ビジネスマンの4人に1人は肥満だ。痩せすぎもよくないが、太りすぎもよくない。仕事の基本は健康だ。もし今肥満なら、健康との相関性が強いと評価されているBMI値を適正値まで減らしていこう。減量はちゃんと設計して長期計画でいくことが大切だ。この設計を行う際に便利な指標が「除脂肪」だ。今回は、除脂肪を進めるという考え方をベースに減量設計を行っていこう。

男性は3人に1人、女性は5人に1人が「肥満」

厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」によれば、BMIが25kg/平方メートル以上で肥満と分類される人の割合は男性で33%、女性で22.3%だ。男性では3人に1人が、女性では5人に1人が肥満ということになる。

  • 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要ー厚生労働省

    令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要 資料:厚生労働省

男性は20代になると一気にBMI値が増える。そして、定年退職を迎える一歩手前までBMI値が増え続けるという傾向を示している。さらに、この10年間で男性のBMI値は有意に増加している。要するに、働く男性ビジネスマンは年々太っているのである。

肥満はさまざまな疾患の原因になることがわかっている。太り過ぎも痩せすぎもあまり健康とは言えない。元気に仕事を続けていくには、まず健康であることは欠かせない。少なくとも、BMI値を普通と評価される範囲(18.5以上25未満ー令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要ー厚生労働省)には保っておきたいところだ。

「肥満」なら、減量で健康的な体を目指そう

厚生労働省のデータによれば、ビジネスマンの2割~3割は肥満だ。BMI値が25を超えているのであれば、まずは25未満になるまで減量を進めることを計画しよう。BMI値と健康には相関性があると考えられており、高すぎるBMI値は減らしたほうが健康的だ。

減量の基本は摂取カロリーと消費カロリーの差分だ。摂取カロリーを消費カロリーよりも減らす、ないしは、消費カロリーを摂取カロリーよりも増やすと、減量が進む。食事を変えて摂取カロリーを減らすか、運動を増やして消費カロリーを増やすか、そのどちらかが基本的な戦術となる。

  • ジョギングの消費カロリーと内訳を計測 - Polar Vantage V2

    ジョギングの消費カロリーと内訳を計測 - Polar Vantage V2

体づくりをしているひとはご存知だと思うが、運動で消費カロリーを増やす方法は効率が悪い。運動では思った以上にカロリーは消費されないのだ。特に毎日十分な運動時間が確保できないようだと、この方法はかなり厳しい。

スポーツ選手にとって減量はそれほど難しい作業ではない。カロリー設計をして食事を変えることで、狙った期間に狙った分だけ減量を進めることができる。食事を変えるほうが減量はてきめんに効くのだ。

しかし、多くのビジネスマンは、食生活を変えるつもりがないというデータが出ている。病気を患わない限り食事を変えることは難しいのだ。そこで、効果は小さいかもしれないが、「続けられる最大効率の運動」を取り入れて、ちまちまとでもカロリーを消費していくのが多くのビジネスマンにとって確実な方法かもしれない。

減量は「除脂肪」で設計しよう

「減量」となると「体重を減らすこと」を考えがちだが、減量設計は「減量」ではなく「除脂肪」(じょしぼう)で考えるとわかりやすくなる。「除脂肪」とは、体脂肪だけを減らして、筋肉は減らさず、体重を減らすという考え方だ。

体は糖質、脂質、タンパク質をエネルギー源として使うことができる。食事で食べたものから糖質や脂質を蓄えようとするのは体が持つ基本的な機能だ。人間は蓄えた糖質や脂質を主なエネルギー源として身体を動かす。エネルギー供給が追いつかなくなると、結果的に筋肉の分解につながるエネルギー供給も行われる。なるべく脂肪の消費を増やし、それ以外のエネルギーは使わない運動を考える。これが忙しいビジネスマン向けの基本戦術だ。

除脂肪を進めるとなると、基準となる体脂肪率の正常範囲が知りたくなる。BMI値と健康に関しては世界中で研究が行われており、明確に基準値もある。しかし、体脂肪率に関しては同レベルの基準が示されていないのが現状だ。体脂肪率と健康に関しては現在進行形で研究や分析が行われている段階にあり、包括的な基準値は示されていないのだ。

日本では男性で体脂肪率が20~25%以上、女性で30%以上が肥満と考えられることが多い。そして男性で10%以下が痩せ型、女性で20%以下が痩せ型とされることが多い。体脂肪率が高すぎても低すぎても健康を損なうと考えられている。

