睡眠の質を左右する基本的な要素に「睡眠時間」がある。適切な睡眠時間は個人ごとに異なるし、状況によっても変化する。画一的に何時間がよいというものではないそうだが、平均的には7時間から9時間くらいの睡眠時間が推奨されることが多い。この睡眠時間を確保するポイントに「光を調整する」というものがある。そこで、スマートウォッチを使って明らかになった、睡眠のために光を調節する方法を紹介する。
睡眠時間を伸ばすには、早く寝る
健康的な生活には質の高い睡眠が欠かせない。これまでスマートウォッチを使って睡眠をモニタリングする方法を紹介するとともに、睡眠ステージと自律神経の沈静化に関する生活習慣として【夕食】と【お酒】のモニタリング結果を取り上げてきた。今回の生活習慣は【光り】だ。
睡眠ステージで重要になるのが、そもそもの睡眠時間の長さだ。一般的には7時間から9時間くらいがよいとされ、短すぎると心身の回復が十分に行われない可能性が指摘されている。短い睡眠時間は、睡眠の質の低さにつながる。睡眠の質を確保するには、7時間~9時間くらいの睡眠はほしいわけだ。では、睡眠時間を確保するにはどうすればよいかだが、朝は時間が決まっていることが多いだろうから、要するに長くしたい分だけ早く寝ればよいのだ。
しかし、現代社会は過酷だ。インターネットが普及した今、夜はいつまでも面白いコンテンツを楽しめてしまう。気がつけば午前になり、大切な睡眠時間を削っているということも多いはずだ。こうした環境に身をおいている以上、誘惑に打ち勝って早く寝ることは困難を極めると言ってもよいと思う。
「早く寝る」ためのライフハックも存在しているが、著者の場合、効果があったのは「夜になったら暗くする」ことだ。暗くなると眠くなる。思い返してみれば当たり前だが、蛍光灯やLED照明がランランと光った部屋だといつまで経っても眠くならない。逆に、暗い部屋は眠気が起こりやすかった。ここでは特に効果のあった方法をまとめておく。
照明を蛍光灯から調光調色LED照明へ取り替え
日中に集中して作業するとなると、やはりある程度の明かりはほしい。そんなわけで部屋のサイズに対してかなり明るめの蛍光灯を使っていた。当然、夜も同じ蛍光灯だ。夜になっても部屋の明るさは光り輝いている。これではいつまで経っても眠くならず、ついつい夜ふかしをしてしまう。そして、寝落ちするまで飲んでしまうので、飲みすぎにもなりやすかった。
ものは試しということで、照明を蛍光灯から、調光調色機能を備えたLED照明へ付け替えた。調光調色機能を備えたLED照明はすでに廉価なモデルが市場に出回っている。贅沢をしない限り交換そのものはそれほど負担にならないと思う。
日中は昼白色でフル明かり、夕方に暖色へ切り替えて、あとは徐々に暗くしていく。飲みだす頃には最も暗い状態にしておく。基本的に変えたのはこれだけだが、それ以前と比べて早い時間に強い眠気に襲われるようになった。明かりを変えただけだが、入眠時間が早くなるという効果があったのは間違いのないところだ。
夕方に光を昼白色から暖色へ切り替えるのは、気分や雰囲気を変えるというニュアンスが強い。仕事と私事を切り替えるために、仕事が終わったら光の色を変えるといった感じだ。これもリラックスを進める効果が出ているような気がする。
暖色系にすることでブルーライトカットが進むということが言われることもあるが、ブルーライトカットの効果に関してはまだ研究段階のように見える。現段階ではブルーライトカットの効果はなんとも言えず、雰囲気が好きなので暖色系を使う、くらいに考えるくらいでよいと思うし、暖色系よりも昼白色が好きなら、昼白色のまま調光で暗くすればよいと思う。
スマホ、タブレット、PC、Macでダークテーマとナイトシフトモードを有効化
もうひとつ変えたのがスマホやタブレット、PC、Macの光りだ。夕方以降、部屋が暗くなっていくにもかかわらず、スマホやPCがランランと輝いているのはバランスが悪いというか、目が痛い。こちらも同じように夕方以降は徐々に暗くなって、部屋の明かりと同じように推移してくれると違和感がない。そこでダークテーマとナイトシフトモードだ。
