スマートフォンは今や生活必需品ですが、ディスプレイサイズの大型化とともに年々本体のサイズも大型化しています。iPhone 12 miniが出てきたときに多くの人が喜んだのは片手で楽に操作できるからだったのではないでしょうか。動画やSNSのライムラインを見るには狭い画面かもしれませんが、一昔前のスマートフォンに比べれば5.4インチのディスプレイサイズは十分大きいのです。

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スマートウォッチも各社から様々な製品が出ていますが、「スマホを捨ててスマートウォッチだけで1日過ごす」というのはまだまだ無理な状況です。一番の問題はスマートウォッチのディスプレイサイズが小さいことで、コンテンツの表示領域が狭く、実用面で厳しいものがあります。

そんな中、2021年は腕に巻き付ける形のスマートフォンが出てくるかもしれません。カラー表示が可能な薄型・長方形のディスプレイが開発されたのです。電子ペーパーを開発するE Ink社とPlastic Logic Partner社は2020年12月3日に世界初の曲げられるカラー電子ペーパー「Legio」を発表しました。

  • 「腕スマホ」を実現できるかもしれないカラーディスプレイ「Legio」

Legioは本体サイズが46.08×28.03mmの長方形で、ディスプレイのサイズは2.1インチ、解像度は240×146ピクセルです。一般的なスマートウォッチは正方形か円形サイズですし、Apple Watchのディスプレイは1.78インチ。Legioは、より大きく、腕に巻き付けるように装着できるサイズなのです。

ただしLegioは液晶や有機ELではなく電子ペーパーです。電子ペーパーというとAmazonの低価格タブレット「Kindle」の名前を思い浮かべる人もいると思います。Kindleはモノクロ表示で文字や白黒のコミックを読むくらいにしか使えませんが、Legioはそのモノクロ電子ペーパーディスプレイをカラー化した製品なのです。液晶や有機ELのようにディスプレイを光らせる方式ではないため若干くすんだ色の表示となりますが、2.1インチ程度の大きさなら気にならないかもしれません。

  • 電子ペーパーなので光のあるところなら色もよく見える

このLegioは外部接続端子が付けられた状態で開発キットとして販売される予定で、これに腕時計のベルトをとりつけ、さらにスマートフォンの基盤を小型化して内蔵させれば腕にはめるスマートフォンを作ることもできそうです。解像度が低いためそのままではスマートフォンのOSは動かないかもしれませんが、専用のユーザーインターフェースやアプリを用意すればSNSくらいは使えるかもしれません。

すでに超小型のスマートフォンはいくつか販売されています。しかし腕に装着できるような曲げられるディスプレイが無かったために、腕にはめるスマートフォンは実用化されないままでした。

  • 2017年に発売されたJellyは超小型のスマートフォン。スマートフォンはここまで小さくできる

なお中国の無名メーカーが腕時計型のスマートフォンを出してはいますが、腕時計というにはディスプレイが大きくあまりスマートな物でもありません。世界のどこかでヒット商品になったという話もなく、これらの製品は実用性はなくネタとして作られているとしか思えません。

  • 中国の通販などで見かける腕時計型スマートウォッチ。実物はここまでスマートではないだろう

大型画面のスマートウォッチということで言うと、中国のNubiaが4.01インチの「nubia Watch」を2020年10月に発表しています。活動量の計測や通知表示などスマートウォッチとしては基本的な機能しか持っていませんが、OSはAndroidをベースとしており、システムを最適化できればスマートフォンのような機能を持たせることができるかもしれません。

  • nubia Watchは腕に巻き付けられるディスプレイを搭載

腕にはめることのできるスマートフォンはnubia Watchを高性能化すればすぐに実用化できるかもしれません。ところがnubia Watchにはいくつか問題があるのです。

まずは重さ。フレキシブル有機ELディスプレイを採用しているため、本体の質量は98g、本体の厚みも41.5mmになります。Apple Watch SEが36.4gですから、約3倍の重さです。ちなみにnubia Watchの前年に登場したnubia Alphaはカメラを搭載したりアプリも多数利用できた、スマートウォッチというより簡易スマートフォンに近い製品でしたが、質量は158gもありました。ここまで重いと腕や肩が疲れてしまうでしょう。

また有機ELディスプレイの消費電力が大きいため、電池の持ちも良くありません。公式には1週間程度使えるようですが、実際は数日程度です。

  • nubia Alphaはカメラもついていたが、158gと腕時計としては重戦車級の重さだった

しかし電子ペーパーディスプレイは低消費電力なので、スマートウォッチなどに使えば駆動時間を大きく伸ばせます。これまで複数の色を同時に出せるカラー電子ペーパーはスマートフォンサイズのものしか商用化されていませんでしたが、今回ようやくLegioとして小さいものが出てきたのです。ディスプレイの消費電力が小さいということは、電池の容量も小さくできます。小さい電池はもちろん軽量ですから、全体の重さも軽くできます。

Legioの登場で2.1インチサイズの腕に巻けるスマートフォンの実用性はぐっと近づいたと言えるかもしれません。ただLegioは表示パネルだけで、タッチパネルはついていないのでそちらの開発も進める必要があります。本当に「腕スマホ」を実現しようとする企業が現れればうまいこと開発してくれるでしょうが。

ところでスマートウォッチならば数百mAhの電池があればいいですが、スマートフォンとなるともっと大きい容量が必要です。ですが、スマートウォッチの大きさの本体に格納できる電池の大きさには限界があります。

そこでベルトを電池にしてしまおうというアイディアが韓国のLiBESTから出てきました。LiBESTのフレキシブルバッテリーはベルト状にしても電池内部がショートし発火しないような工夫がされており、最大容量は3,000mAhが可能とのこと。スマートフォンの電池としても十分な大きさです。

  • LiBESTのベルト型電池。スマートウォッチなどにつかえる

Apple Watch用の外付け電池として、このフレキシブルバッテリーを使った「LiFlex Strap」が2018年に発表されましたが、今のところ他への展開は見られていません。ぜひ多くのスマートウォッチメーカーや周辺機器メーカー、そして将来出てくるだろう「腕スマホ」に採用されてほしいものです。

  • 2018年に発表されたLiFlex Strap。Apple Watchの利用時間を1日以上伸ばすことができる

スマートウォッチが今より進化するためにはスマートフォン並みの性能が欲しくなりますし、スマートフォンの利用シーンを増やすためにはウェアラブル化も必要です。数年後はスマートフォンを手に持っているのは特別な時間だけで、普段はみな腕にはめたスマートフォンを使ってメッセージを送ったり動画を見る、なんて時代が来るのかもしれません。