一方、体脂肪率は正確な計測が難しいという問題も抱えている。現在コンシューマー向けに販売されている体脂肪率計測機能付きの体重計は、メーカが正常範囲内と考える体脂肪率の範囲内にある時はそこそこ正確に計測できるが、範囲を外れた体型の計測は誤差が大きい。誤差を抑えて計測するには、結構な値段のデバイスを使わないといけないのだ。

このため、体脂肪率はあくまでも「傾向」を知るために計測するものだと思っておいてほしい。適正BMI値になるまで「減量」と「除脂肪」が同時に進んでいるか調べるためのもの、くらいに考えておくとよい。

体脂肪率とその正常範囲などに関しては、いずれ関係各所から発表されるだろうし、その後の研究分析などによって更新された発表が行われていくのではないかと思う。今後発表される内容に合わせて情報を更新し、自分の減少設計をアップデートしていくことが大切だ。

運動の効果は内容によって異なる

週に150~300分の中強度運動が健康によいことは世界保健機関(WHO: World Health Organization)が2020年末に公開した「World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour - PubMed」で示されている。この基準を満たすひとつの方法は、平日に日30分、週末に日1時間の中程度の運動だ。

何とか日々の生活から時間を工面して、平日に30分の運動時間を確保したとしよう。忙しいビジネスマンとしては、この時間を可能な限り高効率で使いたい。最も「除脂肪」が進む運動をすればよいのだ。しかも、手軽で毎日続けられるという条件付き、である。

運動で得られる除脂肪の効果は、運動の種類や強度によって異なる。例えば、次のスクリーンショットは同じ場所を2周、ウォーキングした場合とジョギングした場合の計測結果だ(Polar Vantage V2を使用)。

  • 2周のウォーキング

    2周のウォーキング

  • 2周のジョギング

    2周のジョギング

消費カロリーと運動時間を抜き出して整理すると、次のようになる。大体ウォーキングは30分、ジョギングは15分といったところで、ジョギングの方が消費カロリーが大きい。

消費カロリー 運動時間
ウォーキング 128Kcal 27分
ジョギング 149Kcal 15分

しかし、これを除脂肪の観点から脂肪がどれだけエネルギーとして使われたかで比較すると、次のようになる。

脂肪分の消費カロリー 運動時間
ウォーキング 100cal 27分
ジョギング 69Kcal 15分

同じ移動距離の場合、脂肪の燃焼を行うという観点から見ると、ジョギングよりもウォーキングのほうが脂肪を消費していることになる(もちろん、スマートウォッチの示す値が正しいならという条件は付く)。有酸素運動は心拍数が低いほど脂肪がエネルギー源として使われ、心拍数が高いほど糖質がエネルギー源として使われる。これを長時間続けると、さらにタンパク質ベースのエネルギーも消費されるようになる。

運動の感覚からすると、ジョギングのほうがウォーキングよりも脂肪が燃焼しそうな気がするが、負荷が高くなると脂肪は燃えにくくなってくる。先ほどのデータであれば、ジョギングを2周から4周に変えれば脂肪分の消費カロリーは140kcalほどになり、ウォーキングよりも脂肪消費が進む。しかし、この負荷のジョギングを毎日30分、一年中続けられるかを考えないといけない。

ジョギングはウォーキングよりもきつい。普段ジョギングをしていないビジネスマンにとって、30分のジョギングはかなりきついはずだ。運動が習慣化しなければまったく意味がなく、たった40kcalのために習慣化できないと本末転倒だ。それなら30分間のウォーキングの方がよいのだ。

「除脂肪」を目的に30分間を有効に使う運動を探す

貴重な30分間を有効に使うために、どんな運動がどの程度脂肪を燃焼するのかをこれから計測していく。習慣化できる運動負荷は人によって異なるので、必ずしも運動負荷の高いものがよいとは言えない。運動負荷が高くなると脂質の燃焼割合は減っていくので、脂肪燃焼に焦点をあてる減量設計においては、負荷の高い運動は取り込みが難しいのだ。

どの程度の運動がどれくらい脂肪燃焼につながるのか、運動負荷と、さらにここに時間の要素を加えるといろいろと減量設計ができるようになる。実際に、自分でもスマートウォッチを使って計測してみてほしい。スマートウォッチは減量設計に効果的だ。しばらくは運動の種類と消費カロリーについて計測し、その結果を検証していく。