ソニーが、3月7日から、85V型8K液晶テレビ「BRAVIA Z9H(KJ-85 Z9H)」を発売する。

  • ソニーの8Kテレビ「BRAVIA Z9H」

    ソニーの8Kテレビ「BRAVIA Z9H」

ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ 企画マーケティング部門商品企画部企画3課プロダクトプランナーの青木翔氏は、「世界一美しい画像を映し出すことができる、8Kテレビのリファレンスを目指して開発したのがZ9H。ソニーが自信を持ってお客様におすすめできる8Kテレビが完成した」と断言する。

Z9Hは、ソニーが初めて国内市場に投入する8Kテレビだ。満を持して国内市場に8Kテレビを投入するソニーのこだわりを追った。

  • ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ 企画マーケティング部門商品企画部企画3課プロダクトプランナーの青木翔氏

ソニーのBRAVIA Z9Hは、85V型の8K液晶テレビ。8K商品化のために開発された高画質プロセッサ「X1 Ultimate」や音響技術「Acoustic Multi-Audio」など、ソニー独自の最新技術を搭載。同社のフラッグシップモデルに冠する「ブラビアMASTER Series」のひとつに位置づけられ、あらゆるコンテンツを、かつてない高画質、高音質で楽しめ、8Kならではの新たな視聴環境を実現するという。市場想定価格は、200万円前後(税別)。

商品化が2020年になった理由

ソニーは、2019年1月のCES 2019年において、はじめて8Kテレビを発表。2019年春から、北米や欧州および中国市場向けに、8K液晶テレビ「BRAVIA Z9G」を発売していた。だが、同商品の日本での投入は行われていなかった。

「8Kの解像度で商品化するだけでは、感動は生み出せないというのが、ソニーが持つ8Kテレビに対する基本的な考え方。日本では、2018年12月に新4K8K衛星放送が開始され、世界で初めて8K放送が実用化されている。この放送コンテンツを、最大限美しく見ることができるテレビを目指して、この間、画質のチューニングを繰り返し行ってきた」と、前出の青木氏は、いまここで日本市場に8Kテレビを投入した理由を語る。

ソニーは、2018年12月の8K放送開始のタイミングにはこだわらず、むしろ1年をかけて、放送コンテンツを最高の画質で表示することを優先してきたともいえる。そして、2020年7月には、東京オリンピック/パラリンピックが開始され、多くの競技で8Kでの放送が行われる予定だ。これらのコンテンツを、最高の画質を楽しむことができるタイミングでの商品投入ということもできるだろう。

「テレビに画像が映し出されたとき、クリエイターの制作意図を捉え、忠実に再現することで、初めて感動を与えることができる。ソニーの4Kテレビが迫力の『臨場感』を実現したのに対して、ソニーの8Kテレビは、見たものが、触れられそうな『本物感』を感じることができる。動物の毛並みや髪の毛の質感、青空や雲の様子まで表現し、気持ちが揺さぶられる『感じる美しさ』を実現している」と語る。

4Kテレビの「臨場感」に対して、8Kテレビは「本物感」という言葉で表現してみせた。

  • 「Blade Architecture(ブレード アーキテクチャー)」と呼ぶデザインを採用。光の影響を受けにくくしている

  • 画面上部に新たに搭載したスピーカーもBladeの中に取り込んでいる

  • 背面部の様子。ここにもブレードを利用したデザインを採用

  • 前面のディスプレイ部と背面のスピーカー部の2つ筐体を組み合わせたようなデザインになっている

  • スタンドは2枚の板で構成するシンプルなデザインを採用している

「ソニークオリティの映像美」を実現するために

ソニーは、BRAVIA Z9Hで「感じる美しさ」を実現する上で、「ソニークオリティの映像美」、「映像と音の一体感」、「見たいコンテンツに簡単に出会える」という3つの観点から、商品開発を進めてきたという。

