アップルが、6.1インチの新しい「iPhone 16e」を2月28日に発売します。上位モデルと同じ高性能のA18チップを積んでパワフルになったiPhone 16ファミリーのベーシックモデルです。実機を試して良かった点と気になったところを触れながら、iPhone 16eがどんなユーザーにおすすめのiPhoneなのか解説します。

  • iPhone 16eのブラックモデル。片手持ち操作が軽々とできるボディに、6.1インチのディスプレイを搭載します。質量は167グラムです

超快適動作! A18のパワーを実感した

今回はiPhone 16eのブラック、ストレージは512GBのモデルをレポートします。箱から取り出して最初に驚いたことは、iPhone 16eの「軽さ」です。質量は167グラム。同じ6.1インチのiPhone 16よりもさらに3グラム軽くなりました。もちろん、第3世代のiPhone SEやiPhone 13 miniの方が軽く小さいiPhoneでしたが、画面が6.1インチまで大きくなって、コンテンツの表示が見やすくなったことを考慮に入れれば画期的です。

筆者はiPhone 16 Proのユーザーです。iPhone 16 Proはメインカメラのレンズユニットに高さがあるので、テーブルの上に置くと斜めになります。比べると、iPhone 16eのレンズユニットの張り出しがとても浅いので、裸のままケースを着けなくてもほぼフラットな状態でテーブルの上に置けます。

  • 左側はiPhone 16 Pro。右側iPhone 16eのカメラユニットの飛び出しが少ないことが分かるでしょうか

最新のA18チップを搭載したiPhone 16eは、操作に対する反応がきびきびとしています。生体認証システムは、Face IDによる顔認証を搭載しました。TrueDepthフロントカメラとの連係が小気味よく、画面をスワイプアップすると一瞬でiPhoneのロックが解除されます。アプリの起動や動作も安定しています。

iPhone 16ファミリーの3モデルすべてが搭載する「アクションボタン」の反応も、iPhone 16 Proが「パッ」と開く感じだとしたら、iPhone 16eは「バッ」とさらに間を詰めて“神速”で開く感覚です。

  • Face IDに対応するTrueDepthフロントカメラを搭載。画面のロック解除も機敏に動作します

iPhone SEのカメラから圧倒的に進化

iPhone 16eのカメラはシングルレンズですが、1つのユニットで等倍と光学2倍相当のズーム撮影が楽しめる2in1カメラシステムです。2倍ズーム撮影時には48MPの高解像イメージセンサーとコンピュテーショナルフォトグラフィを活用して、被写体にグッと近付いた精細感のある写真を記録します。

例えば、料理を撮影する時に2倍ズームを選択すると、被写体から少し距離を置けるため、料理に自分の影を落とさずに撮れます。2倍ズームはさまざまな場面で活用できると思います。ほかにも、ズームを等倍に設定して、ナイトモードやフラッシュを使わない写真に限れば、48MPのセンサーをフルに活かした「HEIF最大」モードが選べます。とても高解像です。

  • iPhone 16eのメインカメラ。倍率を等倍として撮影した写真をリサイズしています。カメラアプリのフォーマットから写真モードは24MPを選択

  • 2倍ズームで撮影。12MPで記録されますが、ディティールの精細感は秀逸です

  • 48MPの「HEIF最大」モードで撮影した写真をリサイズしています。雲模様のきめ細かさ、ビルの窓の立体感などに違いが出ます

同じシングルレンズのiPhone SEに比べると、iPhone 16eのカメラは“できること”が格段に増えました。空間オーディオ音声を含む、ドルビービジョンによる最大4K/60fpsのHDRビデオ撮影もそのひとつです。筆者の家族が長年使っていた第2世代のiPhone SEと写真を撮り比べてみると、最新のコンピュテーショナルフォトグラフィの効果は歴然。ナイトモードでは、薄暗い場所でも明るく色鮮やかな写真が記録できます。iPhone SEからiPhone 16eへの乗り換えを考えている人は、さまざまな場面でカメラの進化が実感できると思います。