最近のスマートフォン、タブレット、Windows、Macには「ナイトシフトモード」と呼ばれる機能が用意されている。細かい動きは異なるが、日の入りから日の出までの間、ディスプレイを暖色系に置き換えるとともに、暗めにするというものだ。NetflixやYouTubeなどをテレビではなくPCやMacで楽しむ方も多いだろう。部屋が暗くなっていくのに、ディスプレイが真夜中も光っていては目が痛いので、ナイトシフトモードを有効にしておくとちょうどよい。
もうひとつはダークテーマだ。こちらも最近のスマートフォン、タブレット、Windows、Macには搭載されており、UIカラーがブラックベースになるというものだ。もともと電力消費を抑えるという目的で人気が出たテーマだが、夜暗くするという目的においても利用できる。
ナイトシフトモードが睡眠の質を改善するかどうかについてはまだそれほど研究が進んでいないようだ。効果の有無ははっきりしないので、その点はあまり考えないほうがよいだろう。部屋が暗くなるのに合わせてスマホやPCも暗くするというだけだ。
それぞれのプラットフォームでナイトシフトモードとダークテーマを有効にする設定を紹介しておく。
Windows 10
設定アプリケーションを起動して、「システム」→「ディスプレイ」選択。夜間モードをオンにする。
夜間モードの時間を変更する場合には「夜間モードの設定」をクリックして時間を調整する。
同じく設定アプリケーションから「個人用設定」→「色」→「色を選択する」を「ダーク」に設定する。
これでナイトシフトモードとダークテーマが有効になる。
Mac
システム環境設定アプリケーションを起動して、「ディスプレイ」→「Night Shift」→「スケジュール」を「日の入から日の出まで」に設定する。
同じくシステム環境設定アプリケーションから「一般」→「外観モード」を「ダーク」に設定する。
これでナイトシフトモードとダークテーマが有効になる。
iPhone
設定アプリを起動して、「画面表示と明るさ」→「外観モード」を「ダーク」に設定する。
同じく設定アプリから「画面表示と明るさ」→「Night Shift」→「時間指定」をオンにする。
これでナイトシフトモードとダークテーマが有効になる。
iPad
設定アプリを起動して、「画面表示と明るさ」→「外観モード」を「ダーク」に設定する。
同じく設定アプリから「画面表示と明るさ」→「Night Shift」→「時間指定」をオンにする。
これでナイトシフトモードとダークテーマが有効になる。
もっと細かく調整したいなら
OSの提供するナイトシフトモードよりも時刻や調光・調色をより細かく設定したい場合は、f.luxというソフトウェアを使うという方法もある。
f.muxはWindows、Mac、Linux、iPhone、iPad、Androidに対応している。より細かい設定ができる。
生活スタイルに合わせてナイトシフトモードを設定したい場合は、f.luxのようなソフトウェアを使うというのもひとつの手だ。
9カ月間の取り組みの結果は
考えてみると当たり前だが、眠りたければ部屋を暗くすればよいようだ。いつまでもランランと光り輝く部屋にいるよりは、暗い部屋にいるほうが眠くなったというのが9カ月間にわたる著者のモニタリングの結果だ。Polar Vantage V2で睡眠モニタリングを開始した2020年8月と2021年4月の睡眠モニタリングの平均値は次のようになっている。
表にまとめると次のようになる。
2020年8月 | 2021年4月 | |
---|---|---|
平均入眠時刻 | 1:56 | 23:50 |
平均睡眠時間間 | 6時間20分 | 6時間52分 |
平均睡眠スコア | 66 | 69 |
照明を変えることで、睡眠に入るまでの時間が2時間ほど早くなったほか、睡眠時間が30分ほど伸びたことがわかる。睡眠をモニタリングすることで改善点を見つけ、実際に実施して睡眠スコアが改善した。スマートウォッチでモニタリングすることで改善を実現できた例のひとつと言えるんじゃないかと思う。
また、早めに睡魔が襲ってくるので、その分酒量が減ったというのがもうひとつの効果だったかもしれない。ランランと光り輝く部屋でも寝落ちするまで飲むので寝るには寝るのだが、暗い部屋だと早めに睡魔が襲ってくるのでその分酒量が減った。睡眠の質が改善したのはこの辺りも影響しているのかもしれない。なにはともあれ、モニタリングをして分析し、そして改善に取り組む。スマートウォッチを使うとこういったライフハックがやりやすくなる。