「ソニークオリティの映像美」の実現においては、複数のソニー独自の最新技術が貢献している。

1つめは、高画質プロセッサ「X1 Ultimate」である。すでに4Kテレビにも採用されている「X1 Ultimate」だが、もともとは8Kテレビのために開発されたプロセッサだ。8Kの膨大な映像の分析と処理を、リアルタイムに行い、被写体それぞれに対して最適に高精細化する「オブジェクト型超解像」処理によって、ノイズを抑えながら細部まで精細感を高め、より現実に近い高画質を実現する。また、あらゆる映像を高精細な8K解像度にアップコンバートする超解像エンジン「8K X-Reality PRO」では、シーンごとに専用の8Kデータベースを参照して高精細化処理を実行。フルHDや4Kのテレビ番組やインターネット動画なども、8K画質相当に引き上げることができる。「世の中にある様々なコンテンツを、8Kの世界で楽しむことができる」というわけだ。

2つめは、8K液晶パネルにおいて、高輝度で、高コントラストを実現する独自のバックライト技術「Backlight Master Drive」の採用である。パネル背面に高密度に敷き詰めた数100個ものLEDモジュールを、それぞれ独立して駆動させるソニーの独自技術で、これにより、細かい範囲での明暗を表現し、際立った明るさと引き締まった深い黒のコントラストが実現できる。「黒の引き締まり方を見て、有機ELテレビと間違える人もいたほど。LEDモジュールをブロック単位に制御するものと比べると、明るさや黒の表現には大きな差が生まれる」とする。

実は、ソニーは、2016年に発表した4K液晶テレビ「BRAVIA Z9D」において、Backlight Master Driveを採用している。だが、4K液晶テレビの売れ筋価格帯が下がるなかで、コストが高いこの技術の採用は、その後の機種では見送らざるを得なかった。「BRAVIA Z9Hの開発において目指したのは、8Kテレビとして、世界一美しい画質。それを実現する上で、Backlight Master Driveは外すことができなかった。出し惜しみすることなく、この技術を採用した」とする。

さらに、ここでは、「8K X-tended Dynamic Range PRO」を採用。ソニー独自のアルゴリズムに基づいて、画面全体の光のバランスを精密に調整。暗い部分の電流を明るい部分に集中させることで、8Kパネルでは難しい高輝度を実現した。「Backlight Master Driveと8K X-tended Dynamic Range PROの組み合わせで、臨場感と立体感があり、本物感を味わえる高コントラストな映像を描き出すことができる」とする。

3つめは、斜め方向から見ても本来の高画質で見ることができる独自の光学設計「X-Wide Angle」の採用だ。一般的に液晶テレビでは難しいとされていた高コントラストと広視野角の両立を実現。複数の人で見ることが多い85V型という大画面環境でも、リビングにいる全員が高画質で楽しむことができる。さらに画質という点では、動きの速い映像をくっきりと描き出す「X-Motion Clarity(エックス モーション クラリティー)」の威力も見逃せない。LEDバックライトの発光を、エリアごとに高精度に制御して、発光時間を最適化。これにより、残像感を抑えつつ画面の明るさを確保し、よりリアリティのある映像表現が可能になったという。

「映像と音の一体感」と「見たいコンテンツに簡単に出会える」

「映像と音の一体感」の実現では、ソニー独自の音響技術「Acoustic Multi-Audio」が最大の特徴だといえよう。

画面上下に4つの2ウェイスピーカーと2つのサブウーファーを搭載。音の定位感と広がりを向上させることに成功している。「大画面テレビでは、映像と音の定位の不一致が課題となりやすい。だが、Acoustic Multi-Audioでは、映像から音が出ているかのような視聴体験が可能になり、臨場感を高めることができる。また、スピーカーが見えないため、映像や音に没頭した視聴体験が可能になる。映像体験による感動の半分は、音が影響しているともいわれる。映像とともに、音にも徹底的にこだわった」とする。

ソニーでは、有機ELテレビにおいて、画面そのものから音を出す「アコースティック サーフェス オーディオプラス」を採用しているが、8K液晶テレビにおいても、この技術の採用によって、画面から音が出ているような環境を実現してみせた。

さらに、「センタースピーカーモード」により、8K液晶テレビがセンタースピーカーの役割を果たす形で、マルチチャンネルのサラウンドシステムを構成できるほか、3次元立体音響を実現する「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」に対応。映像と音の一体感を可能にし、家庭のリビングでも、映画館のような迫力があるサウンド体験を実現できるという。

