ソニーは一般にウォークマンやテレビのBRAVIA、スマホのXperiaなど、コンシューマー向けエレクトロニクス製品を手がける日本のブランドとして広く知られてます。一方で、映像製作のプロ、自動運転、医療にまで、幅広く技術やサービスを開発、提供しているテクノロジー企業です。

そんなソニーが、現在取り組む研究開発の成果について、一部を報道関係者に公開する「ソニー・テクノロジーデイ」が開催されました。その中から筆者が特に注目した、ソニーの最先端技術を紹介します。

ライブ映像の伝送も5Gで高速化

ソニーは現在、クリエイターが制作したコンテンツに込めた意図を、ありのまま高品質にユーザーの手元へ届けるための技術開発に注力しています。内容は「Connect」というコーナーに分類され、既に製品化されている8K対応BRAVIA「Z9G」シリーズの高画質、ソニーの業務用リファレンスモニターの高画質、それらを踏襲したフラグシップスマホ「Xperia 1」などが一堂に会しました。

  • ソニー・テクノロジーデイ

    クリエイターが意図した映像をありのままユーザーに届けられる高画質を特徴に掲げる、ソニーの8Kブラビア「Z9G」シリーズを展示

  • ソニー・テクノロジーデイ

    スマートフォンのXperia 1はクリエイターがパーソナルモニターとして使うことも想定して、ソニーの業務用リファレンスモニターの開発チームと一緒に画質を練り上げてきました

筆者が特に注目したのは、5Gの技術を活用した放送コンテンツのネットワーク伝送です。

日本国内でも2020年から本格的に5Gの通信サービスが始まります。5Gは4K/8Kの高画質・大容量の映像データを遠隔伝送するために、最適なインフラといわれています。ソニーは、映画や放送など映像系のコンテンツクリエイションに関わるプロフェッショナル機器のエキスパートです。5G時代に向けてしっかりと研究開発が進んでいました。

テクノロジーデイの会場では、5G通信環境に見立てた高速Wi-Fiネットワークを使って、ネットワーク伝送技術のシミュレーションを公開。業務用カメラなどで撮影した映像データを、「Virtual Production」システムで編集後、放送局やユーザーの視聴環境へほぼリアルタイムで届けます。Virtual Productionシステムは、放送制作のハードウェア機器をソフトウェア技術で仮想化したもので、クラウド上に置かれます。

  • ソニー・テクノロジーデイ

    5Gの通信環境を想定したライブ映像配信環境のデモンストレーション

既にソニーは、4G LTEネットワークを活用して、放送用のコンテンツをネットワーク伝送するコア技術を提供しています。5G時代になると通信速度や容量面のキャパシティが大幅に拡大するので、放送機器の進化と、これに伴ってユーザーニーズも増えるでしょう。ここでいう「ユーザー」とは、映画・放送製作に関わるプロフェッショナルに限りません。

例えば、一般企業や自治体が自主製作した動画を、キャパシティが拡大した5Gネットワークに乗せて視聴者に提供するサービスも増えてくる可能性があります。上で述べたように、放送機器そのものをコンパクトに使いやすい形で提供するために、ソニーは映像の編集や配信を行うソリューションをハードウェアからソフトウェアへと仮想化して、クラウド上で簡易に扱える映像制作環境「Visual Production」として開発を進めています。

これからは個人が制作したコンテンツを、映像配信のプラットフォームに提供・販売するビジネスも数多く生まれてくるかもしれません。映像によるクリエイション、あるいはメッセージの発信が、従来のスタイルから大きく変わる可能性を感じる展示でした。