  • iPhone 16eのカメラ。ナイトモードで撮影。薄暗い場所で明るく色鮮やかな写真が撮れます

  • 第2世代のiPhone SEで撮影。頑張っていますが暗め

反面、すでに上位モデルであるiPhone Proシリーズなどを使っている人から見れば、iPhone 16eのカメラは少し物足りないかもしれません。筆者は、iPhone 16 Proで写真とビデオのマクロ撮影をよく使うので、iPhone 16eで被写体にグッと寄れないことが残念です。

ただ、iPhone 16eも写真のポートレートモードやビデオのオーディオズームも完備しています。日常のシャッターシーンを気軽にブックマークできるiPhoneとして、本格デジタル一眼などと「2台持ち」すれば、デジタルフォトライフは間違いなく充実します。

バッテリーは長持ち。画面が大きくなった効果は?

アップルは、iPhone 16eにA18チップと、初めて自社で設計したセルラーモデムチップの「Apple C1」を搭載したことで、6.1インチのiPhone史上最長のバッテリー持ちを実現したと発表しました。今回筆者が試したiPhone 16eは“おろしたて”なので、あくまで参考程度ですが、途中で充電せずに24時間使い続けてもバッテリー残量は25~30%前後をキープしました。おそらく、iPhone SEよりも積んでいるバッテリーパックのサイズが大きくなっています。乗り換えると、バッテリーが長持ちする安心感が存分に味わえるでしょう。

ワイヤレス充電はQiの規格に対応していますが、MagSafeには非対応です。充電器に設置するときに正確な位置合わせができないことがあったり、MagSafe対応アクセサリーがiPhoneに直接装着して使えないことが少し残念です。iPhone SEから乗り換えると、iPhone 16eはコネクタがUSB-Cになったので、Mac、AirPods Pro 2などほかのUSB-Cに対応するアップルデバイスなどと同じ充電器が使えるようになったことに便利さを実感するはずです。

  • iPhone 16eはQi互換のワイヤレス充電に対応しています。残念ながらMagSafeはサポートしていません

6.1インチの有機ELを採用するSuper Retina XDRディスプレイは、アップルが2022年に発売したiPhone 14とまったく同じスペックです。iPhone 16に比べると表示輝度が少しだけ落ちますが、晴天の屋外など明るい場所でもウェブサイトや動画がしっかりと見られます。映画に写真、ゲーム映像の視聴感はとてもキレイで好感が持てます。

ただ、筆者はディスプレイ周囲の黒い縁(ベゼル)がiPhone 16 ProやiPhone 16よりも太いことが気になりました。わずかな差ですが、表示したコンテンツが少しきゅうくつに見えてしまいます。日常からiPhone 16 Proを使っていると、最大120Hz駆動のProMotionテクノロジーによる滑らかな画面表示に慣れてしまいます。そのため、Proシリーズのユーザーは、iPhone 16eの画面をスクロールする時などに若干のガタつきを感じるかもしれません。

  • Super Retina XDRディスプレイは高精細。ベゼルが太いので、6.3インチのパネルを搭載する右側iPhone 16 Proに比べるとほんのわずかに表示領域が狭くなりますが、慣れれば問題ないレベル

価格もベーシックな128GBモデルがおすすめ

iPhone 16eをより賢く活用するための「2つの提案」を紹介します。

iPhoneのカメラで写真やビデオをよく撮る人は、iPhone 16eの購入を検討する時にストレージ容量を奮発した方がよいと考えるでしょう。iPhone 16eは、アップルが現行モデルとして販売するiPhoneの中では最も手ごろな価格で買うことができますが、ストレージ容量を大きくすると価格も上がります。

iCloud+は、月額150円で50GBのクラウドストレージを提供しています。年間では1,800円。さらに上の容量である200GBは月額450円で、12カ月使うと5,400円になります。iCloud+の200GBのプランを2年間使い続けても、iPhone 16eの128GBと256GBのモデルの価格差である15,000円に届きません。iPhoneを頻繁に買い換える人は、iCloud+の併用もアリです。