そして最後、「見たいコンテンツに簡単に出会える」という点では、2019年モデルから採用している最新のユーザーインターフェースにより、「豊富なコンテンツのなかから見たいものをサクサク検索でき、ネット動画やテレビ番組のコンテンツの切り替えもストレスなく操作ができる」とする。

Apple AirPlay 2に対応していることから、iPhoneやiPadなどに保存している写真や音楽、ネット動画などが視聴できるほか、テレビ本体に内蔵したマイクにより、テレビに話しかけるだけで、電源オン/オフ、コンテンツの検索、各種モードの設定変更などが可能になる。

リモコンには、「4K8K」の切り替えスイッチの搭載とともに、ネット動画ボタンでは「TSUTAYA TV」を加えて6つに増やし、利便性を向上させている。

ちなみに、海外で先行した8Kテレビでは、85V型のほかに、98V型や75型がラインアップされているが、今回の商品は、85V型だけのラインアップとしている。それについては、8Kの画質を最も楽しむことができるパネルサイズであること、4Kテレビでも85V型の製品の売れ行きがよく、日本の家庭においても、このサイズが適していると判断したことなどがあげられる。

このように、いま、ソニーが注ぎ込むことができる最高の技術によって、商品化したのが「BRAVIA Z9H」ということになる。

  • BRAVIA Z9Hのリモコン

  • リモコンの「4K8K」ボタン

  • ネット動画もワンタッチで切り替えられる。TSUTAYA TVを新たに追加した

マスターモニター並? 本物感の価値は伝わるか

青木氏は改めて、「8Kのマスターモニターとしても使用できるような画質を目指して開発した商品。むしろ、次の商品づくりではなにをすべきかと悩むぐらいに、目指していた以上のものができたと自負している」と今回のテレビに自信をみせる。

BRAVIA Z9Hは、発売を前にして、札幌、銀座、名古屋、大阪、福岡天神の5店舗で先行展示を開始。3月7日からは、全国の主要量販店の旗艦店約40店舗での展示が開始される。また、全国のソニーショップにおいても、随時、8Kテレビのイベントを開催するほか、ホームシアターなどを取り扱うAVAC(アバック)でもイベントを開催し、BRAVIA Z9Hを体験できるようにするという。

ソニーマーケティング ソニーマーケティングジャパン プロダクツビジネス本部ホームエンターテインメントプロダクツビジネス部ディスプレイマーケティング課の児島良樹氏は、「BRAVIA Z9Hは、まずは体験してもらうことを重視している。8Kならではの本物感によるインパクトを体験してもらいたい」と語る。

  • ソニーマーケティング ソニーマーケティングジャパン プロダクツビジネス本部ホームエンターテインメントプロダクツビジネス部ディスプレイマーケティング課の児島良樹氏

実際、いくつかの8K映像をBRAVIA Z9Hで見せてもらったが、確かに「本物感」を感じることができる素晴らしい画質だ。とくに、深い黒や、輝く金色などは、これまでの液晶テレビにはない本物感を感じることができる。また、放送コンテンツを見せてもらったが、中継映像では、8Kカメラで撮影したものなのか、4Kカメラで撮影したものなのかということの違いが理解できるほど、画質の高さを体験できた。

店頭展示では、「感じる美しさ」をメッセージに訴求。BRAVIA Z9Hを展示する台を高くして、来店客が立った位置でも最適な高さで視聴体験ができるように工夫したり、コンテンツの没入感を体験するために、POPを少なくしたシンプルな展示方法を提案するといったことも行う。

「画質や音質にこだわり、8K放送を楽しみたいといったユーザーに購入してもらいたい。また、2012年に発売した4KテレビのフラッグシップモデルであるKD-84X9000などからの買い替えユーザーの購入も想定している。ソニーの8Kテレビならではの感動を、多くの人に体験してもらいたい」と語る。

満を持してソニーが発売する8Kテレビは、新たな視聴体験を切り開くことになるのか…… 国内ユーザーがどんな答えを出すのかに注目したい。ソニーストアでは、2月7日から購入予約や体験予約を受け付けているが、液晶テレビのフラッグシップモデルとして、出足は極めて好調だという。