファイル転送できる「BOOX Drop」機能を搭載。AirDropのBOOK版ですね。そのため手書きから作った文書ファイルもすぐにPCに転送できます。またペン性能の改善などにより「OneNote」、「Evernote」などメモアプリへの手書き入力も高速化されているとのこと。より快適にメモを取れます。さらにキーボード付きの専用カバーを装着すれば、移動中は本体を保護しつつ文字入力時にはキーボードを使えるのです。価格は599.99ドルからです(約8万3,500円)。

  • キーボードカバーでモノクロノートPCのようになる

このBOOX Tab Ultraはまだ日本では販売されていないようですが、BOOXの製品はすでにいくつかの販売代理店が取り扱っているので、いずれ日本でも購入できるようになるでしょう。2022年11月時点では日本で売っている類似の製品は10.3インチ画面の「BOOX NoteAir2Plus」となります(7万2,800円)。

電子ブックリーダーもビジネスツールとして使える製品になりつつありますが、初めて電子ペーパーディスプレイを体験すると、画面を書き換えるごとに全体表示が一瞬反転するなど、液晶や有機EL画面には見られない表示に戸惑うこともあるでしょう。また動画の視聴はモノクロ画面であることを差し引いても、表示速度が追いつかない電子ペーパーが最も不得意とします。MatePad Paperは2段階、BOOX Tab Ultraは4段階の画面表示モードを切替できますが、動画視聴やゲームはできないものと割り切ったほうが良いでしょう。一方で電子ペーパーは画面に明かりを当てて表示するため、バックライトなどが無く、目にやさしく長時間使っていても疲れません。ブラウザでニュースを読む用途なら大丈夫でしょう。

  • 電子ペーパーの特性を生かした用途に向いている

ではペンやキーボード入力に対応した電子ブックリーダーを使うのはどんなシーンに向いているでしょうか。大量のPDFや書類を閲覧してサインや修正をペン入れする用途や、メモを常に書いて保存しておきたい人、あるいはテキスト入力に特化してレポートや記事を書くケースが考えられます。若干ニッチな用途ではあるものの、ビジネスツールとして検討してみるのもよさそうです。