今年発売になったXperiaシリーズの多くが他のスマートフォンと違う外観デザインになっていることに気がついた人も多いでしょう。夏モデルとして登場した「Xperia 1」、秋冬モデルとなる「Xperia 5」「Xperia 8」の3機種は21:9の縦横比のディスプレイを搭載しており、縦に長い本体デザインになっているのです。

  • 2019年のXperiaは本体外観が細長くなっている

数年前までのスマートフォンは16:9の縦横比のディスプレイの搭載が標準でしたが、2017年2月にLGが18:9、サムスンが18.5:9というワイドサイズディスプレイのスマートフォンを相次いで発表。それ以降急激にワイドディスプレイの採用が加速化しました。今では19:9、19.5:9とさらに長いディスプレイを搭載したスマートフォンが増えています。

  • LGのG6がワイドディスプレイのブームを作った

この動きに対して、2019年のソニーはさらにワイドサイズとなる21:9のディスプレイを主力モデルすべてに採用。映画館の上映サイズに近いこの大きさをソニーは「シネマワイドディスプレイ」と呼びます。Xperia 1と同時期に海外向けに発表された「Xperia 10」「Xperia 10 Plus」も含め、2019年は5機種ものシネマワイドディスプレイ搭載モデルが出そろいました。

  • 映画やゲームをワイドサイズで表示できる

21:9サイズのメリットは映画をオリジナルのサイズで再生できること。また縦に持ったときならSNSのタイムラインもより多く表示することができます。さらには2つのアプリを画面に同時に表示するとき、それぞれのサイズがほぼ正方形になり見やすくなります。

  • 複数アプリの表示も楽に行える

また同じ画面サイズのスマートフォンでも、21:9ディスプレイのほうが本体サイズを細くできるため、「大画面なのに片手持ちできる」スマートフォンを実現することができます。たとえばXperia 1のディスプレイサイズは6.5インチディスプレイを搭載しながら横幅は72ミリ。同じ画面サイズのiPhone 11 Pro Maxは77.2ミリなので、5ミリ以上も細いのです。

  • 大画面でも片手で握ることができる

21:9ディスプレイにはさらにサイズを大型化できる可能性も秘めています。スマートフォンのディスプレイで現時点で最大サイズと言えるのはファーウェイの「Mate 20 X」の7.2インチでしょう。しかし横幅は85.4ミリとかなり広く、片手で持てることはできても片手だけでの操作はやや難しいところです。

  • Mate 20 Xは片手操作は難しい大きさ

しかし21:9のディスプレイサイズにすれば、7.2インチでも横幅は80ミリ以下にできます。つまり以前ならタブレットサイズと思われていた大きさのスマートフォンを生み出すことができるわけです。そもそも21:9ディスプレイは縦方向に長いものの横方向は細いため、Xperia 1、Xperia 10 Plusの6.5インチでもやや迫力感に欠けます。より大きいサイズ、たとえば7インチ以上のディスプレイを採用した「Xperia 1 Plus」なんてモデルも欲しいものです。

  • もう少し大きい画面のモデルも欲しいところだ

さて過去にも21:9のディスプレイを持っていたスマートフォンはいくつかありました。LGは2009年に4インチ21:9のフィーチャーフォン「BL40 New Chocolate」を、2010年にはエイサーが4.8インチ21:9のスマートフォン「Iconia Smart」を発売しています。しかし当時はそのワイドサイズディスプレイを生かし切れるだけのアプリやコンテンツが無く、規格外サイズともいえるこの大きさのディスプレイの採用は進みませんでした。

  • LGのBL40は当時とても長いサイズだった

しかし通信回線とスマートフォン性能が高まったことにより、動画をストリーミングで見ることも当たり前になりつつあります。さらにはSNSの普及でより多くの情報を画面上に表示したいと考えるユーザーも増えています。それに合わせるようにスマートフォンの画面サイズは年々大型化していきました。そして16:9から18:9、19:9とワイド化が進むことによってさらに画面サイズの大型化が加速しています。

  • ワイド画面はいまや当たり前(Galaxy Note10)

ソニーはその動きの先を見据えて、21:9というウルトラワイドなシネマワイドディスプレイの採用に踏み切ったというわけです。そしてそのソニーを追いかけるように、別のメーカーも21:9ディスプレイの採用に踏み切りました。たとえばモトローラの「One Vision」は6.3インチの21:9ディスプレイを採用しています。Visionの名前の通り、画面表示にこだわりを持たせた製品です。右上にフロントカメラを埋め込むパンチホールディスプレイを採用し、コンテンツ視聴時の没入感も高めようとしています。

  • モトローラも21:9画面のスマホを投入

また折りたたみスマートフォンとして話題のサムスン「Galaxy Fold」も、たたんだ時の外側のディスプレイは4.6インチ21:9となっています。閉じたときに片手で操作できることを考えこのサイズを採用したのでしょうが、細い本体になるべく大きいディスプレイを搭載しようと考えると21:9が最適なのでしょう。

  • Galaxy Foldのアウト画面は21:9サイズだ

先の話ですが来年2月にはXperia 1の後継モデルが出てくるでしょうが、そちらも21:9のディスプレイを搭載してくるでしょう。この動きが他のメーカーにも広がっていくのか、またシネマワイドディスプレイに対応した動画以外のコンテンツやサービスが出てくるのか。スマートフォン市場にソニーが新しい波を呼び起こすかもしれません。