または、iPhoneのUSB-Cコネクタに直接挿して写真やビデオのバックアップが簡単に取れる「外付けストレージ」にも、最近よい製品がたくさん登場しています。今回は、旭東エレクトロニクスのブランド、SUNEAST(サンイースト)が発売しているスティック型の高速SSD「Revolve R10」とiPhone 16eの相性をチェックしてみました。

  • SUNEASTの高速外付けSSD「Revolve R10」の512GBモデル。価格はオープンですが、11,000円前後で購入できます

Revolve R10は最大読み込み転送速度1050MB/秒を実現しています。本体両側にUSB-CとUSB-Aのコネクタがあり、iPhoneからピックアップした写真・ビデオのファイルを、USB-C/USB-Aタイプの端子を搭載するパソコンに挿し替えて、素速く手軽にバックアップが取れます。

iPhone 16eのUSB-CコネクタはUSB 2に対応しています。筆者が今年の1月にラスベガスで取材したエレクトロニクスショー「CES」の写真を879項目/2.88GBぶん、iPhone 16eからRevolve R10に転送したところ、約3分3秒で完了しました。ファイルはMacにバックアップして、iPhoneの写真とビデオを削除しておけば、ストレージの空き領域を常時確保できます。なお、より高速なUSB 3に対応するiPhone 16 Proは、同じファイルを約1分2秒で転送できました。

Revolve R10はオープン価格ですが、容量512GBのモデルが11,000円前後で購入できます。スマホを頻繁に買い換える人は、特にiCloud+や外部ストレージを上手に活用して、内蔵ストレージは最小容量の128GBを選んで本体の購入価格を節約することを筆者はおすすめします。

アクションボタンは楽しい・便利!

もう1つの提案は「アクションボタン」を楽しみ尽くすことです。アクションボタンは、iPhone 15 Pro/iPhone 15 Pro Maxで初めて搭載されました。現行のiPhone 16ファミリーは、すべてのモデルがアクションボタン付きです。

筆者のまわりでは、アクションボタンの使い方がよく分からず、初期設定の「消音モード」のままにしている、という声がよく聞こえてきます。アクションボタンは、上手に使えば役に立つユーザーインターフェースなので、もったいないと感じてしまいます。

筆者は「ショートカットの実行」に割り当てて、「Google Geminiアプリを開く」設定にしています。同じ要領でChatGPTを開いたり、よく使うカメラやSNSのアプリにアクションボタンから素速くアクセスできます。

  • iPhone 15 Proシリーズから搭載が始まったアクションボタン。iPhone 16eはApple Intelligenceの「ビジュアルインテリジェンス」の起動にも割り当てることができます

4月以降にiOS 18.4が公開されれば、いよいよApple Intelligenceが日本語に対応します。それ以降に解放される「ビジュアルインテリジェンス」という機能は、iPhoneのカメラを向けた被写体をApple Intelligenceが認識して詳しい情報を検索したり、テキストを翻訳したりと、いろいろ便利な使い方に対応します。ビジュアルインテリジェンスをアクションボタンから起動する設定にもできるので、Apple Intelligenceのために設計されたiPhone 16eの魅力が大いに実感できると思います。

iPhone 16eは、現行ラインナップにあるiPhoneのなかでは「最も安価な高機能モデル」です。価格的にはiPhone 15と拮抗しているし、デュアルカメラがあった方がお得に感じるかもしれませんが、超広角カメラが使えること以外はiPhone 16eの方が「未来志向の機能」が揃っています。

もちろん、それはApple Intelligenceに対応していることです。ChatGPTとスムーズに連係するSiriでより詳細なウェブ検索をしたり、ビジュアルインテリジェンスやGenmoji、Image PlaygroundのようなAI画像生成の機能が楽しめることは、iPhone 16ファミリーの強みです。今後もアップデートにより、Apple Intelligenceには新しい機能が続々と追加されるでしょう。今買うのであれば、iPhone 16ファミリーを選ぶのが正解だと筆者は思います。